肺癌
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56 巻, 4 号
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症例
  • 谷澤 秀, 宮城 淳, 那覇 唯, 内原 照仁, 赤嶺 盛和, 石川 雅士
    2016 年 56 巻 4 号 p. 257-262
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺門・縦隔リンパ節転移で見つかる原発不明小細胞癌の報告が散見される.また肺小細胞癌と肺腺癌が肺野に独立して同時に存在した報告は少ない.症例.67歳,男性.胸部CTで右上葉にGGO病変が偶然見つかった.PET検査では肺門リンパ節への集積が見られたが遠隔転移はなく,右上葉切除およびリンパ節郭清術を行った.病理検査の結果,GGO病変は肺腺癌と診断されたが,肺門リンパ節は小細胞癌と診断された.摘出した右上葉の全割面標本を肉眼的に詳細に観察して原発を精査した結果,GGO病変と離れた部位に2.5 mmの小細胞癌が見つかった.その周囲には多数のリンパ管浸潤が見られたため,原発巣と判断された.結語.原発不明の肺門・縦隔リンパ節小細胞癌の報告が見られるが,原発と考えられる肺葉を詳細に精査すれば原発巣を同定できる可能性がある.

  • 桂田 雅大, 三沢 昌史, 鈴木 史, 桂田 直子, 青島 正大
    2016 年 56 巻 4 号 p. 263-267
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.ALK融合遺伝子陽性非小細胞癌に対しALK阻害薬は有効な薬剤であるが,多くは耐性化する.また癌性髄膜症は治療抵抗性であり致死的転帰を辿る重篤な病態である.今回我々は,クリゾチニブ耐性髄膜症にアレクチニブが劇的に奏効し,その後も持続奏効した1例を経験したため報告する.症例.45歳女性.ALK融合遺伝子陽性肺腺癌(cT3N2M1b,OSS,stage IV)と診断し,カルボプラチン,ペメトレキセド,ベバシズマブ併用療法後のペメトレキセド,ベバシズマブ継続維持療法で部分奏効を得た.その後再発を認めクリゾチニブにより部分奏効を得たが,癌性髄膜症および肝転移の増大で病勢進行(progressive disease:PD)を認めた.アレクチニブにより両病変とも速やかな奏効を得たが,後に肝転移および原発巣は徐々に増悪し,Trousseau症候群による多発脳梗塞で死亡した.しかし,治療経過中,癌性髄膜症は死亡までの8ヶ月間再燃を認めなかった.結論.ALK陽性肺癌の癌性髄膜症においてアレクチニブは選択すべき薬剤であり,さらに他病変がPDでもbeyond PDとしてアレクチニブ継続投与が癌性髄膜症再燃の抑制に有益となる可能性がある.

  • 高田 昌彦, 眞庭 謙昌
    2016 年 56 巻 4 号 p. 268-272
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.絨毛癌は通常,妊娠時の絨毛細胞から発生する腫瘍である.一方極めて稀だが肺原発の報告もある.今回その発生に関し,肺原発か転移性かの判定に苦慮した肺絨毛癌の1例を経験したため,報告する.症例.36歳女性,2度の正常分娩の間に胞状奇胎の治療歴あり.検診で右肺に境界明瞭な26 mmの腫瘤を指摘された.翌月無月経となり婦人科を受診,妊娠反応陽性で血中hCGは高値だが,胎芽は認められなかった.検診の4ヶ月後,右肺腫瘤は31 mmに増大,気管支鏡検査では確定診断に至らず,FDG-PETではSUV max 8.73の高集積を認めたが,肺門や縦隔リンパ節および骨盤腔などの他部位に集積を認めなかった.悪性腫瘍を疑い右下葉切除を施行した.組織学的に絨毛癌と診断され,化学療法を3コース施行した.血中hCGは術直後より正常化し,術後1年再発を認めていない.本症例は当初奇胎の肺転移と肺原発の鑑別が問題となった.しかし妊娠歴と肺原発の頻度が極めて低いことから絨毛細胞由来と判断,さらに奇胎掻爬後に血中hCGは正常化し,その後に挙児歴があることから,奇胎由来ではなく,その後の妊娠時の絨毛組織由来と考えた.

  • 村上 斗司, 巻幡 清, 瀧川 奈義夫
    2016 年 56 巻 4 号 p. 273-277
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.ペメトレキセド(PEM)は非扁平非小細胞肺癌において有効な薬剤であるが,再投与の有用性は確立されていない.我々は肺癌症例に対してPEMの再投与を行ったので報告する.方法.2010年1月から2014年12月までにPEMを再投与した肺癌患者5例を対象に後ろ向き検討を行った.結果.全例がIV期の肺腺癌であり,年齢中央値は64歳(範囲:61~76歳)であった.初回化学療法としてプラチナ製剤とPEM併用化学療法4例中3例が部分奏効,PEM単剤療法1例が部分奏効であり,最終投与日から再投与までの期間の中央値は14.5ヶ月(範囲:11.8~17.4ヶ月)であった.PEM再投与により3例で部分奏効となり,無増悪生存期間中央値は7.2ヶ月(95%信頼区間:3.8~10.6ヶ月)であった.結論.選択された症例に対するPEM再投与の有用性が示唆された.

