肺癌
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55 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
症例
  • 北村 淳史, 中岡 大士, 岡藤 浩平, 仁多 寅彦, 西村 直樹, 蝶名林 直彦
    2015 年 55 巻 3 号 p. 151-154
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2015/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.粘液線維肉腫は高齢者の四肢に好発する比較的まれな軟部組織腫瘍であり,胸腔内転移をきたし胸腔鏡が施行された報告は少ない.症例.86歳男性.2013年4月に左肩甲部に腫瘤を自覚し,2013年5月に同部位を生検し,高分化型粘液線維肉腫,cT2bN1M0 Stage III(American Joint Commitee on Cancer(AJCC)Staging)と診断された.2013年6月に左背部肉腫切除術が施行され,断端陰性のため追加治療なく,経過観察となった.2014年7月頃より呼吸困難が出現し増悪するため,当科を受診した.胸部CT上右胸水と胸腔内に腫瘤をみとめ,両側肺野に多発する結節をみとめた.胸水細胞診では診断がえられず,確定診断目的に局所麻酔下胸腔鏡を施行した.壁側胸膜に多発する赤色調の腫瘤をみとめ,同部位から生検を行い粘液線維肉腫の胸腔内転移の診断をえた.その後呼吸不全が急速に進行したため,第22病日に永眠された.結論.粘液線維肉腫の胸腔内転移の1例を経験した.局所麻酔下胸腔鏡でまれな同腫瘍の胸腔内病変を観察することができ,診断に有用であった.
  • 樋浦 徹, 才田 優, 小山 建一, 阿部 徹哉, 田中 洋史, 横山 晶
    2015 年 55 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2015/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.EGFR-TKIの耐性機序のひとつとして,SCLCへの転化があり,SCLCに準じた化学療法が奏効するとの報告がなされている.症例.症例は47歳,女性.2010年に肺腺癌(pT2aN2M0, stage IIIA)にて,左上葉切除術を施行.その後再発し,2012年よりゲフィチニブでの治療を開始.腫瘍は縮小しPRを維持していたが,2013年に急速な胸水増加と胸膜病変の増大,NSEの上昇がみられ,胸水細胞診で小細胞癌と診断.カルボプラチン(CBDCA)+エトポシド(ETP)による化学療法が奏効するも,CEAの上昇と胸膜病変の再増大があり,ゲフィチニブの再開により改善.しかし,半年後に再度胸膜病変の増大がみられた.その後,胸膜病変からのCTガイド下肺生検の組織診で小細胞癌と診断され,同検体からEGFR遺伝子変異が検出された.結論.EGFR変異陽性肺腺癌の耐性機序として,少ないながらも小細胞癌への転化があることを念頭において診断治療を行うことが重要と考えられた.
  • 松田 佳也, 北田 正博, 林 諭史, 石橋 佳, 安田 俊輔, 大崎 能伸
    2015 年 55 巻 3 号 p. 161-165
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2015/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.Hepatoid adenocarcinoma of the lungはα-fetoprotein産生肺癌の一種であり,肝細胞癌様の組織形態を呈する稀な疾患である.症例.75歳,男性.健康診断の胸部CTで左肺下葉に腫瘤影を指摘された.呼吸器内科で精査され原発性肺癌の診断に至り,当科で手術(胸腔鏡補助下左肺下葉切除+縦隔郭清術)を施行された.病理組織学的所見は,AFP陽性で肝細胞癌に類似した組織形態を呈しており,hepatoid adenocarcinoma of the lungの診断に至った.術後経過は良好であった.術直後の血清α-fetoproteinは異常高値であったが,術後2か月以降基準値内で経過している.退院後外来で経過観察されているが,現時点では無再発生存中である.結論.本疾患は予後不良とされており,術後は血清α-fetoprotein値と各種画像検査による厳重な経過観察が必要と考える.
  • 岡田 あすか, 鹿子木 貴彦, 村上 伸介, 竹中 英昭, 長 澄人, 大林 千穂
    2015 年 55 巻 3 号 p. 166-170
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2015/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.粘液産生肺腺癌においてはKRAS遺伝子変異やanaplastic lymphoma kinase(ALK)融合遺伝子が多く報告されている.EGFR遺伝子変異陽性の粘液産生肺腺癌は稀であり,ここに報告する.症例.62歳の女性.咳嗽と労作時呼吸困難を主訴に来院され,胸部X線写真で右中肺野の濃い浸潤影と,両側上肺野を中心に多発結節影を認めた.画像・病理組織学的検査より粘液産生肺腺癌cT4N3M1b(両側肺内転移,右胸水,多発骨転移)と診断,EGFR遺伝子変異陽性が判明したためゲフィチニブの投与を開始,肺内の陰影は縮小しPR(RECIST v1.1基準)と判断したが,治療開始後約4ヶ月の経過で癌性胸膜炎・心膜炎が出現・増強した.化学療法は拒否されており,その後全身状態悪化によりゲフィチニブ開始198日目に永眠された.結論.EGFR遺伝子変異陽性で粘液産生が認められた,稀な肺腺癌の1例を経験した.治療効果が見られたものの,早期に再増悪を認めたことと免疫組織学的形態の関係性に関しては未だ不明であり,薬物動態の検討など今後さらなる症例の蓄積が待たれる.
