肺癌
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62 巻, 5 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
委員会報告
  • 佐川 元保, 桜田 晃, 芦澤 和人, 前田 寿美子, 中山 富雄, 負門 克典, 玄馬 顕一, 小林 健, 鳥居 陽子, 竹中 大祐, 丸 ...
    2022 年 62 巻 5 号 p. 351-354
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    日本肺癌学会肺がん検診委員会は,2022年に「肺がん検診ガイドライン」の改訂を行った.本稿では改訂に至った経過とその概要について解説する.「現行検診」に対する「推奨」は2010年ガイドラインから変化はなかった.全国的な精度管理の徹底や,国全体の死亡率減少効果への寄与度や感度・特異度の測定などに関する評価が必要である.「重喫煙者に対する低線量CT検診」は,欧米において肺癌死亡率減少効果のエビデンスが得られたが,過剰診断,偽陽性,放射線被ばくなどの不利益は無視できない.安易な導入を行って混乱する事態を避けるためには,まずは適切な「実装研究」を行うことにより,日本の社会にどのように導入することが望ましいのかを検討することが重要である.一方,「非/軽喫煙者に対する低線量CT検診」は,現在のところ有効性のエビデンスは十分でないため,それを集積することが第一に重要である.

総説
  • 越智 宣昭, 山根 弘路, 瀧川 奈義夫
    2022 年 62 巻 5 号 p. 355-362
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    免疫チェックポイント阻害薬の登場により,進行期非小細胞肺癌においても長期生存が期待される時代を迎えている.多くの肺癌患者に用いられるようになり,既存の治療との併用でさらなる有効性が期待される一方で,免疫チェックポイント阻害薬の費用や毒性も大きな問題となっている.真に用いるべき対象とそうでない対象を事前に明確にし,漠然と用いることによる毒性リスクを軽減し,費用を削減するための効果予測因子の同定は喫緊の課題である.腫瘍におけるPD-L1発現やTumor mutational burdenといった免疫チェックポイント阻害薬の効果予測マーカーが注目され,一部は実臨床ですでに広く使用されているもののいずれも単独では十分な効果予測因子とは言えない.本稿では免疫チェックポイント阻害薬の効果予測因子の現状と今後の課題について概説する.

  • 西 達也, 冨樫 庸介
    2022 年 62 巻 5 号 p. 363-370
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    がん免疫療法の基盤となる腫瘍免疫研究の多くがマウスで行われてきたが,ヒトとは相違点も多く限界があるため,ヒト臨床検体の解析が腫瘍免疫の本態解明に重要と考えられている.近年,技術革新により網羅的遺伝子解析が可能になり,腫瘍組織を代表に糞便まで含め様々な検体が解析されている.これらは塊(バルク)で行われることが多いが,より精密な解析のためには免疫細胞を含む不均一な集団の1細胞解析が重要と思われ,そこから多くの新しい知見が明らかになっている.

原著
  • 福神 大樹, 長谷川 一男, 大西 幸次, 右田 孝雄, 栗田 英司, 瀬戸 貴司, 田中 謙太郎, 澤田 慎一郎, 鈴木 江郎, 濱崎 晋 ...
    2022 年 62 巻 5 号 p. 371-376
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.日本では中皮腫以上の発症が推測されている石綿肺がんの労災保険制度の認定が少ない.その要因として診療体制における石綿ばく露の聴取調査が確立していないことが一因であると考えた.方法.肺がん治療の診療で石綿ばく露に関連する聴取調査を行っている医師に対してウェブアンケート調査を行い,診療体制の現状と課題を明らかにした.結果.医師が知っている石綿に関する情報は主に直接ばく露であり,患者への情報提供も同様であり,間接ばく露の可能性がある患者は診断されづらい状況が明らかになった.結論.医師には間接ばく露である石綿健康被害に関する学習,病院内の相談支援部門等との連携体制の構築が求められる.

