日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
5 巻, 2 号
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総説
  • 村田 誠
    2016 年 5 巻 2 号 p. 27-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     間葉系幹細胞(MSC)は骨髄中で微小環境を形成し造血を支持している。また免疫を負に制御する働きを持ち,自身は共刺激分子を発現していないためアロT細胞からの攻撃を免れるといった特徴を有する。同種造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)に対して,移植ドナーではないHLA不適合者の骨髄や臍帯血からMSCを作成し投与する試みが行われている。これまでの報告によれば,重篤な副作用はなく,ステロイド治療抵抗性急性GVHDの完全寛解率は3~5割程度,完全寛解+部分寛解率は7割程度期待できる。一方,その造血支持作用に着目して,臍帯血移植やHLAハプロタイプ一致ドナー移植においてMSCを併用する試みも行われている。評価はまだ十分定まっていないが,一部で有効性を示す結果も報告されている。いずれもよくデザインされた比較試験で副作用や有効性について検証する必要がある。
  • 山﨑 宏人
    2016 年 5 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     若年の再生不良性貧血に対する造血幹細胞移植では,「HLA適合同胞ドナーからの骨髄移植」が第一選択である。一方,HLA適合同胞ドナーが得られない免疫抑制療法不応の患者では,たとえリスクが高まっても代替ドナーからの移植を考慮せざるを得ない。移植成績を向上させるためには,前処置毒性の軽減と拒絶および移植片対宿主病(GVHD)予防の強化が必要である。心毒性軽減のためcyclophosphamide(CY)を減量し,その代わりにfludarabineを併用する前処置が開発された。抗胸腺細胞グロブリン(ATG)の代わりにalemtuzumabを前処置に用いることによってGVHD予防が強化され,生存率が向上することが報告されている。生着不全のリスクが高い臍帯血移植であっても,前処置の免疫抑制を強化すれば生着率が向上する可能性がある。移植後早期にCYを投与することによってGVHDが高度に抑制され,ドナーがHLA半合致であっても安全に移植できることが近年示されている。
研究報告
  • 青山 泰之, 鬼塚 真仁, 町田 真一郎, 豊﨑 誠子, 宮本 光毅, 佐藤 亜依, 天木 惇, 川井 英嗣, 川田 浩志, 小川 吉明, ...
    2016 年 5 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     同種造血幹細胞移植後のCMV感染の危険因子を検討するため,当院での81例の同種移植症例を対象に,RQ-PCR法とAg法を併用して後方視的に解析した。移植後第2,3週では白血球数が低値のためAg法で検出不能の症例でも,RQ-PCR法では検出可能であった。また,両検査の結果は有意に相関した。移植後第4週ではRQ-PCR法はAg法より有意に検出率が高く,移植後第3,4週においてRQ-PCR法でのCMV陽性群は陰性群と比較し有意に移植後day 100までに先制治療を行った症例が多かった。リンパ系腫瘍は骨髄系腫瘍と比較し,両測定法で移植後第3,4週において高CMV量であり(RQ-PCR法;P=0.02,P=0.014,Ag法;P=0.005,P=0.002),先制治療を要する割合が骨髄系腫瘍と比べ有意に高くCMV感染の危険因子となりうると考えられた。また,移植前血清IgG低値群は,RQ-PCR法で移植後第2週において有意に高CMV量であった。これらの症例では注意深く移植後モニタリングすることが必要と考えられた。
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