肺癌
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54 巻, 4 号
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原著
  • 伊坂 哲哉, 横瀬 智之, 齋藤 春洋, 村上 修司, 近藤 哲郎, 尾下 文浩, 伊藤 宏之, 山田 耕三, 中山 治彦, 益田 宗孝
    2014 年 54 巻 4 号 p. 173-179
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.進行ALK肺癌治療には正確かつ迅速なALK検査体制を要する.院内ALK検査導入に際し外部検査受託機関(院外)と院内のALK検査精度と判定期間を比較検討した.方法.2012/5~2013/5に院外ALK検査(IHC・FISH)を施行した43例に対し院内ALK検査を行った.院外IHCはEnVision FLEX+法,院内IHCはiAEP法を用い,陽性例に各施設でFISH(split assay法)を行った.結果.手術検体は20例,結果判定期間は院外IHC/FISH 6.2/12.3日,院内IHC/FISH 3.0/8.0日.院外・院内IHCの陽性/陰性一致率は100/86.5%,IHC不一致例(5例)は全て手術検体で院外陰性・院内陽性,うち1例はFISH陽性であった.一方FISHは全例一致した.結論.院内ALK検査は判定期間を短縮した.院内・院外の検査一致率は高いが,IHC不一致を認めた.理由としては施設間で使用する検出試薬が違うこと,院内ではiScore 1以上を陽性と判定したこと,施設間で同一手術標本の判定部位が異なる可能性などが考えられた.
  • 中川 達雄, 奥村 典仁, 松岡 智章, 亀山 耕太郎
    2014 年 54 巻 4 号 p. 180-186
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    目的.CTおよびPET/CTによる肺癌術前N1診断について検討を行った.方法.リンパ節郭清を伴う肺葉切除を行った非小細胞肺癌109例を対象とし,郭清したN1リンパ節に相当する画像上のリンパ節の短径およびPETの最大標準摂取率(SUVmax)を測定した.結果.合計306箇所のN1リンパ節の評価を行った.CT診断では,短径のcutoff値を10 mmとすると,感度および特異度は,リンパ節単位で44.0%および93.4%,症例単位で42.9%および81.8%であった.PET/CT診断では,SUVmaxのcutoff値を2.5とすると,感度および特異度は,リンパ節単位で52.0%および87.5%,症例単位で52.4%および76.1%であった.PETで対称性集積を認めた症例は33例あり,これらを除いた76例での検討では,感度および特異度は,リンパ節単位で62.5%および85.0%,症例単位で56.3%および90.0%であった.結論.N1診断では,PET/CTはCTに比べ感度は良好であったが,特異度は劣っていた.PETで対称性集積を示す場合,診断は困難であることを念頭に置くべきである.
症例
  • 渡部 克也, 安藤 耕平, 植草 利公, 益田 宗孝
    2014 年 54 巻 4 号 p. 187-190
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.薄壁空洞性所見を呈するS状結腸癌肺転移の1例を経験した.症例.55歳女性.2008年9月,S状結腸癌(SE,N0,P1,Stage IV)に対しS状結腸切除術を施行後,化学療法(BV+mFOLFOX6)を7か月間行い経過観察中であった.術前の胸部CTで,左S6に直径8 mm大の薄壁空洞性病変を認めたが肺嚢胞と診断していた.しかし空洞性病変は徐々に増大傾向を示し,術後3年目には直径20 mmに増大するとともに空洞壁の肥厚も認めるようになった.胸腔鏡下肺部分切除術を施行したところ,S状結腸癌の転移と診断された.結語.増大傾向を示す薄壁空洞性病変は,慎重な経過観察とともに積極的な確定診断を試みる必要性があると考えられた.
  • 米田 太郎, 卯尾 真由加, 木場 隼人, 酒井 珠美, 上田 善道, 笠原 寿郎
    2014 年 54 巻 4 号 p. 191-198
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.胸腺腫の気管支内腔への進展は稀とされる.症例1.85歳女性.2002年に浸潤型胸腺腫にて拡大胸腺摘出,右上葉切除を施行された.2013年咳,喘鳴が出現し,胸部X線にて右肺野異常陰影を認め,胸部CTでは右主気管支を閉塞する腫瘍を認めた.気管支鏡検査での生検にて再発浸潤性胸腺腫と診断した.化学療法を行い,胸部CTでは気管支内の腫瘍は縮小した.症例2.69歳,男性.1995年に浸潤性胸腺腫に対し,拡大胸腺摘出,左上葉部分切除を施行された.2003年左横隔膜角と第2胸椎椎体左側に腫瘤形成を認め,胸膜播種を伴う再発にて再度腫瘍切除術を施行した.2013年に労作時呼吸困難を契機に入院加療となり,その際胸部CTにて浸潤性胸腺腫の増悪ならびに左主気管支の閉塞を認めた.気管支鏡検査での生検にて再発浸潤性胸腺腫と診断した.化学療法を行い,胸部CTでは気管支内の腫瘍は縮小した.結論.気管支内腔に進展した浸潤性胸腺腫の2例を経験した.胸腺腫の気管支内腔への進展は壊死組織を伴うことなどが特徴的であり,他疾患の鑑別上,生検が必須と考えられた.
