肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
最新号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総説
  • 堀尾 芳嗣
    2018 年 58 巻 7 号 p. 953-958
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    創薬不能と言われてきたRASがん遺伝子は,ヒトがんにおける最も高頻度(約25%)に変異している相同性の高い3つの遺伝子からなる遺伝子ファミリーである.肺がんでは,KRAS遺伝子の主にコドン12,13,あるいは61でミスセンス(点)突然変異が生じ,欧米の腺がんの約30%,日本の腺がんの約10%程度で変異が見つかっている.がんの成長と発達を促進する活性化変異RASに対する研究と治療開発が行われてきたが,1980年代のRASがん遺伝子発見から臨床的に有効な治療薬が30年以上見つかっていない.米国の国立がん研究所(National Cancer Institute)がRASがん遺伝子の細胞シグナル伝達経路を標的とした薬剤開発を目指して2013年にRASイニシアティブを立ち上げたことで,さらに研究が進んでおり,近い将来治療法も確立すると思われる.ここでは,抗RAS薬の過去と現状を述べる.

原著
  • 國崎 守, 榊原 純, 菊池 創, 北井 秀典, 水柿 秀紀, 朝比奈 肇, 菊地 英毅, 品川 尚文, 西村 正治
    2018 年 58 巻 7 号 p. 959-963
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    目的.Oligometastasesは遠隔転移が少ないことを指すが,明確な定義は定まっていない.今回,当院における非小細胞肺癌(NSCLC)患者におけるOligometastases症例の臨床因子学的背景,治療,予後などについて解析した.対象と方法.2003年4月から2017年9月にIV期NSCLCと診断した525例中,Oligometastases 10例を後方視的に検討した.結果.年齢は38~72歳(中央値65歳),男性/女性:7/3例,遺伝子変異は,EGFR陽性/ALK陽性/陰性:1/1/8例,転移臓器は,脳/小腸/副腎/骨/肝/腋窩リンパ節:4/2/1/1/1/1例であった.局所治療は8例に施行され,原発と転移の手術/原発と転移の放射線治療/転移のみの手術と放射線治療/転移のみの放射線治療:4/1/1/2例であった.化学療法施行例は8例であった.10例全体の生存期間中央値は35.7ヵ月,遺伝子変異陰性例では24.1ヵ月,EGFR陽性,ALK陽性ではそれぞれ35ヵ月,55ヵ月であった.結論.当院の症例では原発または転移の局所治療が多く施行され,比較的予後は良好であった.

症例
  • 福山 馨, 山本 亜弥, 戸田 道仁, 岩田 隆
    2018 年 58 巻 7 号 p. 964-968
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    背景.全身状態の低下したIII期切除不能肺癌に対するPD-1阻害薬の意義は不明である.症例.75歳男性.嗄声,嚥下困難を主訴に受診.胸部CT検査で左肺門部から右縦隔リンパ節まで一塊となり,大血管や気管へ浸潤する径7 cmの腫瘤影を指摘.気管支鏡検査で扁平上皮癌と診断.PD-L1は100%と高発現であった.FDG-PET検査および脳MRI検査でほかに転移はなく,IIIC期と診断.悪液質のため廃用が進行しECOG PSは4であった.このため体位維持が不能で放射線治療もできずペムブロリズマブの投与を開始.2コース投与で腫瘍の著明な縮小を得たものの全身状態は改善しなかった.患者および家族の希望により治療中止となり,3コース終了後に療養型病院へ転院となった.その後,無治療にもかかわらず経時的に全身状態は改善.ペムブロリズマブ初回投与から5ヶ月後に自宅へ退院し,11ヶ月後さらに腫瘍は縮小し部分奏効を維持している.結語.ペムブロリズマブ3コースの投与のみで長期奏効と全身状態改善が得られた1例を経験した.

