肺癌
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56 巻, 5 号
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原著
  • 津谷 あす香, 柴田 裕美, 勝島 詩恵, 秋吉 宏平, 徳永 伸也, 駄賀 晴子, 住谷 充弘, 少路 誠一, 武田 晃司
    2016 年 56 巻 5 号 p. 331-336
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    目的・方法.2013年1月~2015年3月までにre-biopsy(胸水を含む)を行った上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌患者25例について,T790Mの出現頻度を含むEGFR遺伝子変異の変化について検討を行った.結果.男性/女性:7/18例,初回化学療法時の年齢中央値67歳(33~77歳),EGFR遺伝子変異:exon19 del/L858R/L858R+T790M/T751-I759 del ins N:12/11/1/1例,初回治療はGefitinib 18例,re-biopsyのタイミングは12例が2次治療前に行われていた.診断時の生検部位は,肺原発巣/胸膜播種/骨/胸水:21/1/2/1例,re-biopsy時は原発巣/胸水/リンパ節:9/15/1例であった.Re-biopsy時のEGFR遺伝子変異はT790M出現を10例(40%)に認めたが,気管支鏡下の生検において遺伝子変異の検査法や提出検体により結果が解離していたものを4例認めた.結論.耐性遺伝子の有無は次治療の選択に影響を与えるが,組織生検での検索には限界もあり,液状検体など細胞診検体の利用も検討すべきである.

症例
  • 石橋 直也, 阿部 皓太郎, 佐藤 伸之
    2016 年 56 巻 5 号 p. 337-341
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.クリゾチニブにより薬疹と肝障害を発症した患者への,アレクチニブの安全性は不明である.症例.65歳女性.肺腺癌(cT1aN0M0 Stage IA)の診断で,胸腔鏡下右肺上葉切除術とリンパ節郭清を施行した.pT1aN2M0 Stage IIIAのため術後補助療法を行ったところ,軽度の薬剤性肝障害を生じた.術後約3年後,縦隔リンパ節に再発を認めたため手術検体を用いてEML4-ALK遺伝子検査を行い,転座陽性であった.クリゾチニブ内服約1週間後に薬疹と肝障害を認め,減量・隔日投与を行うも改善なく中止となった.血清CEA値上昇と腫瘍増大を認めたため,放射線治療を行った後にアレクチニブを開始した.腫瘍縮小を示し,肝機能異常も生じていないため治療を継続している.結論.クリゾチニブによる薬疹や肝障害を来しても,アレクチニブは安全かつ有効に使用できた.

  • 榛沢 理, 立石 知也, 小林 正嗣, 大久保 憲一, 伊藤 崇, 稲瀬 直彦
    2016 年 56 巻 5 号 p. 342-348
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.ネフローゼ症候群はしばしば傍腫瘍性症候群として発症することが知られているが,悪性胸膜中皮腫にネフローゼ症候群を合併する症例の報告はわずかであり,治療指針は確立されていない.症例.65歳男性.労作時呼吸困難のため前医を受診し,左胸水が認められた.胸腔鏡下胸膜生検を施行されたが診断はつかなかった.約5か月後,腹痛と全身性浮腫を自覚し,当院を受診した.36.6 g/日の大量の尿蛋白を認め,ネフローゼ症候群と診断した.腎生検で膜性腎症であり,高用量ステロイド療法を行った.悪性腫瘍合併を疑われ,PET-CTを撮像し,左胸膜縦隔側に18F-FDG集積を認めた.同部位の開胸生検により,上皮型悪性胸膜中皮腫と診断した.ネフローゼ症候群に伴う低アルブミン血症のため手術困難であり,化学療法とステロイドの投与を行った.化学療法5コース施行後にネフローゼ症候群の改善を認め,ステロイドを減量し,胸膜切除・肺剥皮術を施行した.手術後に血清アルブミン値がさらに改善し,尿蛋白量も改善した.結論.化学療法と手術によりネフローゼ症候群の改善を認めた,悪性胸膜中皮腫の1例を経験した.

  • 佐伯 和彦, 中西 徳彦, 森高 智典, 井上 考司, 前田 智治
    2016 年 56 巻 5 号 p. 349-354
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.小細胞肺癌は,中枢型で予後の悪い腫瘍である.今回我々は,胸膜肥厚を主体とする小細胞肺癌でアムルビシン治療による間質性肺炎の急性増悪を来した症例を経験したので報告する.症例.62歳男性.2009年間質性肺炎の診断.2014年2月より発熱および咳嗽を主訴に受診し,胸部単純写真にて左上肺野胸膜肥厚を認めたために入院となった.CTガイド下生検の結果,小細胞癌と診断した.シスプラチン+VP-16 6コース終了後PRの診断であり経過観察されていた.10月上旬の外来時に発熱を認め,胸部単純写真にて再び左上肺野胸膜肥厚を認めた.2次化学療法としてアムルビシンを開始した.同月中旬に発熱し,胸部単純CTにてアムルビシンによる間質性肺炎の急性増悪としてステロイドパルス療法を施行した.アムルビシンによる間質性肺炎の急性増悪は軽快したが,原疾患の進行により永眠された.結論.胸膜沿いに急速進展する小細胞肺癌は,予後不良である.さらにその間質性肺炎合併症例に対しての化学療法は,間質性肺炎の急性増悪の可能性もあり,慎重に行うべきである.

