肺癌
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62 巻, 1 号
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総説
  • 谷田部 恭
    2022 年 62 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    2021年4月WHO胸部腫瘍分類第5版が発表された.ほぼ5年ぶりにWHOによる胸部腫瘍分類の改定がなされたことになる.今回の改定で大きな変革はなかったが,細部での情報が更新されているほか,新しく取り入れられた疾患もある.また書式としても,新たに加えられた項目である“Essential and desirable diagnostic criteria”としてまとめられており,診断や疾患の理解に配慮した内容となっている.本稿では新しく取り入れられた疾患に焦点を当て,変更点を概説したい.

  • 河野 隆志
    2022 年 62 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    肺がんはドライバー遺伝子変異などのコンパニオン診断など,すでにゲノム情報に基づいた個別化医療が行われているがんである.また標準治療終了後には,リキッドバイオプシー検査を含め,保険診療としてのがん遺伝子パネル検査を行い,新たな治療法を探すことも可能である.その一方で,肺がんを含めた多くの難治がんについて,全ゲノムシークエンス解析をがん診療に実装する動きが出てきている.患者から得られるがん組織試料に限りがあることや診療上必要となる遺伝子変化の情報が患者ごとに大きく異なることを考えると,解析対象遺伝子に制限のない全ゲノムシークエンス解析を実装することは理想的である.しかしながら,得られるゲノム情報は膨大であり,その処理のための資源・時間,そして検査としての質的保証の問題があり,現時点ですぐに医療実装できる段階ではない.そこで,がんの全ゲノムシークエンス解析をまずは研究として開始し,その結果を患者に還元するとともに研究・開発に活かすという,国家事業が開始されようとしている.

  • 畑中 豊, 木下 一郎, 秋田 弘俊
    2022 年 62 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    肺癌におけるドライバー変異を対象としたバイオマーカー検査は,EGFRALKROS1BRAFMETに,2021年にRETが新たに加わり,現在本邦では6遺伝子がコンパニオン診断(CDx)項目となっている.またがん免疫療法のバイオマーカー検査としてPD-L1 IHC検査が,2016年よりCDxとして実施されるようになった.本稿では,これらバイオマーカー検査の臨床導入の経緯やその際に直面した諸課題について総括するとともに,マルチプレックスアッセイやリキッドバイオプシーなどの新規検査技術のさらなる普及が見込まれている肺癌CDxの今後の展開について概説する.

原著
  • 植松 慎矢, 水谷 萌, 伊藤 雅弘, 髙橋 祥太, 藤原 直樹, 宮里 和佳, 青栁 貴之, 田戸 宏樹, 嶋田 俊秀, 西坂 泰夫
    2022 年 62 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.近年,進行・再発非小細胞肺癌の治療において,多くのドライバー遺伝子変異とそれに対応する分子標的薬が続々と承認されている.多くの遺伝子変異を同時に検出する目的で,次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査であるオンコマインDx Target TestマルチCDxシステム(ODxTT)が承認されたが,一般市中病院の臨床現場における実用性は明らかでなく,検査成功率に関して検証した.研究方法.2020年6月から2021年3月までに当院でドライバー遺伝子変異を検索した連続症例に関して,ODxTTの提出率,解析成功率,遺伝子変異検出率を検討した.結果.全83症例のうちODxTTを提出された症例は54例(65.1%),54例のうちすべての解析が成功した症例は52例(96.3%)であった.54例のうち遺伝子変異を25例(46.3%)に検出した.結論.ODxTTは遺伝子変異検索症例の65.1%で提出可能で,提出症例では95%以上で解析が成功し,約半数に遺伝子変異を認めており,一般市中病院でも実用性のある検査である可能性が示唆された.

症例
  • 藤田 俊, 濵井 宏介, 多田 慎平, 松村 未来, 上野 沙弥香, 谷本 琢也, 石川 暢久
    2022 年 62 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.Epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異陽性肺扁平上皮癌は稀であり,EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)の効果は肺腺癌より劣る.オシメルチニブはゲフィチニブ,アファチニブと比較して中枢神経病変に対する効果が優れていると報告されており,EGFR遺伝子変異陽性肺扁平上皮癌の脳転移に対して効果が期待されるが,その有効性は報告されていない.症例.72歳,女性,肺扁平上皮癌(T1bN2M0,stage IIIA),EGFR遺伝子変異(exon19欠失)陽性.化学放射線療法後に完全奏効となり,経過観察されていた.治療終了2年後に呂律困難が出現し近医脳外科を受診,頭部MRIで左前頭葉に腫瘤性病変を指摘された.同院で腫瘍摘出術を施行され,肺扁平上皮癌の脳転移と診断,当院に紹介された.その後,頭部MRIで摘出腔近傍に脳転移の再発を認めた.オシメルチニブ開始後,頭部MRIで脳転移の著明な縮小を認め,開始から20ヶ月経過した現在も継続中である.結論.脳転移を有するEGFR遺伝子変異陽性肺扁平上皮癌に対して,オシメルチニブは有用な選択肢と思われる.