  • 大橋 洋介, 服部 健史, 丁子 卓, 網島 優, 岡本 賢三, 須甲 憲明
    2018 年 58 巻 7 号 p. 969-974
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    背景.肺多形癌は悪性度の高い稀な腫瘍で,化学療法抵抗性として知られる.Pembrolizumabによる治療を行った肺多形癌の2例を経験したので報告する.症例1.64歳,男性.右背部痛を主訴に受診し,CTで右肺下葉に腫瘤と胸膜結節を指摘された.腫瘤に対しCTガイド下経皮生検を行い肺多形癌(cT4N0M1a,stage IVA)の診断が得られた.PD-L1の高発現(tumor proportion score 100%)を認め,pembrolizumabによる治療を行ったところ腫瘍は縮小した.症例2.62歳,女性.外科的手術後,扁平上皮癌と紡錘形の肉腫様成分からなる肺多形癌(pT3N0M0,stage IIB)と診断された.PD-L1は低発現(tumor proportion score 30%)であった.Carboplatin及びnab-paclitaxelによる一次治療を行い奏効したのちに再発し,二次治療としてpembrolizumabを投与したが,腫瘍は増大し奏効しなかった.結論.PD-L1高発現の肺多形癌に対してpembrolizumabが有効である可能性が示唆された.

  • 樋口 光徳, 遠藤 浩太郎, 押部 郁朗, 添田 暢俊, 斎藤 拓朗, 鈴木 弘行
    2018 年 58 巻 7 号 p. 975-979
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    背景.微小肺髄膜細胞様結節(MPMN)は切除肺で偶発的に確認されることが多いが,その発生母地は不明である.症例.67歳女性.咳嗽を主訴に当院受診.CTでは,左S1+2に内部に6 mmの充実性病変を伴った14 mm大のpart-solid GGNを認めた.cT1aN0M0 stage IA1の腺癌疑いで胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した.術中迅速病理診断では微小浸潤型腺癌と診断され,引き続き鏡視下に左上葉切除術を施行した.術後の病理診断は,置換型腺癌であった(pT1aN0M0 stage IA1).腫瘍の近傍にMPMNを認め,免疫染色ではEMA,CD56,vimentinおよびPgRで陽性であった.また,髄膜腫で見られるneurofibromatosis-2(NF-2)遺伝子変異をFISH法で検索したところ欠失所見を認めた.術後18ヵ月経過した現在,肺癌の再発および髄膜腫の発生を認めず経過中である.結論.NF-2遺伝子の欠失所見はMPMNと髄膜腫との発生要因の類似性を示唆すると考えられており,本例の結果も一致する.希少病変であるMPMNの病態解明のためにはさらなる研究が必要である.

  • 久保田 豊, 久野 はるか, 廣瀬 和紀, 古谷 渉, 長谷川 功, 山本 千恵
    2018 年 58 巻 7 号 p. 980-983
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    背景.非小細胞肺癌に対し免疫チェックポイント阻害剤を投与する機会が増えている.様々な免疫関連副作用が報告されており,そのマネジメントの重要性が叫ばれている.症例.70歳,男性.進行期肺腺癌に対しニボルマブを投与した.投与数日後より激しい下痢,嘔吐があり,再投与は行わなかった.投与10か月後に倦怠感,食思不振,低ナトリウム血症が出現,対症療法を行っていたが,症状は遷延し寒気の訴えや低血圧が出現した.精査の結果,下垂体機能低下症,二次性副腎不全と判明した.経口ヒドロコルチゾン補充により速やかに改善した.結論.たとえ単回投与で,長期間経過していても,ニボルマブによる免疫関連副作用には留意する必要がある.

  • 林 康之, 川井 隆広, 恒石 鉄兵, 橋本 教正, 岩坪 重彰, 西村 尚志
    2018 年 58 巻 7 号 p. 984-988
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    背景.肺癌領域においてEGFR遺伝子変異に代表されるドライバー遺伝子変異や,PD-L1を介した免疫逃避機構が注目されている.症例.57歳,男性.右上葉の35 mm大の腫瘤,右下葉の17 mm大の結節,鎖骨上窩と縦隔の多発リンパ節腫大を認め,縦隔リンパ節から生検を行い右上葉原発の肺腺癌cT4N3M0 Stage IIIC(EGFR exon21 L858R陽性,PD-L1陰性)と診断した.アファチニブ内服を開始したところ右下葉の腫瘍と鎖骨上窩や縦隔のリンパ節は縮小した一方,右上葉の腫瘍は増大を続けた.右上葉の腫瘍から生検を行った結果,再び腺癌が検出されたがEGFR遺伝子変異は陰性でPD-L1が90%陽性であった.右上葉腫瘍は肺腺癌cT2aN0M0 Stage IB(EGFR遺伝子変異陰性,PD-L1強陽性),右下葉腫瘍は肺腺癌cT1aN3M0 Stage IIIC(EGFR exon21 L858R陽性,PD-L1陰性)という,多発肺癌と診断した.結論.複数の病変の間で治療に対する反応性が異なる場合,多発癌や形質転換などを考慮して積極的に病理組織を採取することが望ましい.

