肺癌
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57 巻, 3 号
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総説
  • 中島 淳
    2017 年 57 巻 3 号 p. 159-166
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    肺癌TNM分類ver. 8について概説する.国際的なTNM分類は国際対がん連合(UICC)が策定・改訂し,原発性肺癌には2017年1月から改訂第8版が適用された.日本肺癌学会編集「肺癌取扱い規約」に定められたTNM分類はUICCのそれと同一であり,UICC-TNMの改訂に合わせて第8版が出版された.UICC-TNM分類は世界肺癌学会(IASLC)のデータベースを解析して作成された.第7版から第8版への変更点の要約は以下の通りである:T分類では最大径の分類基準が細分化され1,2,3,4,5,7 cmとなった.またCT上すりガラス状陰影を呈する肺癌については,最大径を病変全体径ではなく充実成分径(≒浸潤性増殖部の径)で表すこととした.N分類は変更されなかった.M分類では第7版のM1b分類が二分され,胸腔外の1臓器単発転移はM1b,多発転移はM1cと改まった.病期ではIA期がIA1,IA2,IA3期に分かれ,新たにIIIC期が設けられ,IV期がIVA,IVB期に分けられた.TNMと病期の対応も多少変更された.以上の変更について解説し,さらに問題点・今後の展望について述べる.

  • 堀之内 秀仁
    2017 年 57 巻 3 号 p. 167-174
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    非小細胞肺癌のうち,縦隔リンパ節転移を伴う患者集団がN2非小細胞肺癌とされている.放射線療法,化学療法が確立される以前,縦隔リンパ節転移含め完全切除可能な場合には,N2非小細胞肺癌に対しても手術が幅広く実施されていた.その後,根治的放射線療法,逐次化学放射線療法,同時化学放射線療法が確立され,手術なしでも一定の割合で根治を目指すことができるようになってきている.ただ,化学療法,放射線療法による成績は,5年生存割合で15%から20%程度で停滞しており,さらに高い根治率は達成できていない.そのようななか,長年,局所治療の強化,全身治療の強化の両面から新たな治療法が模索されてきた.具体的には,高線量化学放射線療法,新しい化学療法薬(ペメトレキセド,S-1),化学放射線療法に加えてEGFR抗体のセツキシマブの追加,MUC1ペプチドワクチンのTecemotideの追加などが試みられてきた.このような治療内容の改善に加え,原発巣と縦隔リンパ節転移の解剖学的な位置関係でN2非小細胞肺癌を分類し,治療を個別化することも試みられている.本稿では,過去から未来へと続くN2非小細胞肺癌の治療開発について概論したい.

原著
  • 豊川 剛二, 村上 晴泰, 徳茂 広太, 波多野 弁, 西尾 誠人
    2017 年 57 巻 3 号 p. 175-183
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.アレクチニブを含むALK阻害剤(ALKi)前治療歴のあるALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌(ALK+NSCLC)患者の, セリチニブでの有効性検討.研究計画.国内第I相試験でALK+NSCLC患者のセリチニブの安全性と有効性,及び国内第I相試験と海外第I相試験(ASCEND-1)におけるアレクチニブ既治療例のセリチニブの有効性を検討した.結果.国内第I相試験でのセリチニブの主な重篤な有害事象はALT増加で,最大耐容量/推奨用量である750 mg/日の奏効率は37.5%(3/8例),病勢コントロール率は75.0%(6/8例)であった.全用量のALKi既治療例における奏効率は52.9%(9/17例,すべてPR)で,奏効例のPFSは4.2ヵ月以上であった.PRを確認した9例中3例でセリチニブ投与前のALK二次変異が特定された(L1196M,I1171,I1171T).国内第I相試験とASCEND-1でアレクチニブ既治療例の41.7%(5/12例)がPRであった.結論.セリチニブはアレクチニブ前治療歴のあるALK+NSCLC患者でも有効性を示し,新たな治療選択肢となる可能性がある.

  • 吉澤 孝浩, 磯部 和順, 鏑木 教平, 小林 紘, 佐野 剛, 杉野 圭史, 坂本 晋, 髙井 雄二郎, 栃木 直文, 本間 栄
    2017 年 57 巻 3 号 p. 184-189
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.間質性肺炎(interstitial pneumonia:IP)合併肺癌に対するS-1単剤投与の有用性および認容性を明らかにする.方法.2005年4月から2015年3月までに,当科でS-1単独療法を施行したIP合併肺癌15症例を対象に,臨床効果および有害事象についてretrospectiveに検討した.結果.患者背景は男性/女性=13/2,年齢中央値73歳(64~80歳),PSは0/1/2以上=2/5/8,組織型は腺癌/扁平上皮癌/その他=8/5/2,臨床病期はI/II/IIIA/IIIB/IV/術後再発=2/0/2/3/6/2,IPパターン分類はUIPパターン/non-UIPパターン=11/4であった.開始時ラインは1st/2nd/3rd/4th以降=3/1/4/7であった.治療効果は奏効率7.0%,病勢制御率60%で,無増悪生存期間中央値は71日,全生存期間中央値は329日であった.有害事象は血液,消化器毒性ともに軽度で,IP急性増悪は認められなかった.結語.S-1はPS不良例や治療ラインの多いIP合併肺癌患者でも有用で,比較的安全に使用されることが示唆された.

