高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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41 巻, 4 号
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原著
  • 沖田 浩一, 福永 真哉, 中嶋 理帆, 木下 雅史, 中田 光俊, 八幡 徹太郎
    2021 年 41 巻 4 号 p. 368-376
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

      左下頭頂小葉腫瘍の摘出術後に相貌変形視をきたした左利きの症例を経験した。症例は 10 歳代, 女児, 左利き。登校中に転倒・転落し, 頭部 MRI にて左頭頂葉腫瘍を指摘された。術前は意識清明で, 視力や視野, 眼球運動に異常を認めず, 視覚認知機能や言語機能は良好であった。覚醒下脳腫瘍摘出術が施行され, 言語機能は温存されたが相貌変形視が出現した。具体的には, 顔写真を注視した際に眉間を中心として出現する回転性の歪みと両側下顎周囲が浮き沈みするという大きさの変容が特徴であった。顔認知処理過程の大脳半球優位性は, 利き手が右利きの場合には右優位とされるが, 左利きの場合の大脳半球優位性は明らかではない。本例は左利きであり, 左下頭頂小葉病変の術後に症状が出現したことから, 側性化異常を生じていた可能性が考えられた。本例における相貌変形視の発現機序として, 顔認知処理に関連する脳領域間の伝達不全または機能不均衡による可能性が推察された。

  • 若松 千裕, 石合 純夫
    2021 年 41 巻 4 号 p. 377-386
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

      線画を使用した音韻-文字変換の再学習訓練後に, 聴覚提示による仮名書き取りとローマ字入力の仮名タイピングが改善した慢性期失語例を報告した。40 歳代, 男性, 左側頭頭頂葉の脳出血。呼称可能な線画を使用して, 音韻-平仮名変換の再学習訓練を本例に実施した。訓練前後に, 1 モーラの聴覚と視覚提示それぞれで, 平仮名とローマ字での書字, タイピングを実施した。訓練後に聴覚提示から平仮名とローマ字で書き取り, タイピングをさせると, 成績は訓練前より向上した。一方, 平仮名の視覚提示からローマ字への書き換えとタイピングをさせると, 成績は訓練前から良好であった。線画の視覚・意味・音韻情報が音韻と文字との対応学習を促し, 聴覚提示の平仮名書き取りが改善した可能性がある。平仮名→ローマ字の直接変換が訓練前から良好であり, 1 モーラ聴覚提示から語頭音が一致する訓練語を想起して, その語頭の平仮名を視覚性に想起可能となり, タイピングとローマ字での書き取りも改善したと考えられる。

  • 大門 正太郎, 能登 栞, 板口 典弘
    2021 年 41 巻 4 号 p. 387-396
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

      前頭葉機能に低下を示した脳血管疾患 2 症例に対して, 継時的に語想起課題を実施し (週 5 回を 4 週あるいは 5 週) , 産出単語の時間情報と頻度情報を併せた検討を行った。両症例とも, 総反応数は増加していったものの, 評価期間後期で横ばいとなった。各回の単語出現頻度の平均値は大きく変化しなかったが, コンスタントに比較的低頻度な新規単語が出現した。また, 長い時間スケール (評価期間) および短い時間 (1 分間の課題内) スケールそれぞれの時間スケールにおいて, 高頻度語から低頻度語に移行するという単語頻度効果が確認された。さらに, 症例 1 名においては, 課題内の頻度効果が, 評価期間を通じて強まっていった。本研究で観察された 2 つの時間スケールにおける頻度効果およびその変化を, 言語流暢性課題内における言語性要因と実行機能要因のダイナミズム, および実行機能の回復という観点から検討した。

  • 大内田 博文, 藤田 郁代, 福井 恵子
    2021 年 41 巻 4 号 p. 397-405
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

      本研究の目的は, アルツハイマー型認知症 (AD) における語想起過程の特性を, 語の意味的関連性によるクラスター形成の観点から検討し, 意味処理障害との関連性を明らかにすることである。対象は軽度 AD 群 15 名, 中等度 AD 群 19 名で, 対照群は健常高齢者 15 名であった。課題は意味カテゴリー流暢性課題を行い, 意味的関連性によるクラスター形成を分析した。結果, 軽度 AD 群はクラスター数のみ対照群より有意に低下したが, 中等度 AD 群はクラスター数とクラスターサイズが軽度 AD 群より有意に低下した。また中等度 AD 群でのみカテゴリー間で想起語数の差を認め, 語の意味処理能力を調べる意味類似性判断課題が低下した。
      以上から, 軽度 AD は意味的クラスターによって語を想起する機能が低下するが, 中等度 AD はそれに加えて意味概念を共有する近接領域の語の想起も低下すると考えられた。AD の語想起障害の基底に意味処理障害が関与する可能性があると考えられた。

