人間生活文化研究
Online ISSN : 2187-1930
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2016 巻 , 26 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
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原著論文
  • 伊藤 みちる
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 63-97
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    本稿は,カリブ海における地域統合体「カリコム」の更なる地域経済政治統合の動きである「カリコム単一市場経済(CSME)」について,その完成を妨げている様々な要因の理論的背景を先駆的に探求したものである.カリコム加盟国15ヶ国における天然資源や人的資源の不足,また弱小且つ脆弱な経済がもたらす様々な問題を解決し,統合を達成しようとする政治意思や強いリーダーシ ップが,なぜ域内において欠如しているのかを探り,理解を推し進めるものである.ガイアナ,トリニダード・トバゴ,ジャマイカ,バルバドス等のカリブ海諸国や,ニューヨークやマイアミにおいて,44人のカリブ諸国政府高官やビジネス関係者等カリブ海地域出身のカリコム関係者に対し,対面及びビデオ・スカイプによるインタビューを行い,談話分析を行った.調査結果によると,ナショナリズムに影響を受けた人的資源不足に悩むCSME参加国が,CSMEにおける主権争いや利害衝突を引き起こし,結果としてカリコムを形骸化させ政治意思を実現不可能にしていることが明らかになった.しかしながら,グローバル化が進む世界の中,カリコム諸国が生き残るためにCSME達成が最重要であることはCSME参加国間で強い合意に達している.そのため今後必要となるのは, CSME達成に向けた各国に対する技術支援を迅速に行うため,カリコムとCSMEのガバナンスを根底から改善することである.

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  • Sanae Tokizane
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 142-156
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    Even though we have already utilized and got used to the electronic mail, we are not yet fully recognized its meaning. Literary interest in the correspondence has also turned to Email, and produced so-called “e-epistolary” novels. Epistolarity, or the theory of epistolary novels deliberated by Janet Gurkin Altman, is now discussed in the broader milieu of the letter including the media and the post system, in which the concept of letter could be emulated with literature itself. In this context, this paper explores epistolarity of Email, analyzing seven Email novels. Even though these works are eager to seize the idiosyncrasy of the new medium, they are not really successful in realizing their own characteristics. But every work struggles with the intrinsic problems of digital writing and mail by seeing beyond virtual images, and sets up Epistolarity of Email as an intriguingly cutting-edge issue of the time. Not only does each work involve the questions of media and communication, but it also foregrounds the difficulties of the digital culture. Esoteric and enigmatic features of the Email system remind us of the radical postal ghost, the media noise, or the intrinsic problems of communication and knowing. It is in fact those ghosts who haunt the Email epistolary novels. First, after a brief history of Email, the literature-oriented criticism of Email is surveyed. The most significant critic is Jacques Derrida, who has introduced the philosophical concept of the post into the theory of the letter. Derrida does not directly discuss Email, but already sees through to the essential question of archiving with regard to Internet and digital communication. Also the meaning of a significant figure of the media “ghost” is examined. Then the paper analyzes seven Email novels: Exegesis (1997), The Metaphysical Touch (1998), e (2000), Love Virtually (2006), Who Moved My Black Berry (2006), Eleven (2006), and an illustrated storybook The Venetian's Wife (1996), and concludes that they are more or less haunted by epistolary ghosts that epitomize the monstrocity of digital media.

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  • 正村 俊之
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 173-189
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    1980 年代以降,行政と企業のいずれの領域においてもガバナンス改革が進んだ.行政領域では,80 年代に「新公共管理」が導入され,90 年代に「新公共ガバナンス」が成立した.新公共管理から新公共ガバナンスへの移行は,古い形態が新しい形態に単純に置き換わる変化ではなかった.そこには,新公共管理からの「離反」「継承」「発展」という三つの位相が含まれていた.一方,企業領域でも,企業環境の複雑化と流動化,そして企業不祥事の続発に対処するために,ガバナンス改革が進んだ.内部統制の概念が拡大され,内部統制を基軸にしたガバナンス構造が確立された.今日のパブリック・ガバナンスとコーポレート・ガバナンスを比較してみると,三つの共通点がある.第 1 に,どちらのガバナンスも,内部コントロールと外部コントロールを組み込み,自律的主体を強制的に生成するような構造を形成していること.第2に,行政組織も企業組織も第一次機能だけでなく,第二次機能(法的・道徳的・社会的機能)を果たすことが強く求められていること.そして第3に,リスク管理としての共通の情報処理様式を確立しようとしていること.このようなガバナンス構造が行政や経済の領域にととどまらず,他の社会領域にも広がっており,現代的ガバナンスとして確立されつつある.現代的ガバナンスの成立には,情報の「収集・蓄積」「変換」「評価」「共有」「設計」という5つの情報機能が含まれており,社会情報学はこれらの情報機能とその社会的仕組みを解明しなければならない.