症例
  • 後藤 まどか, 市川 靖久, 坪内 秀樹, 川角 佑太, 福本 紘一, 内山 美佳, 森 正一
    2022 年 62 巻 5 号 p. 377-381
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.たこつぼ型心筋症は1991年に土手らにより提唱された左室心尖部の無収縮と心基部の過収縮を呈し,たこつぼ様形態をとる心疾患である.手術や化学療法に関連した報告は散見されるが,痙攣,特に悪性腫瘍の脳転移による痙攣と関連したたこつぼ型心筋症は非常に稀である.症例.72歳,男性.X年2月,左上葉多形癌(pT2aN0M0)に対し左肺上葉切除術+縦隔リンパ節郭清(ND2a-1)を施行した.X年9月,痙攣と呼吸困難を主訴に救急搬送された.頭部造影MRIで左頭頂葉に浮腫を伴う脳腫瘍を認めた.心臓超音波で左室はたこつぼ様となり左室駆出率低下を認めることから,肺癌脳転移およびたこつぼ型心筋症と診断した.抗痙攣薬・抗凝固薬を開始し,速やかに心機能は改善し第14病日に自宅退院した.脳転移に対しガンマナイフを施行したが,現病の進行によりX+1年10月に永眠した.結論.肺癌脳転移に伴う痙攣による身体的ストレスから,たこつぼ型心筋症を発症した稀な症例を経験した.たこつぼ型心筋症は虚血性心疾患との鑑別に苦慮する場合もあり,早期診断による治療が肝要と考えられた.

  • 曽我部 将哉, 明畠 良太, 齊藤 樹, 岡田 真也, 坪地 宏嘉, 中野 智之
    2022 年 62 巻 5 号 p. 382-388
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.原発巣が明らかでなく,肺門縦隔リンパ節のみに病巣を認める原発不明リンパ節癌を経験することが稀にある.症例.50歳,男性.X年に胃癌に対して幽門側胃切除術を施行.術前FDG-PETで大動脈下(LN#5)領域に11 mm大のFDG集積を伴うリンパ節を認めたが,生検は希望しなかった.X+1年にリンパ節は3 mmまで自然縮小,CEAは胃癌術前56.6 ng/mlから8.6 ng/mlまで低下した.しかしX+2年よりLN#5は緩徐に再増大,X+11年に24 mm大となり,CEAも1760.4 ng/mlまで上昇,新規に左肺S1+2に結節が出現したため手術の方針とした.胸腔鏡下にLN#5を摘出および左上大区域切除術を施行.病理診断は肺病変,LN#5は共に腺癌,免疫染色でTTF-1,napsin A陽性で肺原発を強く示唆する所見であった.11年後に出現した肺病変を原発巣とする肺癌および縦隔リンパ節転移と考え,pT1bN2M0 stage IIIAと診断した.結論.原発不明リンパ節癌は長期経過後に原発巣が出現する可能性があり,長期にわたる経過観察が重要であることを示唆する教訓的な症例であった.

  • 尾崎 有紀, 武藤 哲史, 鈴木 理, 鈴木 弘行
    2022 年 62 巻 5 号 p. 389-394
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.2017年に肺癌取扱い規約が改訂され,微少浸潤性腺癌という分類が加えられた.今回微少浸潤性腺癌にも関わらずリンパ節転移を来していた症例を経験したので報告する.症例.80歳女性,CTで右肺上葉の結節影を指摘され,肺癌の疑いで当科に紹介された.右肺上葉S3に気管支透亮像と胸膜陥入像を伴う2.3 cmの充実性結節を認め,FDG集積はSUVmax=4.5であった.リンパ節腫大や遠隔転移を疑う異常集積を認めなかった.確定診断には至らず肺癌疑いcT1cN0M0 stage IA3として手術を行った.胸腔鏡下右肺上葉切除術を施行し,術中迅速で肺腺癌の診断を得て,ND2a-1のリンパ節郭清を行った.永久病理診断でも肺腺癌であったが,腫瘍径1.8 cmで,浸潤径が5 mm未満だったためpT1miと判断された.#12uに転移陽性でpN1の診断となったが,規約第8版にはT1miN1M0に該当する病期がなく,第7版のT1aN1M0 stage IIAとして術後補助化学療法を行った.現在術後51ヶ月であるが,再発なく経過中である.結論.微少浸潤性腺癌では極めて稀とされているリンパ節転移を伴う1症例を経験した.

  • 鈴木 仁之, 庄村 心, 田邉 信, 井上 健太郎, 島本 亮
    2022 年 62 巻 5 号 p. 395-399
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.腸型肺腺癌はまれな組織型で,多くは充実性で,非充実性の陰影を呈することはさらにまれである.症例.69歳,男性.55歳時より間質性肺炎でCTフォローされていた.4年後のCTで右肺下葉に新たな網状影が出現し,経時的に拡大してきたため,63歳時に部分切除を施行したが悪性所見は認めなかった.その後切除端近傍にconsolidationを認めたため,69歳時に右肺下葉切除を施行した.組織学的には大腸癌類似の腺癌で,免疫組織化学的に大腸癌の肺転移も鑑別にあげられた.その後の精査で肺野以外に病変がないため,腸型肺腺癌と診断した.結論.拡大する陰影は腫瘍性疾患との鑑別が問題となる.まれではあるが,非充実性の陰影が拡大する腸型肺腺癌も存在することを念頭において,総合的に判断することが重要であると考えられた.