  • 伊藤 浩, 中根 茂喜, 中村 さや, 神山 潤二, 町田 和彦, 松尾 正樹
    2016 年 56 巻 5 号 p. 355-360
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌および非結核性肺抗酸菌症(肺NTM症)は増加傾向で,両疾患の合併例の増加も見込まれる.両疾患の治療薬には薬物相互作用が知られている.肺癌治療Gefitinibの血中濃度はCYP3A4誘導剤のリファンピシンやリファブチン(RBT)で低下,CYP3A4阻害薬のクラリスロマイシン(CAM)で上昇し得るため注意を要する.症例.72歳男性.右上葉肺腺癌stage IV,EGFR遺伝子変異陽性の診断でGefitinibを投与中,進行性の肺NTM症で治療を要した.薬物相互作用が懸念され,Gefitinibの血中濃度を測定した.Gefitinibの血中濃度は,RBT併用で60%に,RBT+CAM+エタンブトールの3剤併用で130%に変動した.併用治療は肝機能障害のため継続困難であった.CYP3A4で代謝のないAfatinibも肺NTM症治療薬と併用を試みたが,副作用で継続困難であった.結論.進行肺癌の予後は改善傾向にあり,肺NTM症合併の治療が必要な症例の増加も見込まれるが,薬物相互作用の観点で検討が必要と考えられる.

  • 巴山 紀子, 阪口 真之, 續 敬之, 齋藤 史武, 中村 守男, 結城 秀樹
    2016 年 56 巻 5 号 p. 361-367
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌に癌性髄膜炎を発症した際の予後は不良であり,さらに水頭症を合併した報告は少なく,標準的な治療法は定まっていない.症例.35歳女性.30歳時に粟粒結核の治療歴があり,両肺に多発結節影と脳内に多発腫瘤影が出現した.精査により原発性肺腺癌cT4N2M1b(BRA)stage IV,癌性髄膜炎と診断され,脳転移巣には全脳照射を施行し,gefitinibの投与を開始した.1ヶ月半後に癌性髄膜炎が悪化しerlotinibに変更した.Epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitor(EGFR-TKI)投与開始から1年後に原発巣が増大し,化学療法はカルボプラチン+ペメトレキセド(+ベバシズマブ)に変更した.その後に水頭症が出現しV-Pシャント術を施行しerlotinib投与を再開した.erlotinibの再開及びV-Pシャント術でPSが回復し,癌性髄膜炎の診断から2年半と長期生存した.結論.水頭症を併発した癌性髄膜炎に対しEGFR-TKI並びにV-Pシャント術にて長期生存した1例を経験したのでここに報告する.

  • 加藤 陽介, 松本 勲, 吉田 周平, 竹村 博文, 笠原 寿郎, 西川 晋吾
    2016 年 56 巻 5 号 p. 368-372
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.原発性肺癌は一般に肺実質内を進展し,胸膜に浸潤した場合,胸膜播種を起こすことが多い.今回我々は,主に葉間胸膜内を進展する,特異な発育形式を示した原発性肺腺癌の1切除例を経験したので報告する.症例.65歳男性.狭心症の経過観察中に右中肺野の異常陰影を指摘され,当院紹介となった.造影CT検査にて右小葉間裂,大葉間裂に淡い造影効果を伴う連珠状の腫瘤影を認めた.経過で緩徐な増大を示しており,診断および治療目的に切除の方針とした.手術は,右肺上中葉切除および下葉部分切除にND2a-1リンパ節郭清を追加した.病理組織学的に,腫瘍は主に葉間胸膜内に存在していたが,部分的に上葉肺実質内にも分布していた.腫瘍細胞は管腔状や乳頭状に増生しており,免疫染色にてTTF-1陽性,SP-A陽性であったため原発性肺腺癌(pT3N0M0)と診断した.また,EGFR変異陰性,EML4-ALK転座陽性であった.補助化学療法としてUFT内服を継続中であり,術後2年経過し再発を認めていない.結論.原発性肺癌が胸膜内進展形態をとることは稀であり,本症例においては胸膜由来病変との鑑別が困難であった.

