日本ハンセン病学会雑誌
Online ISSN : 1884-314X
Print ISSN : 1342-3681
ISSN-L : 1342-3681
83 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 松木 孝之, 岡野 美子, 青木 美憲, 石田 裕, 畑野 研太郎, 熊野 公子
    2014 年 83 巻 3 号 p. 111-116
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/08/17
    ジャーナル フリー

     国立療養所邑久光明園で1978年以降のサリドマイド投与例のうち、2011年5月の時点で生存する20例について、2型らい反応の臨床像と菌検査結果とサリドマイドの投与歴の関係をretrospectiveに調査した。サリドマイドの投与量は総投与量、1日平均投与量、1日最高投与量、1日最低投与量、投与リズムを検討した。サリドマイドの効果は19例にみられ、明確な副作用の記載はなかった。サリドマイドの用量では、1日平均投与量は19mgである。1日最高投与量は、100mg以上が3例 (15%) であり、50mgが3例 (15%)、他の14例 (70%) では40mg以下で、治療効果が得られている。ほとんどの症例で漸減法が行われていたが、丁寧に試行錯誤しながら治療に導いたことが読み取れる。わが国における2型らい反応に対するサリドマイドの投与量の検討は、あまり行われていない。今回の検討の結果からみると、諸外国で用いられている投与量よりも少量で、現在の日本のガイドラインで推奨されている1日50〜100mgよりも少量でも2型らい反応をコントロールできる可能性が示唆される。

  • 河口 朝子, 渡部 京子, 吉村 タチ子, 伊達 加代子, 山下 清美
    2014 年 83 巻 3 号 p. 117-124
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/08/17
    ジャーナル フリー

     本研究は、国立ハンセン療養所13施設における患者 (入所者) の認知症の状態と医療および看護体制や施設設備の状況を把握することを目的とした。対象者を2008年12月全国ハンセン病療養所13施設の病棟・不自由者棟の患者 (入所者) 1,733名とし、その認知機能の状態 (N式老年者用精神状態評価尺度 : NMスケール)、認知症の行動・心理症状 (behavioral and psychological symptoms of dementia : BPSD) の発生頻度、医療看護体制と施設設備、看護教育状況などを看護師に記載を求め調査した。その結果、認知症と診断されているものは、288名 (16.6%) であった。しかし全対象者のNMスケールは軽度認知症から重度認知症が47.5%を占め、境界域を含めると63.5%に認知機能障害がみられた。認知症専門医以外の医師による診療は30.8% (4施設) であり、看護師で認知症専門の有資格者はいなかった。多くの後期高齢者を有するハンセン療養所において、認知症専門医の配置や専門医療体制の整備、看護師の専門的な人材育成の必要性が示唆された。

ミニレビュー
  • 横田 洋三
    2014 年 83 巻 3 号 p. 125-129
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/08/17
    ジャーナル フリー

      Leprosy, or Hansen’s disease, has long been regarded as an incurable and dreadful contagious disease. The patients have been forcefully hospitalized and deprived of many basic human rights. Their family members have often been discriminated against due to stigma associated with this disease. Soon after the Second World War, a specific remedy called “multi-drug therapy” (MDT) was discovered and leprosy became a relatively easily curable disease. Despite this medical development, it took time to change the policy and legislation of forceful hospitalization of leprosy patients. The stigma surrounding leprosy and consequent discrimination have continued.
      In Japan, it was only in 1996 that the legislation requiring forceful hospitalization of leprosy patients was repealed. The Government decided to provide remedies to the former patients who had suffered from this policy.
      At the United Nations, the General Assembly adopted a resolution to eradicate discrimination against persons affected by leprosy and their family members.
      It is hoped that discrimination associated with Hansen’s disease will soon be overcome by the efforts of all concerned, particularly doctors and nurses who are specialists of this disease.

  • 鈴木 定彦, 山口 智之, 金 玄, 横山 和正, 中島 千絵
    2014 年 83 巻 3 号 p. 131-137
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/08/17
    ジャーナル フリー

     ハンセン病の起因病原体であるらい菌は1873年に発見されて以来、数多くの研究が為されて来たが、人工培地上での培養の困難さ故に数々の困難をも経験して来た。ハンセン病の研究は、その困難を解消するために同じMycobacterium属菌によって引き起こされる結核の研究により得られた知識を取り入れながら進歩してきたものといえる。らい菌の薬剤耐性獲得機序の分子生物学的研究を例にとると、リファンピシン耐性ならびにキノロン耐性には、それぞれRNA合成酵素βサブユニットをコードする遺伝子ならびにDNAジャイレースのAサブユニットをコードする遺伝子上の変異が重要である事が明らかとなっているが、これらは、結核研究で得られた情報を基にしてハンセン病研究が進められた結果である。今後もハンセン病研究は、結核研究の最新のトピックから多くの事を学び重要な情報を得てゆく必要があるものと考えられる。

その他
feedback
Top