  • 寺嶋 勇人, 久金 翔, 渥美 健一郎, 寺師 直樹, 鈴木 彩奈, 永田 耕治, 清家 正博, 弦間 昭彦, 廣瀬 敬
    2022 年 62 巻 5 号 p. 400-405
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬によるpseudo-progressionは非小細胞肺癌患者の約5%にみられるが,免疫チェックポイント阻害薬単剤における報告がほとんどである.今回,ニボルマブ+イピリムマブ併用療法後に胸膜炎様のpseudo-progressionを認めた肺腺癌の1例を経験した.症例.70歳,男性.胸膜播種を伴う肺腺癌pT3N0M1a stage IVAに対し1次治療としてカルボプラチン+ペメトレキセド+ニボルマブ+イピリムマブを投与した.投与後から発熱,呼吸困難,CRPの上昇,患側胸水の増加を認めた.胸水ドレナージを行い,セルブロック標本でCD4陽性T細胞を主体とした豊富なリンパ球の滲出を認めた.その後症状が軽快し,化学療法継続下で胸水の再貯留を認めていないことから,免疫関連有害事象ではなく,pseudo-progressionと診断した.結論.本症例はニボルマブ+イピリムマブ併用療法後に胸膜炎様のpseudo-progressionを認めた肺癌における初めての報告である.免疫関連有害事象による胸膜炎との鑑別が重要である.

  • 上村 亮介, 松岡 英仁, 加島 志郎, 堂國 良太, 桐生 辰徳, 奥野 恵子, 小谷 義一
    2022 年 62 巻 5 号 p. 406-410
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.組織球肉腫は非常に稀な疾患であり,腫瘍随伴症候群に関する報告も少ない.今回,我々は白血球増多症を契機に発見された顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor:G-CSF)産生肺組織球肉腫の症例を経験したので報告する.症例.50歳女性.倦怠感を主訴に前医を受診し白血球増多症を指摘され,当院に紹介された.胸部CTで左上葉に28×22×43 mm大の腫瘤を認め,PET/CTで同部位に強いFDGの集積を認めた.G-CSFは183.2 pg/mlと高値であり,G-CSF産生肺腫瘍が疑われた.生検は困難と判断され,診断を兼ねて胸腔鏡下左上葉切除術+縦隔リンパ節郭清を行った.術後病理組織検査で免疫染色の結果により組織球肉腫と診断した.また一部の腫瘍細胞は抗G-CSF抗体陽性であり,最終診断はG-CSF産生肺組織球肉腫とした.術後補助化学療法は施行せず,術後1年無再発生存中である.結論.非常に稀なG-CSF産生肺組織球肉腫の症例を経験した.現在,術後1年無再発生存中であるが,今後も慎重な経過観察が必要である.

  • Yuko Asato, Satoshi Hinata, Kaoru Chiba, Yusuke Ohnari, Ken Okabayashi ...
    2022 年 62 巻 5 号 p. 411-416
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    Background. Pleural mesothelioma is difficult to diagnose at an early stage and has a poor prognosis. This tumor may occasionally metastasize to other organs in the terminal stage. However, intrapulmonary miliary metastases are rare. We herein report a case of epithelioid pleural mesothelioma that presented with miliary metastases during chest imaging and an autopsy. Case. The patient was a 92-year-old woman without a history of asbestos exposure. The initial sign of mesothelioma was left pleural effusion. The patient lived for one year after the definitive diagnosis without specific treatment other than pleurodesis. Two months prior to death, chest radiography and computed tomography showed intrapulmonary miliary metastases. An autopsy confirmed this pattern of metastasis. The reason for the occurrence of miliary metastases remains unclear. However, the invasive characteristics of the tumor were speculated based on the histological and immunohistochemical findings. For example, a homozygous deletion of p16, which is related to a poor prognosis, was noted. In addition, the mesothelioma possessed micropapillary components, which indicated its aggressive characteristic. Thus, we speculated that these invasive characteristics contributed to hematogenous metastasis and lymphangitic spread and ultimately resulted in miliary metastases. Conclusion. We presented a case of epithelioid pleural mesothelioma with a rare metastatic pattern. We speculate that the pathogenesis of intrapulmonary miliary metastasis was related to the aggressive behavior, characterized by p16 deletion or micropapillary components.