  • 岡松 佑樹, 井上 勝博, 川上 覚, 河口 知允, 内山 明彦, 笹栗 毅和
    2016 年 56 巻 5 号 p. 373-378
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.軟骨肉腫は大腿骨や骨盤から発生することが多く,肺より発生する軟骨肉腫は極めて稀であり,国内では自験例を含めて18例が報告されているのみである.症例.53歳男性.高血圧症,脂質異常症で近医通院中であった.初診1か月前より咳嗽を認め,かかりつけ医を受診した.胸部X線写真で右下肺野に腫瘤影を指摘されたため当科紹介受診となり,精査目的に入院となった.胸部CTで右中下葉にまたがる腫瘤を認め,気管支鏡検査では確定診断には至らなかった.MRI,FDG-PET検査により悪性腫瘍が疑われたため,右中下葉切除術を施行した.切除標本の病理組織所見では,硝子軟骨様の多量の基質中に大小不同の異型性を有する軟骨細胞様の腫瘍細胞が増生しており,軟骨肉腫の病理診断となった.全身検索の結果,他臓器からの肺転移は否定的であり原発性肺軟骨肉腫と考えられた.術後経過は良好で,現在も再発や他臓器の原発巣の出現なく経過している.結語.今回我々は肺原発と考えられる軟骨肉腫の1例を経験した.治療の第1選択は手術による完全切除とされ,完全切除された場合の予後は比較的良好であるが,再発例も多く自験例も慎重な経過観察が必要である.

  • 岩坪 重彰, 橋本 教正, 西村 知子, 西村 尚志, 寺田 泰二, 安原 裕美子
    2016 年 56 巻 5 号 p. 379-384
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.今回,脳転移の治療後に,導入全身化学療法に続いて維持療法を3年間継続後,サルベージ手術を施行した症例を経験したので報告する.症例.症例は55歳,女性.頭痛,めまい,発語障害を主訴に近医を受診.脳腫瘍が2カ所に認められ,1個の腫瘍摘出術を施行した.摘出標本の病理所見では腺癌であり,胸部CTにて左肺上葉に縦隔胸膜浸潤が疑われる腫瘍陰影を認め,脳転移を伴う肺癌(cT3N0M1b,stage IV)と診断した.残る1カ所の脳転移巣にガンマナイフを施行し,シスプラチン(CDDP)+ペメトレキセド(PEM)を4コース,続いてPEMの維持療法を3年間に40コース施行したが,その間に新規病変を認めず,肺の原発巣は縮小を保ったままであったため,左上葉切除術を施行した.病理所見では腫瘍細胞を認めず,術後11カ月現在無治療で無再発生存中である.結論.脳転移の治療後,化学療法により長期制御が得られたため,サルベージ手術を施行し,腫瘍の残存を認めなかった1例を経験した.遠隔転移巣が制御され,長期の維持療法を施行した症例でも,サルベージ手術の適応になると考えられた.

  • 大塚 倫之, 細野 裕貴, 石島見 佳子, 上浪 健, 矢野 幸洋, 森 雅秀
    2016 年 56 巻 5 号 p. 385-389
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌では時に病巣の空洞化がみられるが,薄壁空洞を呈する症例は少ない.症例.55歳男性.X-3年6月に右上葉S2bの肺化膿症に罹患したが,この時既に右上葉S2aに14 mm大の嚢胞様病変が存在していた.その後,近医で経過観察中に右S2の病変が増大したため,X年11月当院へ再紹介された.胸部CTで右S2からS6にまたがる77 mm大の薄壁空洞病変を認め,尾側では空洞壁が肥厚していた.また両側肺野に大小様々の転移巣を認め,いずれも薄壁空洞を呈していた.肺扁平上皮癌と組織診断し,cisplatinとdocetaxelによる癌化学療法3サイクルを行った.原発巣と転移巣は,いずれもさらに薄壁化し嚢胞様を呈した.薄壁空洞を形成する機序として様々な仮説が報告されているが,本症例ではチェックバルブ機構の関与を疑った.結論.薄壁空洞性病変においても,肺癌の可能性も想定して注意深い経過観察が必要と考えられた.

  • 細野 裕貴, 矢野 幸洋, 石島 見佳子, 上浪 健, 赤澤 結貴, 森 雅秀
    2016 年 56 巻 5 号 p. 390-396
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2016/11/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.ニボルマブは,非小細胞肺癌に対する2次治療の有効性が認められ適応拡大されたが,合併症の1つとして薬剤性肺障害が報告されている.症例.49歳の男性.肺腺癌に対する7次治療としてニボルマブを開始したが,初回投与8日目に発熱,低酸素血症,胸部CT上すりガラス陰影が出現し,薬剤性肺障害を強く疑った.副腎皮質ステロイドの全身投与により薬剤性肺障害は改善した.また,2か月後でも腫瘍増大の抑制効果を確認した.結論.ニボルマブの単回投与後早期にも薬剤性肺障害が発症しうる.また,ニボルマブ1回のみの投与でも腫瘍増大を抑制できる可能性がある.

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