肺癌
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57 巻, 7 号
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総説
  • 佐藤 寿彦
    2017 年 57 巻 7 号 p. 819-825
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    間質性肺炎には高率に肺癌が合併することが知られている.この間質性肺炎合併肺癌にたいする抗癌治療に際しては間質性肺炎の致死的な急性増悪が合併症として問題となる.1980年代吉村らの急性増悪にたいする診断基準の提唱後,治療関連の急性増悪に対して理解が深まった.間質性肺炎そのものの疾患概念も整理されその治療成績・予後についての研究が進められ,予後の悪さが再認識されている.今日では間質性肺炎合併肺癌に対する肺癌治療について,切除術・抗癌剤治療・放射線治療のいずれも重篤な間質性肺炎の急性増悪(AE)をきたすリスクのあることが広く認識され,一層治療に対して慎重な姿勢がみられるようになった.一方これまで手探り状態で行われてきた治療も,治療成績,合併症の頻度やリスク因子が明らかにされるにつれて,状況はあらたな局面をむかえている.急性増悪の予防措置については少しずつ知見が蓄積されつつあり,リスクを踏まえて場合によってはエビデンスのある予防策を講じながら治療を進めてゆく方向性が定まってきたと考えている.本稿ではそうした流れにそって間質性肺炎合併肺癌の治療について概観してゆきたい.

原著
  • 水野 潔道, 大出 泰久, 林 祥子, 保浦 慶之, 清水 麗子, 茅田 洋之, 児嶋 秀晃, 髙橋 祥司, 井坂 光宏
    2017 年 57 巻 7 号 p. 826-831
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.ステープラーによる肺実質切離を行った悪性腫瘍術後の断端肉芽腫と断端再発の臨床的鑑別点を明らかにする.方法.当院において2002年9月から2016年12月までに病理診断を得た断端肉芽腫4例,断端再発10例を比較検討した.結果.手術から腫瘤出現までの期間(DFI)は断端肉芽腫では平均値28.0±13.5ヶ月,断端再発では19.1±13.4ヶ月であった.SUVmaxは平均値4.8±2.9と7.5±3.6,術前CEAはそれぞれ2.5±0.7 ng/dlと12.2±25.3 ng/dlであり,いずれも統計学的に有意差を認めなかった.肉芽腫では全例においてCEAは5 ng/dl未満で,断端再発では全例がSUVmaxが2以上であった.また,肉芽腫では全例肺切除時のステープルラインが腫瘤の辺縁に位置していたが,再発例では10例中4例で腫瘤の中央に位置していた.結論.DFIが短い,PETのFDG集積が高い,CEAが高値,ステープルラインが腫瘤の中心に存在する場合は断端再発をより疑い,経皮生検など,積極的に病理学的診断をつけることが望ましい.

症例
  • 杉山 陽介, 中治 仁志, 阪森 優一, 寺下 聡, 塩田 哲広
    2017 年 57 巻 7 号 p. 832-837
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.ALK阻害剤であるCrizotinibは,ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に対する有効性が示されている.脳脊髄液と血漿のCrizotinib濃度を測定した報告は散見されるが比較的若年者の報告であり,高齢者の報告はない.症例.86歳男性.頭痛,歩行障害で当院神経内科を受診した.頭部MRIで多発結節影,胸部CTで右肺結節影と右胸水,肺門および縦隔リンパ節腫大を認め,呼吸器科へ紹介された.精査の結果,ALK融合遺伝子陽性肺腺癌(cT1aN3M1b stage IV)と診断した.Crizotinibで治療すると胸部病変,転移性脳腫瘍の縮小を認め,胸水も消失した.脳脊髄液と血漿のCrizotinib濃度を測定すると,脳脊髄液濃度(2.09 ng/ml)と脳脊髄液/血漿比(0.0048)は過去の報告と比べ高値であった.投与開始7か月後に転移性脳腫瘍の増大と右胸水の出現を認めたため,Alectinibへ変更した.Alectinib開始後は転移性脳腫瘍と胸水の消失を認め,Alectinib開始22か月後も治療継続中である.結論.転移性脳腫瘍を有する高齢者ALK融合遺伝子陽性肺腺癌の脳脊髄液と血漿のCrizotinib濃度を測定した.高齢者ではCrizotinibの脳脊髄液への移行性が若年者と比較し良好な可能性がある.