  • 伊藤 温志, 川口 瑛久, 篠田 真里, 金田 真吏, 川口 晃司, 島本 亮, 伊藤 稔之, 藤本 源, 湯淺 博登, 髙尾 仁二
    2022 年 62 巻 5 号 p. 417-423
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍はラブドイドな形質とSMARCA4遺伝子の欠損を特徴とする極めて予後不良の腫瘍である.症例.63歳男性.主訴,血痰.胸部CTで肺胞出血を伴う左下葉肺癌(cT2bN0M0:cStage IIA)が疑われ,診断と治療目的に胸腔鏡下左下葉切除術+リンパ節郭清(ND2a-1)を施行.病理検査で同一肺葉内転移を伴う胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍[pT3(pm1)N0M0:pStage IIB]と診断された.経過良好で術後8日目に退院となったが,退院2週間後の外来受診時に左胸水貯留を認めた.左胸腔ドレナージで血性胸水を認め,胸腹部CT検査では術前に指摘できなかった右第2肋骨の転移を疑う骨破壊像,左副腎転移を疑う結節の増大を認めた.診査胸腔鏡を施行したところ,左胸膜播種巣を認め術後再発と診断された.その後急速に進行する病勢に対して有効な治療介入を行えないまま,初回手術後49日目に呼吸不全により永眠された.結論.肺癌根治術後に極めて早期に再発した胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 加藤 雅人, 山本 聡, 小島 勝雄, 山田 恭平
    2022 年 62 巻 5 号 p. 424-428
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.気管支嚢胞の多くは縦隔に発生するが,稀に肺内に発生する.今回,肺内気管支嚢胞に発生した肺癌の1例を経験した.症例.58歳女性で喫煙歴あり.2021年4月頃から咳嗽と血痰が出現したため近医を受診.胸部X線では異常はなく,胸部CTで右下葉に6 cm大の多房性嚢胞を認めた.嚢胞壁には不整な壁肥厚があり,喀痰細胞診はclass IIIAであったが,FDG-PETでその肥厚部に高集積を認めたため,肺嚢胞壁に発生した肺癌が疑われた.2021年9月,胸腔鏡下嚢胞切除を行い,迅速病理で腺癌と診断され右下葉切除とND2a-2郭清術を施行した.病理組織学的には,嚢胞は内腔が多列線毛上皮に被覆された気管支嚢胞で,嚢胞壁肥厚部を中心に嚢胞壁に沿って伸展する腺癌を認め,肺内気管支嚢胞壁発生の浸潤性粘液腺癌(pT3N0M0)と診断された.現在術後9ヶ月再発なく経過観察中である.結論.肺内気管支嚢胞から発生した肺癌は,本邦では自験例を含め10例と稀である.気管支嚢胞に肺癌の合併が疑われたら,外科切除を考慮することが必要である.

  • 渡邉 菜摘, 杉野 圭史, 小野 紘貴, 安藤 真弘, 原口 秀司, 小林 美穂, 五十嵐 誠治, 坪井 永保
    2022 年 62 巻 5 号 p. 429-432
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.BRAF遺伝子変異は肺癌の稀なドライバー遺伝子変異である.症例.73歳.男性.X年4月より血痰が出現し,胸部X線で左下葉浸潤影が認められ細菌性肺炎として抗菌薬で加療されたが自覚症状,胸部CT所見ともに改善せず当院を受診.初診時に呼吸不全を合併しており,気管支鏡検査では左下葉支内腔に大量の出血を認めた.病理所見では腺癌と診断され,止血目的に左下葉切除術を施行したところ,呼吸不全は改善した.遺伝子検査の結果,BRAF V600E変異陽性であったため,dabrafenibとtrametinibを開始したところ残存腫瘍は著明に縮小した.結論.出血による呼吸不全を合併したBRAF V600E変異陽性肺腺癌に対する姑息的手術とdabrafenibとtrametinibの併用療法が奏効した症例を経験したので,報告する.

  • 池川 香代子, 神田 慎太郎, 岡田 光代, 花岡 孝臣, 蔵井 誠, 小泉 知展
    2022 年 62 巻 5 号 p. 433-437
    発行日: 2022/10/20
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象として,乾燥症(sicca syndrome)を認めることがあるが,発熱や耳下腺腫脹を伴う急性唾液腺炎症状は稀である.症例.69歳男性.進行非小細胞肺癌に対して1次治療としてペムブロリズマブ単剤療法を開始した.治療開始42日目に発熱と両耳下腺腫脹,口内乾燥が出現し,血清アミラーゼは高値を示した.ペムブロリズマブによる免疫関連有害事象としての急性唾液腺炎と考え,副腎皮質ステロイド内服治療を行ったところ,症状は改善した.結論.乾燥症は免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象としてしばしば認めることがあるが,急性唾液腺炎を呈し副腎皮質ステロイドによる治療を要することもある.

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