肺癌
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59 巻, 1 号
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報告
  • 肺癌登録合同委員会, 岡見 次郎, 新谷 康, 奥村 明之進, 伊藤 宏之, 大塚 崇, 豊岡 伸一, 森 毅, 渡辺 俊一, 伊達 洋至, ...
    2019 年 59 巻 1 号 p. 2-28
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    肺癌登録合同委員会は,肺癌治療例の全国集計を行いその結果を報告してきた.本稿は,2010年手術例を対象とした第7次事業の報告である.主たる結果については,英語論文として発表している.本登録事業では,呼吸器外科専門医合同委員会認定修練施設において2010年に行われた原発性肺癌に対する治療目的で行ったすべての手術症例を,後向き観察研究として2016年にデータを収集した.近年の肺癌外科診療の変化を鑑み,①すりガラス陰影を主体とした早期肺癌,②多発肺癌,③併存症・既往歴,④術後短期死亡および合併症,⑤2011年に行われた肺腺癌病理分類の改訂への対応,⑥肺癌の遺伝子変異,⑦術後再発と再発後治療,に関する情報を収集できるよう注力した.296施設の協力により有効登録症例数は,過去最多となる18,973例であった.これにより,本邦の手術症例の詳細なデータが明らかになった.特に,外科治療成績の重要なエンドポイントのひとつである無再発生存率について,各ステージ別にデータが示された.これらのデータが肺癌診療に大いに役立つことが期待される.

総説
  • 梁川 雅弘, 富山 憲幸
    2019 年 59 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    肺癌の画像診断といえば,放射線科医による形態学的な評価が重要であることはいうまでもなく,結節の辺縁評価,内部評価,既存肺との関係などを評価し,画像診断を行う.しかしながら,ご存知のように,画像診断の分野では定量化が,何年も前から重要視されつつある.2007年の北米放射線学会にて,QIBA(Quantitative Imaging Biomarkers Alliance)という組織が立ち上がり,画像をバイオマーカーとして活用するための標準化された指標づくりという試みがなされてきた.実際臨床現場でも,結節の径計測にはじまり,体積計測など様々な定量化を行うことができる.多くの定量的指標の有用性が報告されるなか,やはり1次元,2次元解析は,汎用性は高いものの,主観的な影響を受けやすい.より客観的で再現性の高い解析には,3次元解析が必須である.そして近年では,人工知能を用いた研究も盛んになりつつある.本稿では,肺癌の悪性度および予後予測に焦点を置き,肺癌の定量解析や人工知能解析について概説する.

  • 後藤 悌, 元井 紀子
    2019 年 59 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    肺・縦隔発生の神経内分泌腫瘍は,小細胞癌,大細胞神経内分泌癌,異型カルチノイド,定型カルチノイドに分類され,小細胞癌,大細胞神経内分泌癌は高悪性度,異型カルチノイドは中悪性度,定型カルチノイドは低悪性度に大別される.WHO分類第3版(2004年)では異なる大分類項目に収載されていたが,最新のWHO分類第4版(2015年)では,神経内分泌腫瘍として1つの疾患グループにまとめられた.神経内分泌分化を示す大細胞神経内分泌癌が小細胞癌と同じカテゴリーに分類された点は大きな変更であり,生物学的特性の理解,今後の治療戦略の構築に有益と考えられる.肺・縦隔神経内分泌腫瘍の治療は外科切除が第一選択で,切除不能例に対しては薬物療法が施行される.高悪性度ではプラチナ製剤を中心とする化学療法が,カルチノイドではソマトスタチンアナログ,分子標的薬mammalian target of rapamycin(mTOR)阻害薬エベロリムスと,治療の選択肢が広がっている.本稿では,肺・縦隔神経内分泌腫瘍の疫学と病理診断,治療について,最新の知見を含めて概説する.稀な腫瘍の日常診療の一助となれば幸いである.

症例
  • 中村 祐基, 畑地 治, 鈴木 勇太, 坂口 直, 伊藤 健太郎, 西井 洋一
    2019 年 59 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.オシメルチニブは,EGFR T790M遺伝子陽性肺癌に対して高い奏効率,全生存率の延長効果が示されている第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるが,有害事象として重篤な好中球減少が散見される.症例.症例①:72歳男性,既喫煙者で,EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌と診断された.5次治療後に腫瘍が増大し,気管支鏡での再生検にてT790M耐性遺伝子が検出された.症例②:82歳女性,非喫煙者のEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌で,6次治療後に気管支鏡による生検検体にてT790M耐性遺伝子が検出された.症例①,②においてそれぞれ6次,7次治療としてオシメルチニブを開始した.投与開始後に重篤な好中球減少を呈したが,休薬にて好中球数の改善を認め,再開したものの再度好中球減少を呈したため,さらに減量し投与再開としたが,好中球減少は増悪することなく,現在も病勢制御が可能となっている.結論.オシメルチニブによる好中球減少の発症は用量依存性である可能性があり,減量投与にて好中球減少の再発を認めず,治療継続が可能であった.