  • 中島 康裕, 小松 有, 瀧 玲子, 櫻井 うらら, 石川 雄一, 小島 勝雄
    2017 年 57 巻 7 号 p. 838-842
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.原発性肺癌は,原発不明癌として発症する頻度が他臓器癌と比較して高く,しばしば転移巣の発見後に肺の原発巣が顕在化する.しかし,顕在化までの期間が7年にわたった報告は稀である.転移性脳腫瘍が先行し,原発巣である肺癌が長期間潜在した1例を経験したので報告する.症例.60歳男性.2008年に麻痺症状が出現し,精査で多発性脳腫瘍を認め,開頭腫瘍摘出術を施行.組織学的には低分化型腺癌で,転移性病変と考えられたが,全身検索で原発巣を認めず,原発不明癌として経過観察された.2015年に左上葉S1+2のブラ内に54×30 mm大の腫瘤陰影が出現し,左上葉切除+S6合併部分切除+ND2a-1を施行した.組織学的には紡錘形細胞から成る肉腫様成分と乳頭状ないし充実性の腺癌成分が混在し,多形癌(T3N0M1b(BRA),pStage IV)と診断された.肺の腺癌成分は脳転移巣と組織所見および免疫染色所見が一致し,脳転移病巣が先行した潜在性肺癌が,7年後に顕在化したと考えられた.結論.現代の発達した画像検査にも限界があり,原発不明癌においては,長期にわたる慎重な経過観察を要する.

  • 大槻 歩, 中島 啓, 三沢 昌史, 青島 正大
    2017 年 57 巻 7 号 p. 843-848
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.浸潤性粘液産生性肺腺癌(IMA)は肺腺癌の特殊型に分類されており,KRAS変異陽性率は高い.一方,EGFR変異陽性率は低く,殺細胞性薬の効果が乏しいことが多い.ニボルマブは抗PD-1抗体であり,KRAS変異陽性例に対して全生存を延長することが報告されている.KRAS変異陽性のIMAにニボルマブを投与し奏効した1例を経験した.症例.60歳男性.喀痰を主訴に初診.右下葉原発の肺腺癌cT3N0M0 stage IIBと診断され1ヶ月後に右下葉切除術が施行された.術後2ヶ月で早期再発し,1次治療カルボプラチンとペメトレキセドを6サイクル投与後,維持療法としてペメトレキセドを3サイクル投与.RECIST PDのため2次治療アルブミン懸濁型パクリタキセルを12サイクル投与.その後PDのため3次治療ドセタキセルを2サイクル投与.PDで対側肺病変より経気管支肺生検を施行し,KRAS変異陽性のIMAを認めた.4次治療ニボルマブを開始し14サイクル投与後,PRを継続中.結論.KRAS変異を検索することでIMAに対しニボルマブが治療選択肢の1つとなり得る.

  • 山本 亜弥, 岩田 隆, 橋本 光司
    2017 年 57 巻 7 号 p. 849-855
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺多形癌は化学療法に抵抗性を示す進行の速い予後不良な腫瘍であるが,今回,免疫チェックポイント阻害薬であるnivolumabが奏効した症例を経験したので報告する.症例.69歳男性.検診で発見された肺多形癌の術前に腎不全を発症.骨髄生検,腎生検から多発性骨髄腫およびそれによる円柱腎症と診断され,透析導入下に右肺全摘を施行.術後も血液透析を続行し第6病日にドレーンを抜去,第14病日より骨髄腫に対しmelphalan-prednisolone療法を計2回施行した.第51病日に肺癌小腸転移による腸重積のため緊急手術を施行.第103病日に皮膚,脳,副腎転移を認めガンマナイフおよびvinorelbine単剤化学療法を開始した.計5コース施行後病勢進行を認めたため2次治療としてnivolumabを導入.3コース施行後には皮膚転移巣は消失しCT像上両側副腎転移も著明に縮小.肺切除術後14か月後までにnivolumabを計15コース施行したところ急速な再発は緩徐となり,現在5次治療の化学療法を施行中である.結語.急速な再発をきたした多形癌にnivolumabで病勢制御し得た症例を経験した.