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  • 酒本 光子, 池上 幸江
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 263-270
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    【目的および方法】 PCBやダイオキシンなど毒性の強い有機塩素系環境汚染物質が母乳を介して乳児に移行し,子どもの健康状態に影響を及ぼすことが報告されてきた.前報において,著者らはモデル化合物として人母乳中からも検出されているヘキサクロロベンゼン(HCB)を,母親ラットに投与し,母親体内での蓄積と乳児への移行に対する飼料中の脂質レベルの影響を検討した.この実験ではラットの飼料は自由摂取とした.その結果,高脂肪食群では母乳中のHCB量が低いが,乳児の体内蓄積量には差異がみられなかった.高脂肪食群では飼料摂取量が低く,その結果HCB摂取量も低くなったために,母親と乳児ラットにおけるHCB蓄積量について高脂肪食の影響と断定することができなかった.そこで,本研究ではコントロール食,低脂肪食,高脂肪食の各飼料の脂質レベルは15.8%,5%,50%として,エネルギー摂取量,脂質と炭水化物以外の栄養素の摂取量,HCB摂取量はpaired feedingによって同量とした.その他の実験条件は前報と同様である. 【結果】 妊娠期・授乳期の母親ラットの体重,脂肪組織,肝臓と腎臓重量には飼料中の脂質レベルの有意な影響はなかった.乳児では,生後間もなくは高脂肪食群,低脂肪食群で体重が有意に低かったが,生後15日目では高脂肪食群で低脂肪食群に対して有意に高くなり,肝臓や脂肪組織の重量もコントロール食群に比べて有意に重くなった.妊娠期ラットのHCB蓄積量は高脂肪食群で肝臓において他の2群に比べて有意に高く,脂肪組織で高い傾向であった.授乳期ラットでは子宮周辺脂肪ではHCB蓄積量は低脂肪食群,高脂肪食群では有意に高くなったが,肝臓では高脂肪食群は有意に低くなった.他方,乳児では生後10日目,15日目では後腹壁脂肪や肝臓のHCB蓄積量には3群間で差がなかったが,胃内容物中のHCB量は高脂肪食群では有意に低かった. 【考察】 以上の結果は多くの点で飼料を自由摂取とした前報の結果に類似していたが,自由摂取の場合には授乳期ラットの体重や脂肪組織重量にはエネルギー摂取の増加が影響しているものと思われた.エネルギー摂取に差異があっても,高脂肪食は母親ラットのHCBの体内蓄積を高め,母乳への移行は抑制することが分かった.しかし,乳児においては,高脂肪食の母親からの母乳を介するHCBの移行が抑制されるものの,脂肪組織が大きくなり,体内に長くとどまる可能性も示唆された.なお,低脂肪食ではコントロール食との違いは顕著ではなかった.

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  • 宮崎 絵理, サウミヤ ニルミニ セラビラツヌ, 飯島 聰, 藤野 毅
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 487-498
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー

    わが国とスリランカ西部州の都市近郊の学校に通う子どもたちに自然環境に対する意識や自然とのふれあいの有無などに関するアンケート調査を行い,子どもたちの環境に対する考え方や環境保全活動への参加意欲について考察した.子どもたちの環境に対する意識の傾向は二国間で異なり,構造方程式モデリングによる共分散構造分析から環境保全活動への参加意欲に影響している項目が異なっていた.わが国で調査した子どもは生物の保護ないし環境保全活動参加意欲に対して環境中心主義,人間中心主義,環境への関心という意識の3項目が直接影響している.環境中心主義という意識に対して,遊びなどの経験が強く影響しているということがわかった.従って,自然と触れ合い遊べる場所を子どもの身近な環境から途絶えさせない事が重要である.スリランカで調査した子どもの生物の保護ないし環境保全活動参加意欲には,環境中心主義と環境への関心が同程度,直接影響することがわかった.しかし,共分散構造分析結果からこれらの意識には遊びの経験や学習経験の差異は強く影響していなかった.このような両国の違いはそれぞれの国における環境問題に対する社会状況の違いを反映したものと考えられる.

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  • 中川 麻子, 森田 舞, 嶺野 あゆみ, 浅田 晴之, 前田 明洋, 大澤 清二
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 535-541
    公開日: 2016/11/26
    ジャーナル フリー

    女性の選好からみたオフィス環境およびアメニティ空間における家具に関して,「かわいい」の語をキーワードとし調査研究を行った.326脚の椅子のサンプル写真から,印象・形態・所有意識に関する37項目を設定し女子大学生による評価を行い,結果を統計的手法によって分析した.その結果,評価項目「かわいい」と「座りやすそう」の双方の評価が高い椅子は見ることはできなかった.またサンプル写真の評価を集計し,クラスター分析したところ,6つのクラスターを構成することが明らかとなった.「くつろぎ感」と「ボリューム感」の2軸を用いて,椅子の位置付けをポジショニングマップに示すことができた.