  • 北台 留衣, 善家 義貴, 大熊 裕介, 細見 幸生, 比島 恒和, 岡村 樹
    2019 年 59 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブは,既治療進行非小細胞肺癌に対して有効性が認められている.一方,副作用に間質性肺炎を認めることがあり,早期の薬剤性肺炎の対策が重要である.症例.67歳,非喫煙の女性.肺腺扁平上皮癌に対して術後補助化学療法施行.6ヶ月後に多発肺転移,右腎転移,副神経リンパ節転移を認め,ニボルマブを開始し,部分奏効の腫瘍縮小効果を認めた.7サイクル施行後に両側胸膜下主体の斑状多発浸潤影を認め,臨床経過と画像所見よりニボルマブによる器質化肺炎型の薬剤性間質性肺炎を強く疑い,同薬剤中止のうえプレドニゾロン30 mg/日を開始し,速やかに肺炎は改善した.結論.ニボルマブ使用において器質化肺炎型の薬剤性間質性肺炎を発症した場合は,早期のステロイドによる治療が重要である.

  • 中村 敦, 相羽 智生, 川名 祥子, 齊藤 亮平, 戸井 之裕, 菅原 俊一
    2019 年 59 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬は非小細胞肺癌における有効な治療方法の1つとなっている.殺細胞性抗癌剤と異なる点として,一定の症例において腫瘍が増大した後に縮小するpseudoprogression(偽進行)が起きることがある.症例.57歳,男性,肺腺癌術後再発.3次治療としてニボルマブを投与した.初回投与直後にインフュージョンリアクションの出現あり.4コース投与後のCTでは,腫瘍内部に低濃度領域の出現を認めたものの,腫瘍は増大しPDと考えられた.しかし,腫瘍マーカーは低下しており,治療を継続した.8コース投与後には,腫瘍径はさらに増大したものの,腫瘍内部の低濃度領域は増大し,腫瘍マーカーはさらに低下,全身状態は改善傾向にあり,治療は有効と判断した.12コース投与後に腫瘍の縮小を認め,PRとなった.結論.免疫チェックポイント阻害薬治療においては,真の進行とpseudoprogressionの見極めが重要となる.画像上増悪を認めても,腫瘍マーカーの低下,腫瘍内部の低濃度領域の出現,irAEの出現を認める際はpseudoprogressionの可能性も考慮し,治療の継続を判断した方が良いと思われる.

  • 森 將鷹, 井上 政昭, 本多 陽平, 岡 壮一, 吉田 順一
    2019 年 59 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌で多形癌と粘表皮癌はともに比較的稀な組織型である.それぞれが孤発する例は時折経験するが,今回同時に併発した症例を経験したため報告する.症例.倦怠感を主訴とした74歳男性.胸部CTで左下葉S6に62 mmとS9に65 mmの不整形腫瘤を認めた.2つの腫瘍は辺縁が比較的滑らかな充実性結節で,ともにスリガラス陰影を一部に伴って,画像的に類似した陰影を呈していた.気管支鏡でB9から生検し悪性細胞が検出された.重複癌と肺内転移の両方の可能性が考えられたが,同一肺葉内であるため左下葉切除と縦隔リンパ節郭清(ND2a-1)を施行した.病理診断はS6腫瘍が多形癌pT3N0M0 stage IIB,S9腫瘍が粘表皮癌pT4N0M0 stage IIIAの結果であった.リハビリテーションを施行し術後2週間で退院した.結論.今回,稀な組織型である多形癌と粘表皮癌の同時多発例を経験した.多発肺結節である時は肺内転移だけでなく常に多発癌の可能性も考えておく必要がある.

  • 森本 健司, 伊達 紘二, 河野 秀彦
    2019 年 59 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.癌性腹膜炎が肺癌において合併することは少ない.Epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異陽性肺癌では,EGFR-tyrosine kinase inhibitorが奏効した報告があるが,driver mutation陰性症例での治療成功の報告は乏しい.症例.76歳男性.肺腺癌cT4N3M1c stage IVB(TNM分類第8版;多発腹腔内リンパ節転移,癌性胸膜炎),driver mutation陰性の診断で,シスプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブによる1次治療後,ペメトレキセド+ベバシズマブによる維持療法中であった.治療開始から1年4か月後,腹部CTで腹水貯留と腹膜肥厚を認め,腹腔穿刺で癌性腹膜炎による再発と診断した.ペムブロリズマブによる2次治療を行ったが,腹水貯留は増悪した.ドセタキセルによる3次治療に移行し,病勢制御を得た.結論.Performance Statusが良好であれば,癌性腹膜炎を呈する肺癌の再発に対して,ドセタキセルは有効な治療となる可能性がある.