  • 小泉 達彦, 金沢 賢也, 佐藤 佑樹, 峯村 浩之, 谷野 功典, 柴田 陽光
    2018 年 58 巻 7 号 p. 989-995
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    背景.Klinefelter症候群の頻度は男性の600人に1人程度といわれているが,自分がKlinefelter症候群と知らずに生活している患者も多くいると推測される.また,Klinefelter症候群と悪性疾患の合併はこれまでもたびたび報告されており,悪性胚細胞腫瘍の合併の頻度も一般人口と比べてはるかに高い.症例.診断時18歳男性.夜間突然の呼吸困難,左胸痛が出現し,胸部CTで巨大な縦隔腫瘍を指摘され,経胸壁生検や血液検査などを経て混合性胚細胞腫瘍の診断となった.また,胚細胞腫瘍の発症リスクや体型(高身長,痩せ型,長い手足),注意欠如・多動性障害の既往などからKlinefelter症候群を疑い,遺伝子検査を行い診断が得られた.混合型胚細胞腫瘍に対して化学療法の後に手術を行い,これまでのところ術後4年2ヶ月間の無再発生存の達成が確認されている.結論.男性縦隔胚細胞腫瘍で,特徴的な身体所見や学習障害の既往がみられた場合は,Klinefelter症候群の可能性を考慮することが必要である.

  • 西條 天基, 田中 彰彦, 伊藤 哲思, 池田 徳彦
    2018 年 58 巻 7 号 p. 996-1000
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    背景.免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による多様な免疫関連有害事象(irAE)が経験されている.ニボルマブ(NIVO)投与後に腸炎,肝機能障害,口内炎を伴う好中球減少を発症した症例を経験した.症例.74歳男性.肺腺がん,IVB期.前医で四次治療にNIVOを実施,3コースで奏効,4コース後から水様性下痢出現.整腸剤,止痢剤で経過観察したが下痢は持続(Grade 3),経口摂取低下,全身状態も低下した.緩和治療の方針となり当院に転院.下痢に対しプレドニゾロン(PSL)50 mg内服,6日目に下痢と経口摂取は改善した.PSL開始17日後にNIVO 5コース目を実施.実施11日後に肝機能障害(Grade 3),17日後に好中球減少(Grade 4)が出現.抗菌薬,G-CSF,ステロイドパルス療法により肝機能,好中球数は回復した.腫瘍はNIVO投与5コースで著明に縮小した.その後,治療を中止し経過観察,NIVO最終投与27か月後現在,無増悪生存中である.結論.ICIによる好中球減少は稀だが,今後殺細胞性抗悪性腫瘍薬と併用の機会も増えると予想され,好中球減少の原因としてirAEも含めて鑑別診断・安全管理をする必要がある.

  • 後町 杏子, 砂川 泉子, 杉野 圭史, 根本 哲夫, 本間 栄
    2018 年 58 巻 7 号 p. 1001-1006
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル 認証あり

    背景.良性石綿胸水,びまん性胸膜肥厚,円形無気肺はいずれもアスベスト関連呼吸器疾患の一つである.症例.造船業事務の職歴のある76歳男性.右胸水貯留のため受診され,胸部CTでは右下葉に円形無気肺,右胸水,両側の胸膜肥厚,胸膜プラークを認めた.経気管支肺生検では右円形無気肺は虚脱線維化した肺組織,右胸水穿刺ではリンパ球優位の滲出性胸水,胸腔鏡下胸膜生検で右胸膜は線維性胸膜肥厚だった.以上の所見と,職歴からアスベスト曝露が疑われ,アスベスト曝露による良性石綿胸水に伴うびまん性胸膜肥厚,円形無気肺と診断した.1年後には左胸水,円形無気肺,呼吸困難,湿性咳嗽が出現した.ステロイド治療や頻回の胸水穿刺,胸膜癒着療法を行うも胸水,胸膜肥厚,円形無気肺とも進行し,著明な拘束性換気障害を来して,初診時から約3年の経過で2型呼吸不全により永眠された.剖検では両肺に著明な線維性胸膜肥厚と円形無気肺を確認した.結論.良性石綿胸水に伴うびまん性胸膜肥厚,円形無気肺は本例のような予後不良症例が存在し得るが,根本的な治療が難しく,集学的な全身管理が望まれる.

支部活動
feedback
Top