ヒトと動物の関係学会誌
Online ISSN : 2759-4483
Print ISSN : 1341-8874
最新号
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研究論文
  • 谷野 克海, 上河原 献二
    2024 年 2024 巻 68 号 p. 41-50
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー
     自然環境保全が図られた土地においてまたはそれに隣接して、野鳥観察用建物を有し、職員が常駐する施設(野鳥観察施設)が、1980 年代までに日本に定着した。その主な要因として、1) 英国等の施設についての1960 年代の紹介、2) 60 年代から70 年代の干潟埋め立て事業に対抗した自然保護運動、3) 1976 年に始まる日本野鳥の会による「サンクチュアリ運動」が挙げられる。さらに1990 年代半ばからは、旧環境庁による「水鳥・湿地センター」の整備が始まった。野鳥観察施設の増加は続き、2022 年末時点で全国に51 存在する。設置者は、市町村(22施設)、都道府県(13 施設)、環境省(12 施設)、民間団体(4 施設)であった。管理者は、民間(33 施設)、市町村(13 施設)、都道府県(2 施設)、共同管理(3 施設)である。現在の状況は、1960 年代から紹介された英国における民間団体主体のものとは異なるが、日本の社会状況に適応して展開した結果と考えられる。
  • 赤川 学, 山浦 晴男, 祐成 保志, 井口 高志, 税所 真也
    2024 年 2024 巻 68 号 p. 51-59
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー
     2023 年、猫の飼育頭数は過去最大となり、猫を看取る経験が今後増加することが予測される。人間や動物の看取りに関する既存研究では、看取り当事者を支援する専門家の役割が強調されており、またペットの喪失体験におけるリアリティ分離やペットロスからの回復過程も注目されている。これを受けて猫社会学の一部である本研究では、猫を看取る体験の全体像を構造的に把握するために、2021 年7 月から10 月にかけて猫に関心を有する48 名の調査対象者に看取り体験に関するインタビューを行い、これを質的統合法(KJ 法)に基づいて分析した。インタビューデータを分析した結果、猫を看取る経験は、【飼う躊躇】、【衝動飼い】、【猫の家族化】、【モノ化する悲しみ】、【自然に還る死】、【消えない悲嘆】、【悔いなき看取りと死の受容】という7 種類のシンボルマークに整理できた。このうち【飼う躊躇】や【猫の家族化】は、人間や他のペットを看取る際にも共通する要素であり、【自然に還る死】は猫の看取りに固有の経験、【モノ化する悲しみ】は猫を含めたペットの看取りに固有の経験ではないかと考察した。また【消えない悲嘆】が【悔いなき看取りと死の受容】に転化する条件として、「動物医療グリーフケア」における「新たに迎え入れる別の個性を尊重する」という原則が重要であると考察した。
実践報告
  • 林原 千夏, 松本 美穂
    2024 年 2024 巻 68 号 p. 60-65
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/31
    ジャーナル フリー
    これまで唾液アミラーゼを利用した健常者での乗馬によるストレスについての報告はあったが、障害児に対する報告は少なかった。今回、障害児・者において馬介在活動における楽しさとストレスの関係を調査した。今回のような中等度から重度の障害を持つ者を対象とした研究はほとんどない。対象は身体障害児・者3 名、知的情緒障害児・者6 名であった。「馬に触れた時」「乗馬した時」「エサやりをしたとき」にアミラーゼ値を測るとともに、Visual Analog Scaleで楽しさを評価した。身体障害児・者の「乗馬」と知的情緒障害児・者の「馬に触れる」活動は、楽しい活動であり、交感神経の指標が上昇する活動であることが分かった。これらは交感神経が上昇して、楽しさも上昇していることから、楽しくて興奮している状態であると推測される。
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