  • 森 彰平, 三石 雄大, 野田 祐基, 加藤 大喜, 仲田 健男, 大塚 崇
    2019 年 59 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.神経内分泌分化を伴う非小細胞癌は,微小検体による診断では神経内分泌癌との鑑別が問題になることがある.今回我々は,経気管支肺生検にて小細胞癌と診断されたが,手術切除標本にて神経内分泌分化を伴う類基底細胞型扁平上皮癌と最終診断を得た症例を経験したので,報告する.症例.83歳男性.右上葉S2,S3に2つの腫瘍を認め,S3の腫瘍に対する経気管支肺生検で小細胞癌の診断を得た.併存疾患に慢性腎臓病があり根治的化学放射線療法が困難と考えられたため,根治的手術の方針とした.右上葉切除術を施行し,術後病理診断は神経内分泌分化を伴う類基底細胞型扁平上皮癌であった.S2の腫瘍は肺内転移で,#4Rリンパ節転移陽性であり,pT3N2M0 pStage IIIAと診断した.術後2年現在再発を認めていない.結論.微小検体での組織診断において,小細胞癌の形態があり免疫組織化学染色で神経内分泌マーカーが陽性であっても,神経内分泌分化を伴う非小細胞癌の可能性もあることを念頭におくべきである.

  • 土屋 武弘, 佐野 厚, 奧 茜衣, 福田 勉
    2019 年 59 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.胸膜原発の孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor of the pleura:SFTP)は,間葉系細胞由来の胸膜腫瘍である.切除可能であれば切除が推奨される.今回腫瘍指摘後,本人希望により未治療で経過し,腫瘍による心臓・両側肺圧排で循環不全をきたし亡くなった症例を経験した.症例.82歳女性.69歳時に呼吸困難を感じるようになり当院を受診した.胸部CTで右胸腔内に腫瘍を認めたが,精査を希望せず自己判断で通院を中止した.以後,呼吸困難となる度に受診し,軽快すると自己判断で通院を中止していた.経過中も腫瘍は増大し,右胸腔内を完全に占拠し左縦隔偏位をきたしていた.82歳時に呼吸困難で入院となり,徐々に状態が悪化し永眠された.剖検所見は臓側胸膜由来の腫瘍であり,心臓を左方へ圧排することで循環不全をきたしていた.組織学的検査では異型の目立たない紡錘形細胞を認め,CD34・STAT6陽性であり,胸膜原発の孤立性線維性腫瘍と診断された.結論.胸膜原発の孤立性線維性腫瘍の自然経過を観察した症例は非常に稀であり,組織学的に良性腫瘍であっても致死的となると考えさせられた1例であった.

  • 鏑木 翔太, 菅野 哲平, 野呂 林太郎, 清家 正博, 久保田 馨, 弦間 昭彦
    2019 年 59 巻 1 号 p. 88-93
    発行日: 2019/02/20
    公開日: 2019/03/04
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌による卵巣転移の頻度は低いが,卵巣腫瘍内への腫瘍内転移はさらに稀である.症例.79歳女性.1ヶ月間続く咳嗽を認め,精査目的のために当院へ紹介.気管支鏡検査にて肺癌と診断された.卵巣腫瘍も併存していたがPET/CTでFDGの異常集積がないため,良性腫瘍と判断した.肺癌に対し外科的肺切除術を施行し,肺大細胞神経内分泌癌(large-cell neuroendocrine carcinoma;LCNEC),stage IIIA期(pT3N1M0)であった.術後13ヶ月からPro-GRPの上昇を認め,PET/CTで卵巣腫瘍内にFDGの集積亢進を認めた.原発性卵巣癌が疑われたため,子宮全摘,両側卵管卵巣摘出および大網切除術を施行した.卵巣腫瘍内に紡錘形細胞と類円形細胞が混在しており,紡錘形細胞は卵巣線維腫と診断した.類円形細胞は,肺癌切除検体に類似し,神経内分泌マーカー陽性であり,LCNECによる卵巣腫瘍内転移と診断した.結論.LCNECの卵巣腫瘍内転移を経験した.良性腫瘍が併存するが,腫瘍マーカーが上昇するなど再発が示唆される症例には腫瘍内転移も考慮すべきである.

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