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  • 山名 章二
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 551-571
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー

    Eugene O’Neillが異例の長時間をかけ苦吟の末に完成した戯曲Days Without End (1934)は説得力を持つものにはならなかった. 本論は草稿類の検討により創作の推移を跡づけ, 戯曲の趣意を探る. その結果, 特に手子摺った結末が明らかにするのは, 中心人物の戯曲の虚構空間での課題が執筆した自伝的小説のモデルとした自らの不倫に行き着いた人生と, その小説に書き込んだ当の不倫の被害者である妻の死を望む底意との都合の良い妥協, もとどおり赦されかつ愛されて生き続ける日々の構築であることがわかる. そして, 伝記的には, それはそのままO’Neillの劇作家としての創作と実人生の妥協の模索, あるいはそのための迷走の実態でもある. 劇中で中心人物が書く小説の結末は, O’Neillが二人目の妻のAgnes Boultonを裏切り実現させた三人目の妻Carlotta Montereyとの日々を蝕む罪悪感の底にうごめくもの, すなわちAgnesの存在を抹消する願望が結晶したものである. さらに, 込み入ったことに, O’Neillの最深奥の真実でもあるこの罪悪感は, この戯曲の執筆中も赤裸な弾劾をやめない. その葛藤に取り組み書き換えるよう執拗に迫る創作衝動は, O’Neill好みの表現ならば“Something behind life”すなわち生の衝動そのものだ. この込み入った難題の打開策, 一個人としての究極の目的は, 弾劾を突きつける自らの内実を塗りつぶし, 創作による自己正当化の偽装以外になかったことが浮かび上がる. 同じくO’Neillの言葉ならば, 自らを“a whited sepulcher”「白く塗りたる墓」とすることである. かくて, もとより自伝色の濃い戯曲Days Without Endは, O’Neill深奥のカトリックの教えへの傾斜を踏まえた宗教色が強いものの, 回心, 自我からの解放あるいは人間理解の新しい段階を表現するなどとする従来の見方とは異なり,「書く人物」が書くことにより自らに関わる現実を操作しようとする企ての形象であり, The Iceman Comethで改めて取り組み, さらに自ら自伝と呼ぶLong Day’s Journey into Nightで続ける探求の先駆けとして捉えることができる.

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  • 本田 周二
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 572-582
    公開日: 2016/11/30
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    本研究は,親密さの程度の低い友人に焦点を当て,自己決定性の低い動機づけが友人とのコミュニケーション(対面および携帯でのコミュニケーション,対人葛藤時の対処方略),そして,友人との関係満足感,当人の精神的健康にどのような影響を与えているのかについて検討を行った.大学生247名(男性130名,女性115名,不明2名)を対象に質問紙調査を行った.相関分析および重回帰分析の結果,「取り入れ」と情緒的コミュニケーションとの間に正の関連が見られた.そして,「取り入れ」が回避スタイル,自己譲歩スタイルを促進すること,そして,友人関係満足感を低下させ,劣等感を促進させることが明らかとなった.一方,自己決定性の高い動機づけとコミュニケーションとの関連はほとんど見られなかった.現代青年の友人関係の特徴を捉える上で,自己決定性の低い動機づけや親密さの程度の低い友人に着目する必要性が示唆された.

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  • 日下部 尚徳
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 583-594
    公開日: 2017/02/18
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    バングラデシュは歴史的にみても大型の熱帯低気圧(サイクロン)によって多くの人的・物的被害が発生している災害頻度の高い地域である.そのため,これまで海外からの支援によって避難所建設や気象予報システムの構築,防潮林の整備などの防災政策がとられてきた.これらの対策によって,サイクロンによる死者数は減少傾向にあるが,一方で被災者のその後の生活再建はいまだに深刻な課題となっている.避難施設への事前の避難行動によって一命を取り留めたとしても,高潮によって家財一式を失う,世帯主が高潮に流され働き手を失う,といった人的・物的被害が発生し,生活再建の大きな障害となる.サイクロン被害による生活水準の低下は地域の災害脆弱性を高め,次の災害への対応力を低下させることから,常襲地域における被災住民の迅速な生活再建が防災上の重要な課題であることは論を俟たない.本研究は,バングラデシュのサイクロン常襲地域において,住民が被災後に抱える生活再建課題と,課題への対応態様について,定性的データを収集し,災害高リスク地域における災害復興課題を住民の視座から明らかにしようとする試みである.対象地域は,91年のサイクロンによって壊滅的被害が発生したノアカリ県ハティア郡ハティア島の東部沿岸地域である.本研究によって,91年のサイクロン被災直後には,十分な物資の支援が実施されていた実態が明らかになった.一方で,仕事道具や家屋など中長期的な復興にむけた支援はなされておらず,特に家屋の復旧のために被災者がNGOやグラミン銀行によるマイクロクレジット・プログラムや、親戚から借り入れをおこなっている事実が明らかになった.返済は長期にわたっており,災害高リスク地域の住民の生活を圧迫していると考えられる.