  • 久米田 浩孝, 倉石 博, 寺田 志洋, 山本 学, 小林 宣隆, 小林 理
    2017 年 57 巻 7 号 p. 856-859
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.線維性縦隔炎は縦隔内に線維芽細胞や膠原線維の増生,慢性炎症細胞浸潤を認める腫瘤を形成する稀な疾患である.症例.66歳,男性.咳嗽を主訴に受診した.胸部CT検査で大動脈弓部から左肺門にかけて内部均一な腫瘤を認め,FDG-PET検査で腫瘤に強い集積を認めた.確定診断目的に胸腔鏡下組織生検術を施行した.腫瘤は硬く,検体採取に難渋した.病理検査では,線維性組織および脂肪組織からなる結合組織内に小型類円形細胞の浸潤を認めた.組織量も少なく,診断が困難であり,再度組織生検を行ったが確定診断は得られず,他病院へ紹介した.再度生検が予定されたが,直前の胸部CT検査で明らかな腫瘤の縮小が認められた.病理所見,臨床所見も含め線維性縦隔炎と診断した.未治療にて2年経過したが腫瘤の増大は認めていない.結論.縦隔に非特異的な腫瘤性病変を認める場合,本疾患の可能性も念頭に置いて治療にあたるべきと考えられた.

  • 米田 太郎, 木村 英晴, 木場 隼人, 西川 晋吾, 曽根 崇, 笠原 寿郎
    2017 年 57 巻 7 号 p. 860-865
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺多形癌の予後は不良とされる.外科的手術が可能であった症例に関しては,リンパ節転移を認めなかった症例は長期予後が期待できるとの報告も存在するが,化学療法に関して標準的なレジメンは確立されていない.症例.59歳.男性.2015年夏から背部痛,血痰が出現し精査加療目的に当科に紹介となった.精査にて肺多形癌cT2bN2M1b(ADR)stage IVと診断された.全身化学療法としてカルボプラチン・パクリタキセル併用療法を3サイクル施行した.右副腎転移増大,多発肝転移,胃・十二指腸転移,歯肉転移を認め,高度貧血を伴っていた.2次治療としてニボルマブを投与した.2サイクル施行するも肝転移病変の増悪を認めた.その後,小腸転移による小腸穿孔を発症し緊急手術となった.結論.本症例は歯肉,胃,十二指腸転移,小腸転移など消化器系の多臓器に転移をきたした肺多形癌であった.本症例では免疫チェックポイント阻害薬の効果は得られなかった.

  • 伊達 直希, 庄司 剛, 若月 悠佑, 山田 裕一, 小田 義直, 片倉 浩理
    2017 年 57 巻 7 号 p. 866-869
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺原発肉腫は稀な腫瘍であり,鑑別も多岐にわたる.症例.79歳女性.血痰を主訴に救急搬送となり,胸部CTで中葉中枢側に5 cm大の腫瘤性病変を指摘された.気管支鏡下生検が行われたが,診断確定には至らなかった.診断,治療目的で右肺摘除術が施行された.術後永久病理標本で腫瘍は類円形の核を有し,円形~短紡錘形の細胞増殖から成り立っていた.各種免疫染色を追加し,詳細な検討を行ったが分類は困難であり,最終的に未分化/分類不能型肉腫と診断した.結論.肺原発の肉腫は非常に稀であり,診断に難渋することがある.

  • 多田 周, 高橋 有毅, 槙 龍之輔, 三品 泰二郎, 宮島 正博, 渡辺 敦
    2017 年 57 巻 7 号 p. 870-874
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2018/01/11
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.高齢者に対する気管切除・再建術の報告はいまだ少ない.症例.84歳女性.検診で胸部異常陰影を指摘された.胸部CT検査で胸部中部気管前壁の結節性病変を認めた.前医で行われた経気管支鏡生検で腺様嚢胞癌の診断であった.胸骨正中切開で気管管状切除・再建術を施行した.術後合併症はなく,術後33日目に退院した.結論.80歳代女性患者の気管原発腺様嚢胞癌に対して気管切除・再建術を施行した.切除後12か月無再発生存中である.

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