  • 石川 立, 本田 宏幸, 小野 貴広, 中田 尚志, 北村 公一, 森 裕二
    2016 年 56 巻 4 号 p. 278-283
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌の診断後に多発性筋炎を発症する例は稀である.症例.症例は63歳男性.2015年2月に肺扁平上皮癌(cT4N2M1b,stage IV)と診断されCarboplatin(CBDCA)およびTegafur/gimeracil/oteracil(S-1)による化学療法で安定の評価であった.化学療法中からcreatinine kinase(CK)の上昇があり,当初S-1による横紋筋融解症が疑われたため,化学療法をCBDCAおよびNanoparticle-albumin-bound-paclitaxel(nab-PTX)に変更した.しかしCKの上昇が止まらず発熱や筋力低下を伴ってきたため,筋炎を疑い筋生検したところ,多発性筋炎と診断された.Prednisolone(PSL)および免疫抑制剤による治療で多発性筋炎は改善した.結論.肺癌にCKの上昇を併発した際には,多発性筋炎の可能性を考える必要がある.

  • 柳川 直樹, 安孫子 正美, 塩野 知志, 刑部 光正, 緒形 真也, 田村 元
    2016 年 56 巻 4 号 p. 284-289
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.治療成績の向上,各種医療機器の発達,高齢化などにより重複癌が見つかる割合は増加している.症例.75歳女性.膵癌術後follow up中,胸部異常陰影を指摘された.胸部CTでは右S2に径10 mmの境界が比較的明瞭で内部はすりガラス様の陰影を伴う腫瘤が,右S5及び右S8にそれぞれ径5 mmほどの円形小腫瘤が認められた.S2,S5,S8の肺腫瘤に対し部分切除を施行した.病理組織学的検査ではS2の腫瘤は肺胞上皮を置換するようにクララ細胞に類似する腫瘍細胞の増生が見られ,粘液非産生性の原発性上皮内腺癌と診断されたが,一方でS5,S8の腫瘤は両者ともに核が基底側に偏位し粘液を有する高円柱状の腫瘍細胞が肺胞上皮置換性に増生していた.粘液産生性肺腺癌と膵癌肺転移の鑑別のためKRAS遺伝子変異検査を行ったところ,膵癌とS5,S8の肺腫瘤からKRAS exon 2の遺伝子変異(G12D)が同定され膵癌肺転移と診断された.結論.膵癌術後の多発肺腫瘤に対し部分切除を行い,粘液産生性肺腺癌との鑑別を要した膵癌肺転移と原発性肺腺癌が同時に存在した1例を経験したので報告した.

  • 西條 天基, 伊藤 哲思, 池田 徳彦
    2016 年 56 巻 4 号 p. 290-296
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.癌性髄膜炎を併発したEGFR変異陽性肺腺癌に対し,afatinib内服により神経症状やPSに対し良好な効果を得た3例を経験した.症例1.20歳代女性,IV期肺腺癌Exon19欠失変異.癌性髄膜炎で病勢増悪後,3次治療でafatinib開始.2週間で癌性髄膜炎症状は改善.症例2.40歳代女性,IV期肺腺癌Exon19欠失変異.癌性髄膜炎で病勢増悪,3次治療でafatinib開始.2週間で癌性髄膜炎症状は改善.症例3.60歳代女性,IV期肺腺癌L858R点突然変異(癌性髄膜炎初発).初回治療でafatinib開始,4週間で意識レベルは改善(JCS III-100→I-1).現在,afatinib開始11か月経過,無増悪で通院治療継続中.結論.いずれの症例も,癌性髄膜炎症状はafatinibにより改善した.癌性髄膜炎に対しafatinib開始後の症例1,2のPFSは8および5か月,OSは19および8か月であり,症例3は投与11か月で無再発生存である.Afatinibは,EGFR変異陽性肺腺癌の癌性髄膜炎に対して症状およびQOLの改善を期待できる可能性が示唆された.

