日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
4 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
総説
  • 角南 一貴
    2015 年 4 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
     多発性骨髄腫に対する同種造血幹細胞移植(allogeneic stem cell transplantation,allo SCT)は腫瘍細胞の混入がなく,移植片対骨髄腫効果(graft versus myeloma effect,GVM)が期待でき,唯一治癒をもたらす可能性のある治療法として,古くから用いられてきた。しかし,allo SCTは自家造血幹細胞移植(autologous stem cell transplantation,auto SCT)との比較試験において,治療関連死亡が多いため,予後の改善に結びついておらず,未だ研究的治療の域を出ていない。近年,プロテアソーム阻害剤や免疫調節薬の導入により,多発性骨髄腫(multiple myeloma,MM)の治療成績はさらに向上してきており,allo SCTにおいてもこれらの薬剤を組み合わせた新しい治療戦略が期待される。
  • 杉田 純一, 小杉 瑞葉, 豊嶋 崇徳
    2015 年 4 巻 1 号 p. 9-22
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
     近年,移植後シクロホスファミドを用いたhuman leukocyte antigen(HLA)半合致骨髄移植において,良好な生着とgraft-versus-host disease(GVHD)抑制効果が得られることが示された。その機序として,選択的にアロ応答性T細胞を排除すること,制御性T細胞を温存することが考えられている。GVHD,非再発死亡は低いが,再発率が高い点が問題であり,再発率の低下や拒絶の減少を目的として,末梢血幹細胞や骨髄破壊的前処置を用いた移植において本法が試みられている。さらに移植後シクロホスファミドは血液悪性疾患のみならず非腫瘍性血液疾患に対する同種移植後にも適用されている。近年ではHLA一致移植への使用も報告され,カルシニューリン阻害剤を使用しない新たなGVHD予防法のプラットフォームとして期待される。
研究報告
  • 今村 貴子, 山本 未陶, 亀崎 健次郎, 赤木 恵津子, 楠田 詠司, 安部 喜八郎, 赤司 浩一, 二木 寿子
    2015 年 4 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/01/30
    ジャーナル フリー
     造血細胞移植後は重度の口腔粘膜障害を認めることが多い。我々が行った造血細胞移植後の専門的口腔ケア(professional oral health care,POHC)介入開始前後における患者の口腔粘膜障害の変化についての調査と,考察した結果を報告する。造血細胞移植を受けた107例について,口腔粘膜障害の重症度に影響する要因を,年齢,性別,移植治療前からのPOHC介入の有無,幹細胞ソース,前処置の強度,移植歴,放射線全身照射量,移植後メトトレキサート(MTX)の有無,performance status(PS),再発リスクで検討し,ロジスティック回帰分析を行った。その結果,口腔粘膜障害には移植前からのPOHC介入の有無(p=0.006オッズ比0.307)と,MTXの有無(p=0.007オッズ比3.291)が関係していた。今回の調査結果は,移植前から行うPOHCや患者への口腔衛生指導が口腔粘膜障害軽減に有効であることを示唆するものであった。
feedback
Top