DDSは強い抗浸出作用を持つがT細胞機能を強く抑制する。化療薬と併用可能でT細胞機能を賦活する上に抗浸出作用を示す物質があれば治療に益することがあるのではないかと考えた。そこでT細胞機能賦活の方は,原料入手可能,誘導体合成が容易かつ誘導体の安定性が望めるデキストラン(DX)を選び,抗浸出作用の方は細静脈内層のイオン構造の脱分極に機作を求め,DXに酸性,塩基性両置換基を導入することで両性DX(ADX)数種を合成,それらの若干の生物活性を調べた。
1. BHP活性化DXのBrをタウリンージエチルアミノエチルアミン(DEAEAM)またはDEAEAMのみで置換し各ADX1種(BTP-T)と塩基性DX 1種(BHP-D)を得た。
2. 分子量70000(DXT-70)または250000のDXにジエチルアミノエチルクロリド(DEAECI)に続きフォルムアミド中発煙硫酸-ピリジンを反応し2種ADX(ADX-1,2)を合成した。同様に,SO3H基含有率がADX-1,2よりはるかに高い4種ADX(ADX-3~6)をDX T-40から合成した。
3. 胸腺切除免疫抑制モルモット(免疫抑制モル)のT細胞機能回復に及ぼすこれらのADX促進効果を調べ,BHP-T(30mg/kg筋注),ADX-2(15,30mg/kg筋注か30mg/kg経口投与),ADX-3(30mg/kg筋注)で促進効果を認めた。カワラタケから純粋化したβ-1-3グルカン,ATSOはこれから一連の実験を通じ促進作用を現わした。
4. BHP-T, BHP-D 100mg/kg, ADX-2,3 30mg/kgの経口投与はCunninghamプラック形成テストで調べた際どれもプラック形成細胞を増したが,ADX-2の過剰高投与量(30mg/kg筋注,100mg/kg経口投与)は逆にプラック形成細胞を減じ,その原因はADX-2の溶血ないし線維素溶解作用にあると思えた。BHP-T 100mg/kgを経口投与するとプラック形成細胞数を著明に増すのと対比的にその100mg/kgの腹腔内投与による増加は認めなかった。
5. カラゲニン起炎足底部を目がけてのADX筋肉内投与は多少とも浮腫を抑制し,その抑制効果はADX-3-6>ADX-2であった。BHP-T 100mg/kgは経口投与でも強く浮腫を抑制したが,DX-70の経口投与は逆に浮腫を強め,塩基性DXであるBHP-Dは浮腫抑制効果は無かった。一方非両性DX(弱酸性β-1-3グルカン)であるATSOが浮腫を抑制した。
6. ADX-2, BHP-T, ATSOには,乾燥量1.5mgの
Mycob. butyricumで誘起のアジュバント関節炎抑制効果を認めず,逆にATSOは関節炎の若干の時期に有意に促進していた。関節炎誘起の強さは結核菌青山B株
Mycob. butyricumであった。大量の
Mycob.butyricumで強く誘起した当関節炎では,免疫調節薬CCAの抑制効果は認めなかった。
7. ADX-3の毒性はADX-2より更に強いことを認めた。
8. これら結果に基づき,らい治療における多糖体による免疫賦活療法の役割を討議した。
抄録全体を表示