日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
2 巻, 4 号
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総説
  • 田中 淳司
    2013 年 2 巻 4 号 p. 85-93
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/29
    ジャーナル フリー
    Missing self仮説に基づく抑制性NK細胞受容体の発見は,NK細胞の細胞障害活性が自己であることを示すHLAclass I分子によって制御されていることを明らかにした。T細胞は抗原特異的で腫瘍抗原などがHLA class Iによって提示されている腫瘍細胞を認識して感作され攻撃する。一方,NK細胞は抗原非特異的でHLA class Iの発現が減弱ないし消失した腫瘍細胞を認識して,前感作の必要なく攻撃することができる。一般に腫瘍細胞が免疫監視機構から逃避する場合には,HLA class Iの発現が低下してT細胞による攻撃から逃れる。このとき腫瘍細胞攻撃の主役はT細胞からNK細胞へと交代し,NK細胞がHLA class Iの発現が低下した腫瘍細胞を攻撃できるようになるのである。また同種造血幹細胞移植において,HLA class Iを認識するドナーの抑制性NK細胞受容体KIRとそのリガンドである患者HLA class Iの不適合によってもたらされる同種反応性NK細胞は,患者白血病細胞を障害し移植片対白血病/腫瘍(Graft-versus-leukemia/tumor, GVL/T)効果を発揮するとともに,抗原提示細胞である患者樹状細胞をも障害し移植片対宿主病(Graft-versus-host disease, GVHD)発症を抑制し,GVHD/GVL制御に重要な役割を有するものと考えられる。
  • 池亀 和博
    2013 年 2 巻 4 号 p. 94-100
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/29
    ジャーナル フリー
    HLA不適合移植(ハプロ移植)は,そのレジメンによって移植の様相は異なってくる。まず海外のハプロ移植として,1)in vitroでのT細胞除去,2)high dose ATG,3)post-transplant cyclophosphamide を紹介する。報告によればGVHDは十分にコントロールされ,今後一般臨床として普及することが期待される一方,GVL効果は未知数であり,主たる適応は寛解期の疾患である。一方本邦では,非寛解期や移植後再発に対して,ハプロ移植に期待する傾向がある。我々が行っているステロイドを用いたハプロ移植もその一つであり,最近はケモカイン阻害をrationaleとしている。またハプロ移植ではGVHDが重篤化しやすいため,様々なGVHD治療を試みる機会は多い。本稿ではサイモグロブリン,mycophenolate mofetil,infliximab,経口Beclomethasone dipropionate,mesenchimal stromal cellについて,自らの印象を含めて記載した。
研究報告
  • 横田 宜子, 上村 智彦, 青木 孝友, 伊藤 能清, 村岡 弘恵, 筒井 玲子, 宮本 敏浩
    2013 年 2 巻 4 号 p. 101-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/29
    ジャーナル フリー
    同種造血幹細胞移植患者を対象に,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を用いて,入院長期化が精神的苦痛に及ぼす影響を解析した。移植後90 日目で退院予定の患者(退院群)と入院延長を要す患者(入院延長群)で,HADS 合計スコア,不安スコア,抑うつスコアについて,移植前と90 日目の変化量を群間比較した(unpairedt test)。対象21例は,退院群10 例,入院延長群11 例だった。移植前と90 日目の変化量は,退院群と入院延長群で,HADS 合計スコア,抑うつおよび不安スコアはそれぞれ,-1.5±2.4 vs. 3.6±5.2(P<0.05),-0.2±2.7 vs. 3.5±3.6(P<0.05),-1.3±1.6 vs. 0.18±3.0(P>0.05)だった。入院期間の長期化は,患者の精神的苦痛の増大に関連することが示唆された。
短報
  • Noriko Beppu, Takehiko Mori, Jun Kato, Sumiko Kohashi, Taku Kikuchi, ...
    2013 年 2 巻 4 号 p. 109-111
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/29
    ジャーナル フリー
    Tacrolimus has been widely used for the prophylaxis and treatment of graft-versus-host disease (GVHD) in allogeneic hematopoietic stem cell transplantation. Since tacrolimus is mainly metabolized by cytochrome P450 (CYP) enzymes, its drug interaction with a variety of agents has been clinically recognized. In addition, natural products such as food components and herbal products have also been reported to interact with tacrolimus. We here report the first case of a drug interaction between tacrolimus and rooibos tea documented after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation, in which the interaction reduced the concentration of tacrolimus and resulted in the development of GVHD. Transplant physicians and pharmacists should be made aware of the drug-herbal interaction between rooibos tea and tacrolimus, which is probably applicable to other drugs metabolized by CYP enzymes, such as cyclosporine A.
症例報告
  • 中嶋 康博, 白土 基明, 中嶋 恵理子, 油布 祐二, 藤岡 絵里子, 松島 孝充, 髙栁 涼一
    2013 年 2 巻 4 号 p. 112-115
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/29
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性。寛解導入不能の急性骨髄性白血病(FAB 分類:M7)に対し,強度減弱前処置を用い同種末梢血幹細胞移植を施行。移植後day 6 に発熱性好中球減少症を合併しドリペネムを投与開始。血液培養よりグラム陽性桿菌が検出され,Bacillus cereus(B. cereus)が疑われたため,バンコマイシンを追加した。Day 8 より,意識レベル低下,左片麻痺が出現,頭部MRI にて髄膜炎像,多発性出血性梗塞,硬膜下出血を認め,B. cereusが同定されたため,同菌による炎症波及と菌塊による出血性梗塞が原因と考えられた。感受性結果等を考慮してレボフロキサシン,イミペネム/ シラスタチンに変更し,麻痺は残存したが救命し得た。好中球減少期のB. cereus 敗血症は極めて急激な経過を辿るため,グラム陽性桿菌が血液培養で検出された場合は,本菌に感受性のある抗菌薬を速やかに開始する必要がある。
  • 安井 直子, 康 勝好, 加藤 元博, 高橋 寛吉, 菊地 陽, 花田 良二
    2013 年 2 巻 4 号 p. 116-120
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/29
    ジャーナル フリー
    HLA一致同胞が得られない慢性肉芽腫症における代替の移植細胞源や,重篤な合併症を伴う症例に対する前処置は確立していない。当院で移植を施行した慢性肉芽腫症4例の臨床経過を報告する。症例1はHLA1抗原不一致同胞から全身放射線照射(total body irradiation, TBI)を含む骨髄破壊的前処置を行い,5年後に二次がんを発症し死亡した。症例2,3(再移植)はHLA一致同胞より低線量TBIを併用した骨髄非破壊的前処置(Reduced intensityconditioning, RIC)により生着した。症例4は合併症管理に難渋し,代替ドナーから低線量TBIを用いたRICにより移植したが生着前に敗血症を合併し死亡した。HLA一致同胞が得られればRICに低線量TBIを併用し長期に生着が得られる可能性があるが,代替ドナーの場合や重篤な合併症を伴う症例に対するRICの適応は更なる検討が必要である。
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