  • 小林 紘, 磯部 和順, 鏑木 教平, 吉澤 孝浩, 佐野 剛, 杉野 圭史, 坂本 晋, 高井 雄二郎, 栃木 直文, 本間 栄
    2017 年 57 巻 3 号 p. 190-195
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.Epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor(EGFR-TKI)治療に制酸剤併用が与える影響を明らかにする.方法.2008年8月から2014年12月にGefitinib/Erlotinibで加療されたEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌98例を対象とし,制酸剤併用群と非併用群へのEGFR-TKIの臨床効果を後方視的に検討した.結果.Gefitinib群の制酸剤併用は25/56例(44.6%)で,Erlotinib群は33/42例(78.6%)であり,Gefitinib群/Erlotinib群の奏効率,病勢制御率,無増悪生存期間は制酸剤併用の有無で有意差は認めず,Erlotinib群のGrade 3以上の肝障害は,制酸剤併用群が有意に少なかった(3% vs. 22%,p = 0.023).結論.制酸剤併用はEGFR-TKIの治療効果や毒性に大きな影響を与えないことが示唆された.

症例
  • 小野寺 賢, 佐藤 伸之, 阿部 皓太郎, 黒滝 日出一, 板橋 智映子
    2017 年 57 巻 3 号 p. 196-200
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺原発MALTリンパ腫は,肺原発腫瘍全体の0.5%以下と比較的まれな腫瘍である.症例.66歳,女性.咳嗽,発熱を主訴に受診.胸部CTで左肺下葉に腫瘍,左肺門に腫大したリンパ節を認めた.また,右肺中葉,左肺舌区に内部に拡張した気管支を伴うconsolidationを認めた.経気管支肺生検で左肺結節が腺癌の診断となり,cT1bN1M0,stage IIAの肺癌に対して手術を施行.左肺下葉切除術+リンパ節郭清を施行し,左肺舌区の気管支拡張症が疑われる部位も同時に切除した.術後の病理検査で左肺下葉の病変は腺房型腺癌,pT1aN1M0,stage IIAの診断,左肺舌区の病変はMALTリンパ腫の診断となった.術後右肺中葉の病変に対して経気管支肺生検を施行したものの病理組織診ではリンパ腫を疑う所見は認めず,現在経過観察中である.結論.肺癌手術時の標本で合併が確認された肺原発MALTリンパ腫を経験した.

  • 深井 隆太, 杉本 栄康, 武田 宏太郎, 工藤 まどか, 手島 伸一, 増永 敦子
    2017 年 57 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.現在肺癌に対する標準術式は肺葉切除および肺門・縦隔リンパ節郭清であるが,葉間部を中心に両葉に存在する肺癌に対する術式は定まっていない.症例.73歳,女性.動悸,息切れのために施行した胸部CTで異常影を指摘され,気管支鏡検査で異型腺腫様過形成(肺癌否定できず)の診断であった.病変は左S1+2とS6に葉間部をまたいで存在しており,1秒量1.47 lを考慮して胸腔鏡下S1+2およびS6区域切除を施行した.病理検査で病変は肺腺癌であり,癌は胸膜途絶(葉間不全分葉)部から連続性に他肺葉に進展していた.術後2年再発を認めていない.結語.葉間部に存在する肺癌において,区域切除は選択肢の一つになり得ると思われた.

  • 笹原 陽介, 島袋 活子, 吉井 千春, 鳥井 亮, 野口 真吾, 矢寺 和博
    2017 年 57 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺原発カルチノイドは多血性腫瘍であり,慢性肝炎に合併したカルチノイドの肝転移診断は困難である.症例.65歳男性.1990年に慢性C型肝炎と診断された.2011年の健診で右肺腫瘍,肝腫瘍を指摘され,A病院で気管支鏡検査を施行されたが診断に至らなかった.基礎疾患よりB病院で肝細胞癌が疑われ,肝動脈塞栓術を施行された.C医院で経過観察され,2013年に右肺腫瘍の増大で当院紹介となったが,気管支鏡では診断がつかなかった.肝腫瘍に対して肝生検を施行後,神経内分泌腫瘍の診断となり,肝細胞癌が否定され,画像所見から肺原発カルチノイドの肝転移と診断された.治療としてカルボプラチン,エトポシドの併用化学療法を行ったが肝障害のため継続不能であった.閉塞性肺炎を繰り返したことから右肺腫瘍に対して右中葉切除+リンパ節郭清を施行し,肝転移に対して肝動脈化学塞栓術を2回行った.しかし,徐々に全身状態が悪化し,初診から3年後に永眠した.結論.慢性C型肝炎を合併し肝転移を有する肺原発カルチノイドの症例を経験した.肝腫瘍に対し,患者背景にとらわれずに積極的に肝生検を行うことが確定診断のために重要と考えられる.