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  • 坂本 憲治, 本多 千賀子, 永山 由貴, 木内 理恵, 成田 奈緒子
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 595-609
    公開日: 2017/02/18
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    本研究の目的は,専任カウンセラー不在の学生相談機関の問題を明らかにし,今後の研究に示唆を得ることである.X大学保健センター相談室を対象に後向調査を行った.まず,保健センター年報や会議録をもとに年間延べ相談件数,学生の来談率,実質カウンセラー数等の推移を調べた.次に,学生相談機関充実イメージ表(福盛ら,2014)を用いて学生相談機関としての発展レベルの推移を評価した.最後に,学内関係者への面接調査を実施し,各時期の状況を把握した.X大学の学生相談室は開設以後10年間に「充実しつつある段階(充実度3)」まで発展し,相談機関としての要件を整えた(第Ⅰ期).年間相談件数は開設11~25年に「右肩上がり」の傾向を示したが(第Ⅱ期),開設27年,3年の任期付雇用導入を境に「短期増減」に転じた(第Ⅲ期).専任カウンセラーの先行研究では「右肩上がり」の後に学生相談機関の充実がみられたが,X大学では33年間を経てもなお「充実しつつある段階(充実度3)」にとどまった.その背景には,相談室内部における相談運営のありようや,学生相談室と学内他部署との関係性が関与していた.以上から,専任カウンセラー不在の学生相談機関に起こりやすい問題として(1)年間相談件数推移の不安定さ,(2)学生相談機関としての発展の停滞,(3)学生相談機関における密室性の高まりを指摘した.今後は,前向調査によってデータを蓄積し,問題の一般化を図る必要がある.

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  • 伊藤 みちる
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 613-645
    公開日: 2017/03/04
    ジャーナル フリー

    本稿は,植民地時代より圧倒的な経済的且つ文化的な影響力を持ちながらも,長らく研究の対象とされてこなかったトリニダードのフレンチ・クレオールと呼ばれる人々の白人性について探求した.白人性は非普遍的で時と場所により異なる概念を持つが,植民地時代から現代のトリニダード社会において,貴族性や徹底的な白人純血性を誇るフレンチ・クレオールが,非白人に対する根拠のない差異と優越性を信仰し社会経済的特権を享受する「白人性」をどのように構築,継続,再構築してきたのかを探った.トリニダードにおいて,フレンチ・クレオールの白人性構築過程に関連する一次資料の収集を行った.雪達磨式標本抽出法により集めた24名のフレンチ・クレオールに対し,オーラル・ヒストリー法を用い対面聞き取り調査を行い,談話分析を通して体験談の分析を行った.調査結果によると,トリニダードのフレンチ・クレオールは,世代に関わらず,強い白人優越性を持つことが明らかになった.一方で,植民地時代を経験した世代とは異なり,若年層はマイノリティとして,アフリカ系・インド系がマジョリティのトリニダード社会への同化を試みるため,フレンチ・クレオールとしてのアイデンティティを軽視すると発言する.しかしフレンチ・クレオールとしての主観的,また総人口の8割を占めるアフリカ系・インド系などの他社会構成員による客観的な白人性が原因となり,フレンチ・クレオールは現代トリニダード社会へ完全には同化していない.

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  • 杉山 眞弓
    2016 巻 (2016) 26 号 p. 646-658
    公開日: 2017/03/04
    ジャーナル フリー

    ルイザ・メイ・オルコットは児童文学作家,家庭小説作家として知られているが,成人を対象とした,社会問題について考察した作品もある.そうした社会的な問題を扱った作品のひとつである,Work: A Story of Experience (1873) はオルコット自身の様々な仕事経験を通じて,仕事の価値を描いている.しかしながら,オルコットにとって主たる職業で,生計手段であったはずの仕事である「作家業」はWork: A Story of Experience において取り上げられていない.本研究はオルコットにとって「作家」という仕事が複雑な性質を持っていたことに焦点を当て,Work: A Story of Experience における「作家業」の不在の意味を分析するものである.この小説が人間にとって理想的な仕事像を描いたものであるにもかかわらず,作家という仕事はその複雑さゆえに理想の仕事として位置づけられなかったことを述べる.

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