  • 藤本 栄, 三浦 陽介, 吉田 勤, 藤田 敦, 湊 浩一, 飯島 美砂
    2014 年 54 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)産生肺腫瘍は,予後不良な腫瘍であるが,予後不良因子としての腫瘍産生G-CSFの関与は明らかでない.近年,G-CSF製剤が急性呼吸促迫症候群(ARDS)・間質性肺炎を引き起こすことが報告されている.本症例は,剖検時にびまん性肺胞障害(DAD)を認め,腫瘍産生G-CSFとARDSとの関連性が示唆されたため報告する.症例.67歳,男性.右下葉肺腺癌術後18ヶ月の左肺下葉病変を再発と診断し,化学療法を施行した.左下葉肺癌の増大中に,発熱,白血球増多,CRP高値を認めたが,抗菌薬に反応せず,G-CSF産生腫瘍が疑われた.呼吸困難,貧血,白血球増多のため緊急入院し,上部消化管内視鏡にて出血性の胃腫瘍を認めた.進行性貧血のために輸血を行ったが,急性呼吸不全で死亡した.剖検では左肺下葉原発の大細胞癌であり,胃,小腸の転移巣を認め,全てG-CSF免疫染色陽性,剖検時血清G-CSF高値であり,G-CSF産生肺大細胞癌と診断した.非腫瘍部はDADの像であった.結論.G-CSF産生腫瘍では急性呼吸不全を起こす危険性があり,予後不良の一因と考えられた.
  • 勝島 詩恵, 岡田 秀明, 駄賀 晴子, 井上 健, 武田 晃司
    2014 年 54 巻 4 号 p. 206-211
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.EML4-ALK融合遺伝子は非小細胞肺癌の約5%に存在し,ALK阻害薬であるクリゾチニブに奏効し,個別化治療を進めるうえで正確,迅速なALK肺癌の診断が重要である.我々は,再検査で異なるFISH結果が得られたALK肺癌の症例を経験したので報告する.症例.症例は非喫煙者の70歳女性.気管支鏡生検の病理組織診断は腺管構造と粘液産生を認める中分化型腺癌で,臨床病期はcT2aN3M1b,stage IVであった.EGFR遺伝子変異は野生型であり,ALK検索を同検体で行ったところ,高感度IHC法では強陽性,FISH法では陰性陽性細胞(2/50個)であった.提出した標本の染色の状態を見直すとハイブリダイゼーション前の酵素処理が不十分であることが示唆されたため,酵素処理時間を延長して同検体で再検した結果,陽性(29/50個)と判定された.クリゾチニブの投与により腫瘍縮小効果を認めた.結論.再検査にて異なるFISH結果が得られたEML4-ALK融合遺伝子陽性肺癌の1例を経験した.
  • 日比野 真, 山本 紗織, 伊東 直哉, 平島 修, 大江 元樹, 近藤 哲理
    2014 年 54 巻 4 号 p. 212-217
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.置換性増殖優位型浸潤性腺癌は,以前は粘液非産生性細気管支肺胞上皮癌と呼ばれており,多彩な画像所見を呈する.症例.70歳の男性.7か月間の湿性咳嗽と1か月前からの労作時呼吸困難感を認めて受診した.胸部CTで広範囲に気管支透亮像を伴う浸潤影とメロンの皮様網目状陰影を認め,一部分に小葉中心性のすりガラス陰影を認めた.以上より経気道散布する病変が進行している状態が考えられ,経気管支肺生検の結果,置換性増殖優位型浸潤性腺癌,cT4N3M1a,IV期と診断した.気管支漏,低酸素血症を認めたが,エクソン21の点突然変異(L858R)を確認した後にゲフィチニブを投与したところ,症状は迅速に改善し酸素療法を離脱できた.一旦は改善したが,原病の悪化があり2次,3次治療を行ったが治療開始後26か月で死亡した.結論.胸部CT読影や病理学的検索の際,小葉単位における病変分布の推定を行うためには,病変の程度が軽い部分で行うことが重要である.また,気管支漏を呈する肺腺癌に対する上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤の有用性は,抗腫瘍効果に加え,同薬剤による直接的な粘液産生抑制が関与している可能性が考えられた.
  • 米田 太郎, 木場 隼人, 酒井 珠美, 山崎 雅英, 上田 善道, 笠原 寿郎
    2014 年 54 巻 4 号 p. 218-225
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.後縦隔腫瘍として,悪性中皮腫は稀である.症例.81歳男性.腰痛を主訴に受診し,胸部単純CTにて右胸膜結節ならびに第11胸椎に椎体骨破壊像を伴う後縦隔傍椎体腫瘍を認めた.胸膜結節に対して悪性胸膜病変を疑い胸腔鏡下胸膜生検を行い,悪性胸膜中皮腫と診断した.後縦隔腫瘍について病理診断は未施行であったが,骨髄穿刺にて非ホジキンリンパ腫の骨髄浸潤を認めたことから,後縦隔腫瘍は当初リンパ腫を疑った.悪性胸膜中皮腫に対し抗癌剤治療,後縦隔腫瘍に対し放射線治療を開始したが,放射線治療効果が乏しいことから治療途中に縦隔CTガイド下針生検を施行し,悪性中皮腫の診断が得られた.以上より後縦隔部腫瘤原発の悪性中皮腫が右胸膜に転移をきたした可能性が考えられた.全身化学療法ならびに局所放射線療法を併用し,腫瘍の増大なく経過している.結論.胸膜結節ならびに後縦隔腫瘍に関して,他の後縦隔腫瘍との鑑別が困難であったが,胸腔鏡下胸膜生検とCTガイド下縦隔生検にて診断し得た.後縦隔に悪性中皮腫が浸潤する症例は稀であり,非ホジキンリンパ腫と悪性中皮腫の関連性は不明であった.
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