  • 森 雅秀, 澤 信彦, 細野 裕貴, 金津 正樹, 赤澤 結貴, 矢野 幸洋
    2017 年 57 巻 3 号 p. 211-215
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.OsimertinibはEGFR T790M遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に有効とされている.症例.診断時77歳女性.左下葉原発の肺腺癌でEGFR遺伝子変異exon19 15塩基対欠失(ex19 15-bp del)あり.右下葉にも結節が存在した.1次治療としてgefitinibを投与し当初は両側ともに縮小,2年後に病勢進行したが,さらに1年継続投与した.引き続きafatinibに切り替え1年投与したが無効であった.左原発巣の再生検での気管支洗浄液はex19 15-bp del,T790Mともに変異陽性であり,osimertinibの投与を開始した.左原発巣は部分寛解,右肺病変は不変であった.しかし,投与開始後から右胸水が出現し,胸水検体はex19 15-bp del陽性,T790M陰性であった.投与2ヶ月後に左水腎症,3ヶ月後に右水腎症で無尿となり経皮的腎瘻作成で対応したが,4ヶ月後に原病増悪で永眠された.結論.EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌において,T790M変異の存在が不均一であれば,異なる病変におけるosimertinibの治療効果に差が出る場合もあり得る.

  • 齊藤 尚美, 大道 和佳子, 石山 さやか, 出口 奈穂子, 谷脇 雅也, 山﨑 正弘
    2017 年 57 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺多形癌は化学療法に対して治療抵抗性であり予後不良な癌腫である.しかし近年,肺多形癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性が報告されている.症例.61歳,非喫煙女性.血痰を主訴に来院した.精査の結果,肺原発多形癌(cT2N2M0 stage IIIA)と診断した.また,EGFR遺伝子変異検査でexon21 L858Rを検出した.切除不能症例のため化学放射線治療を行ったが,3年3ヶ月後に再発しゲフィチニブならびにペメトレキシド(PEM)との併用療法を約5年間行った.再増悪後,4次治療としてニボルマブ療法を開始したところ良好な病勢制御効果を示し,合計12サイクルを施行した.結論.非喫煙者ならびにEGFR遺伝子変異陽性の肺多形癌に対し,免疫チェックポイント阻害薬を投与し良好な病勢制御を得た症例を経験した.今後,肺多形癌に対するニボルマブ療法の有効性を確認するため,さらなる症例集積が必要である.

  • 小川 尚彦, 木村 英晴, 谷村 航太, 米田 太郎, 曽根 崇, 笠原 寿郎
    2017 年 57 巻 3 号 p. 221-225
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺多形癌は稀な肺腫瘍であり,一般的に予後不良である.副甲状腺ホルモン関連蛋白(parathyroid hormone-related protein;PTHrP)の上昇に伴う高Ca血症(humoral hypercalcemia of malignancy;HHM)を合併した肺多形癌の報告は稀である.症例.59歳の現喫煙男性.右肩から背部にかけての疼痛を訴え受診した.胸部CTにて右上葉に胸壁に浸潤する11 cm大の腫瘤影と左副腎腫大を指摘された.CTガイド下生検で肉腫様変化を伴う分化度の低い腫瘍細胞を認め,肺多形癌(cT4N0M1b,臨床病期IV期,ADR)と診断した.入院時に軽度の意識障害を認め,PTHrPの上昇とそれに伴う高Ca血症を認めたためHHMと診断した.ゾレドロン酸と生理食塩液の点滴を行い血清Ca値が正常化したことを確認した後に,カルボプラチン,パクリタキセル,ベバシズマブによる3剤併用化学療法を6コース施行し,奏効を得た.結論.進行期肺多形癌は化学療法の効果に乏しいことが知られているが,このベバシズマブを含む3剤併用療法が有用である可能性が示唆された.

  • 西條 天基, 田中 彰彦, 伊藤 哲思, 池田 徳彦
    2017 年 57 巻 3 号 p. 226-231
    発行日: 2017/06/20
    公開日: 2017/07/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.ニボルマブは免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体であり,進行再発非小細胞肺がんに対する二次治療の標準治療の一つと考えられている.抗PD-1抗体による治療成績向上が期待される一方,自己免疫関連有害事象(irAE)が経験されている.ニボルマブ治療後にACTH欠損による二次性副腎皮質機能低下症を発症した症例を経験したので,報告する.症例.65歳男性,喫煙者.肺扁平上皮癌,IIIB期.二次治療としてニボルマブによる治療を開始.腫瘍縮小効果は良好であった.12コース実施後から食欲不振,全身倦怠感,低血圧(収縮期血圧90 mmHg台),1か月で約8 kgの体重減少を認めたため精査開始.血清コルチゾール値低値,ACTH低値であったため,ACTH欠損による副腎皮質機能不全と診断された.ステロイド補充療法開始後,収縮期血圧は120 mmHg台に改善,経口摂取良好となり全身倦怠感は消失した.結論.非小細胞肺がんに対するニボルマブ治療後に発症したACTH欠損による二次性副腎皮質機能低下症の報告は,国際的にも初である.免疫チェックポイント阻害薬に伴うirAEは多様で予測が困難であるため,安全管理と早期発見が重要である.

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