  • 田中 真, 上野 剛, 末久 弘, 澤田 茂樹, 上月 稔幸, 山下 素弘
    2015 年 55 巻 3 号 p. 171-175
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2015/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.近年,癌治療の向上で癌患者の長期生存例は増加傾向にある.しかし一方で多重癌の報告が散見されるようになり問題となっている.症例.77歳男性.右上葉小細胞肺癌(cT1aN3M0,Stage IIIB)に対してCisplatin+etoposideによる化学療法4コースと46 Gyの放射線療法を施行した.以後再燃なく経過観察が行われていた.初回治療から11年後に咳,痰,胸痛を認め精査を行った結果,右上葉肺癌cT2aN0M0,cStage IB:左上葉肺癌cT1aN0M0,cStage IA:喉頭癌cT1N0M0,cStage IAの重複癌の出現を認めた.まずは最も進行度の高い右肺癌に対して右肺上中葉+上大静脈部分切除を施行した.術後の呼吸機能低下があり,左肺癌の手術は困難と判断したため,左肺癌に対しては66 Gyの放射線療法を施行し,その後喉頭癌に対しても66 Gyの放射線療法を施行した.結論.小細胞肺癌に対して化学放射線療法後に重複癌を認めた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 後町 杏子, 磯部 和順, 清水 宏繁, 松田 聡, 栃木 直文, 本間 栄
    2015 年 55 巻 3 号 p. 176-182
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2015/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.肺多形癌は紡錘形細胞または巨細胞からなる肉腫様成分を含む稀な低分化な癌で,診断に難渋することが多く,その予後は不良である.症例.73歳男性.発熱を主訴に近医を受診し,左上葉の腫瘤と腹部腫瘤を指摘され当院に紹介された.左上葉腫瘤に対して経気管支的肺生検を行い,癌腫が証明されたが,組織型の確定は困難であった.さらに腹部腫瘤は小腸内視鏡生検にて低分化癌と診断され,免疫染色パターンから肺原発が疑われた.腸閉塞や穿孔を来す危険性が高いと判断し,小腸切除を行った.手術所見では計3か所に小腸腫瘍を認め,うち1か所は既に横行結腸に穿通し,さらに空腸動脈浸潤,腹壁・膀胱浸潤も伴っていた.腫瘍は,紡錐形細胞,巨細胞を特徴とする肉腫様成分とともに低分化な上皮性腫瘍を混じた多形癌であった.結論.本症例は原発巣の肺生検組織のみでは診断が困難であった.抗生剤不応性の遷延性発熱,炎症反応の上昇を伴った消化管転移を認める症例の鑑別には肺多形癌を考慮すべきで,病状が重篤化する前に積極的に転移病巣の切除を検討すべきである.
  • 梅下 会美, 高桑 修, 小栗 鉄也, 下平 政史, 上村 剛大, 新実 彰男
    2015 年 55 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2015/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    背景.副腎は原発性肺癌の頻度の高い転移部位であるが,肺癌副腎転移巣からの出血の報告は稀である.今回,副腎転移からの出血を契機に診断から短期間で死亡した症例を経験したので報告する.症例.68歳男性.咳と倦怠感を主訴に当院を受診した.CTにて右上葉結節影と右胸水,両副腎腫大の所見があり,右胸水細胞診で腺癌細胞を認め,FDG-PET検査を含めた全身精査の結果,IV期原発性肺腺癌と診断した.抗癌剤治療のため入院予定であったが,初診から12日目に右腰部背側に皮下出血が出現し救急外来を受診.血液検査でヘモグロビン値の低下があり,腹部CTで右副腎の著明な腫大と周囲の液体貯留像を認め右副腎転移巣からの出血と診断した.輸血を行い保存的に経過をみたが,入院第9病日に再出血を認めたため右副腎動脈造影と塞栓術を施行した.その後は肺癌の進行による呼吸不全悪化のため緩和治療の方針となり,入院から25日目に死亡した.結論.肺癌の副腎転移巣からの出血は予後不良な経過をたどることが多く,臨床上注意が必要である.
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