  • 片山 公実子, 岡田 あすか, 村上 伸介, 竹中 英昭, 西村 元宏, 長 澄人
    2016 年 56 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺多形癌は血痰や喀血を認めることが多い.症例.46歳女性.約3週間前から血痰が持続するため近医を受診し,右S1の嚢胞に接して結節状陰影とその周囲に非区域性の浸潤影を認めたため当院に紹介された.気管支鏡検査時には右上葉の陰影は嚢胞周囲に壁肥厚を残して縮小しており,擦過細胞診のみ施行したが悪性細胞は検出されなかった.2ヶ月後に再度血痰が出現し,CTでは右S1の嚢胞の壁肥厚が増悪していた.右B1aより経気管支肺生検を施行して肺扁平上皮癌と診断し,その後施行したFDG-PET/CTでは右上葉の嚢胞の壁肥厚に一致して集積を認めた.全身検索の結果,cT1bN0M0,stage IAと診断し右肺上葉切除術を施行した.腫瘍は上皮性腫瘍の他に,紡錘細胞や巨細胞を特徴とする肉腫様成分を多数認め,肺多形癌と診断した.また壊死組織が多くの血管を巻き込み出血領域が拡大,吸収を繰り返したため無治療で陰影の縮小を認めたと考えられた.結語.肺多形癌は血管新生に富み,易出血性であることから,陰影が自然縮小しても悪性の可能性を考慮し積極的に診断を進めるべきであると考える.

  • 小林 零, 永山 加奈, 高橋 保博, 川野 亮二, 数野 圭, 村田 聖一郎
    2016 年 56 巻 4 号 p. 303-307
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.過去の報告によると,大動脈合併切除術はmortality 12.5%,morbidity 31%と周術期リスクが高いものの,リンパ節転移がない症例であれば5年生存率が70%であるといわれている.周術期リスク軽減が可能であれば,大動脈浸潤肺癌に対する大動脈合併切除は有望な治療法とも考えられる.症例.76歳男性.左上葉に径3.2×3.0 cm大動脈弓部および後縦隔に接する腫瘤影を認めた.全身精査の結果,扁平上皮癌cT4N0M0 stage IIIAと診断された.審査胸腔鏡により大動脈浸潤を確認したのち,ステントグラフト留置術を施行した.留置3週間後に左肺上葉切除術+大動脈合併切除を施行し,術後10日目に退院した.最終病理結果では,moderately differentiated squamous cell carcinoma,E0,D0,Pl3,PM0,pT4N0M0であった.大動脈外膜までの肺癌浸潤が存在したが,完全切除が確認された.結論.ステントグラフトを術前に大動脈内に留置することで,大動脈浸潤肺癌に対する根治術を安全に施行可能であった.

  • 倉重 理絵, 坂下 博之, 東 盛志, 内堀 健, 木原 淳, 稲瀬 直彦
    2016 年 56 巻 4 号 p. 308-313
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.本邦では肺癌治療においてALK阻害剤2剤が使用可能であるが,その耐性化が問題となっている.症例は37歳,女性.肺腺癌,cT2aN3M0,Stage IIIB,ALK転座陽性の診断で,アレクチニブを開始した.約4か月半PRを維持したが,PDとなったためシスプラチンとペメトレキセドによる化学療法に切り替えた.Day 16より発熱,CRP上昇,急速なリンパ節の増大を認めた.アレクチニブを再投与したところ一部のリンパ節や肝転移は縮小したが,他のリンパ節は増大した.右鎖骨上リンパ節で行った再生検組織では,診断時の肺生検組織と比較して,ALK陽性癌細胞のうちMET増幅が陽性の細胞の割合が増加していた.クリゾチニブに変更したところ,すべての病変が縮小し,PRを得た.結論.本症例はアレクチニブ中止に伴いdisease flare様の経過を呈した.アレクチニブ再投与下で増大を認めた腫瘍部位では,MET増幅が耐性メカニズムであった可能性もある.耐性獲得の機序についてさらなる研究が望まれる.

  • 磯野 泰輔, 岡崎 彰仁, 湯浅 瑞希, 卯尾 真由加, 西辻 雅, 西 耕一
    2016 年 56 巻 4 号 p. 314-318
    発行日: 2016/08/20
    公開日: 2016/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌の初回診断時に孤立性膵転移が確認されることは稀である.症例.38歳男性.上背部痛の精査目的に施行した胸椎MRI検査で,第3胸椎浸潤を伴う腫瘤を認め,CTガイド下針生検を行うと扁平上皮癌が検出され,肺扁平上皮癌と診断した.FDG-PET検査では肺病変に加え膵尾部に異常集積を認め,腹部造影CT検査で膵尾部に辺縁が造影される26×24 mm大の腫瘤を認めた.膵腫瘤に対し超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)を施行すると,免疫染色で肺と同一の扁平上皮癌を認めたため,膵転移と診断した.結語.肺癌患者に孤立性膵腫瘍を認めた場合,膵転移と原発性膵癌の鑑別にEUS-FNAを行うことは有用と考えられた.

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