外傷性脳損傷患者 44 例において, WMS-R の論理的記憶ならびに言語性対連合と他の記憶機能を含む認知機能側面との関連について検討した。相関分析では, 論理的記憶と言語性対連合のいずれも記憶機能を含む様々な認知機能側面との関連がみられ, 各々の特徴を見出すことは困難であった。 WMS-R と WAIS-Ⅲの成績を用いた重回帰分析では, 「論理的記憶 Ⅰ」は「絵画完成」と, 「論理的記憶 Ⅱ」は「視覚性再生 Ⅱ」, 「単語」と, 「言語性対連合 Ⅰ」は「視覚性対連合 Ⅰ」, 「積木模様」と, 「言語性対連合 Ⅱ」は「視覚性対連合 Ⅱ」, 「語音整列」, 「積木模様」との間に因果関係があり, 説明される変数が異なった。また, 「論理的記憶Ⅰ」と「言語性対連合Ⅰ」の成績に, 二重乖離を示す患者もいた。論理的記憶と言語性対連合とは認知的基盤が部分的に異なり, 特に論理的記憶は, 言語性対連合や記憶以外の認知機能側面とは独立して低下しうる。