  • 東川 麻里, 元木 雄一朗, 赤池 絢, 白波瀬 元道, 波多野 和夫
    2021 年 41 巻 4 号 p. 406-412
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

      感情の変化などに伴って一過性・可逆性にジャルゴンの形式に変化を示した 2 症例を報告した。症例 1 は 80 歳代のアルツハイマー病の女性である。失語は重度であり, 精神的に情動不安定で易怒性が高かった。平穏時の発話は語新作を含むジャルゴンであったが, 興奮時には語新作が増加して助詞が脱落する傾向があり, 未分化ジャルゴンに近い発話に変化した。症例 2 は 80 歳代の女性で発症前より健忘症状があった。左視床出血が発症し, 全般的認知機能低下を伴う重度失語を呈した。発話は基本的に音韻の誤りを含まない意味性ジャルゴンであったが, 会話中, 話が興に乗って高揚した状態になると語新作が出現するようになり, やがて疲労感の表出とともに高揚状態がおさまると発話量が減少し, 語新作が消失する, という変化を示した。これらの 2 症例にみられた情動の変化に伴ったジャルゴンの形式変化について検討した。

  • 福原 みなみ, 橋本 幸成, 白土 大成, 高野 文音
    2021 年 41 巻 4 号 p. 413-420
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

      後方病変型の他人の手徴候を呈した 1 症例に対して実施した多角的な評価に基づき, 他人の手徴候の出現に関与した要因について検討した。症例は右前頭葉, 右中心後回を含む右頭頂葉, 右側頭葉に脳梗塞を呈した 60 歳代, 右利きの女性である。左半身の表在・深部感覚障害および運動失調, 運動麻痺に加え, 意図にそぐわない左手の行動がみられ,「他の人の手のように感じる」や「左手が勝手に動く」などの訴えを認めた。本症例に対し運動麻痺, 感覚障害, 運動失調の経過を観察した。その結果, 本症例では運動麻痺の改善と「他人の手のように感じる」という訴えの消失が同時期に生じた。本症例のように他人の手徴候と同上肢に運動麻痺を合併する症例では, 随意的な運動が困難であるため, 自分の手に対する自己所有感が低下し, 他人の手のように感じやすくなる可能性がある。

短報
  • 今橋 久美子, 立石 博章, 小西川 梨紗, 宮川 和彦, コワリック 優華, 森下 英志, 粉川 貴司, 平山 信夫, 深津 玲子
    2021 年 41 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

      東京都および滋賀県内の指定特定相談支援および指定障害児相談支援事業所を対象に, 高次脳機能障害者・児への支援状況について質問紙調査を実施した。その結果, (1) 相談支援全利用者のうち高次脳機能障害者・児は 0 ~5 % 程度であり, (2) 未診断例が 4 分の 1 程度みられ, (3) 高次脳機能障害に関する相談が全くない事業所が半数を占め, 一部の事業所に相談が集中していることがわかった。また, 障害福祉サービス等を利用したいという希望はあったが「本人や家族の障害認識」「ニーズとサービスの不一致」「事業所職員, 他利用者との関係性」「対応できるサービス事業所の不足」等の理由で実際には利用に至らなかった例も一定数認められた。それらを補うための配慮や工夫として「意思疎通に関する配慮」「医療機関等専門機関の活用」「関係機関との情報共有」等が挙げられた。今後, 支援実績のある機関が, 地域の事業所と共に解決事例を積み上げて, 相談支援専門員のスキルを高めていく組織的な仕組みの構築と拡充が必要と考える。

  • 小谷 優平, 種村 純
    2021 年 41 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル フリー

      認知機能良好で失語症者向け通所サービス (以下, 失語症デイ) を初めて利用した単一失語症例を対象として失語症デイの短期的有効性を検討することを目的とした。研究デザインは単一症例実験的研究, ベースライン期, 介入期, 介入除去期の A-B-Aʼ デザインとした。アウトカム指標は Communicative Confidence Rating Scale for Aphasia と Life Stage Aphasia QOL Scale-11, 言語機能, 実用的コミュニケーション能力, 社会参加の指標であった。検討の結果, ベースライン期に比べて介入期に心理社会的側面の有意な成績の改善, 実用的コミュニケーション能力の明確な改善が示された。しかしながら, 全体的に介入期に比べて介入除去期に成績低下が認められた。追研究の余地があるが, 失語症デイの心理社会的側面, 実用的コミュニケーション能力への有効性について予備資料を得ることができた。

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