  • 藤井 祥貴, 西田 達, 永田 憲司, 南 謙一, 吉本 直樹, 谷 恵利子, 平島 智徳
    2022 年 62 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.IVB期肺癌であっても転移巣が限られている場合(いわゆるOligometastatic disease),局所治療を行うことで予後の改善が得られることがある.症例.50歳代男性,小腸・左副腎転移を伴うIVB期肺癌に対し,転移巣切除と3年半に及ぶ9th lineの薬物療法を行ったが,肺原発巣のみが増大した.他に病変を認めなかったため手術による完全切除可能なOligometastatic diseaseと判断し,初回の手術を行った.術後6ヶ月で右胸壁と左鎖骨下リンパ節に再発を認めたが,病変は2ヶ所のみであったためOligometastatic diseaseの再発と診断し,右胸壁の病変に対しては2回目の外科切除,左鎖骨下リンパ節の病変に対しては放射線治療を行い,その後18ヶ月は再発を認めていない.IVB期肺癌診断時から5年半の長期生存を得ており,現在は職場復帰している.結論.IVB期肺癌であっても,Oligometastatic diseaseに対する積極的な局所治療は有効であると考える.

  • 大村 彰勲, 渡 洋和, 坂田 龍平, 川岸 紗千, 田中 諒, 木村 亨, 馬庭 知弘, 本間 圭一郎, 岡見 次郎
    2022 年 62 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.Malignant peripheral nerve sheath tumor(MPNST)は希少な悪性神経鞘腫であり,稀に縦隔内にMPNSTを認める症例も報告されている.症例.症例は60歳代,女性.近医の胸部X線で胸部異常陰影を指摘され,当院に紹介となった.腫瘍は右肺上葉と右腕頭静脈との間隙に存在し長径53 mmであり,PET-CTで同腫瘍にSUVmax 32.9のFDG集積を認めた.気管支鏡下生検で上皮性腫瘍の所見を認めずMPNSTや肺肉腫を疑う悪性所見を認め,手術加療の方針となった.開胸下腫瘍切除術を行い,右横隔神経への浸潤を認めていたため右横隔神経を合併切除した.永久病理標本にて紡錘形細胞が密に増殖し異型核分裂像を認め,免疫染色でS100弱陽性,SOX10陽性であり,病理診断は縦隔原発MPNSTであった.術後経過は良好であり,現在も術後1年無再発生存中である.結論.右中縦隔原発のMPNSTの1切除例を経験した.術前検査においてMPNSTである可能性が疑われる腫瘍が大血管に隣接している場合は,腫瘍の完全切除を行うべく人工血管置換を含む最大限の術前準備を行うべきである.

  • 平位 佳歩, 吉本 直樹, 青原 大介, 大島 友里, 櫻井 佑輔, 谷 恵利子, 南 謙一
    2022 年 62 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.近年では一次癌に対する放射線治療後の長期生存例が増加しており,放射線誘発癌が問題となる.症例.症例1;86歳男性.9年前に食道癌に対しcisplatin(CDDP)+5-fluorouracil(5-FU)および60 Gyによる化学放射線同時併用療法を施行された.症例2;76歳男性.2年前に食道癌に対しCDDP+5-FUおよび54 Gyによる化学放射線同時併用療法を施行された.症例3;73歳女性.8年半前に原発性肺扁平上皮癌に対しcarboplatin+paclitaxelおよび60 Gyによる化学放射線逐次併用療法を施行された.3例とも喫煙歴を有し,うち2例は放射線肺線維症を合併していた.全ての症例で照射野内に肺癌が発生し,放射線誘発肺癌と考えられた.結論.一次癌に対する放射線治療後は,肺への照射線量の多寡に関わらず放射線誘発肺癌を発症し得る.また複数の発癌リスクを有する症例では,さらに高リスクとなる可能性がある.

  • 児玉 秀治, 吉田 正道, 三木 寛登, 伊藤 稔之, 後藤 広樹, 寺島 俊和, 藤原 篤司, 林 恒賢, 掃部 俊貴
    2022 年 62 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬は肺癌薬物療法において重要な薬剤である.しかし,免疫関連有害事象を発症し重篤化することがあり注意を要する.症例.77歳男性.pT2aN0M0,Stage IBの肺多形癌術後再発.X年3月中旬よりIpilimumab,Nivolumab併用療法を開始した.肺癌の縮小効果は認められたが,肺野浸潤影,口唇ヘルペスの再燃,下痢,心筋炎,重症筋無力症など,多彩な免疫関連有害事象をきたした.特に心筋炎と重症筋無力症は重篤であり管理に難渋したが,専門科と連携した早期の集中治療によって救命することができた.結論.Ipilimumab,Nivolumab併用療法によって肺多形癌の縮小効果が得られたが,免疫関連有害事象により重篤な状態に陥った.重症筋無力症および心筋炎は,免疫関連有害事象としては比較的稀であるが,重篤化し,両者がしばしば合併するため注意が必要である.

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