日本造血細胞移植学会雑誌
Online ISSN : 2186-5612
ISSN-L : 2186-5612
9 巻, 3 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
総説
  • 神田 善伸
    2020 年 9 巻 3 号 p. 72-76
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

     近年,ネットワークメタアナリシスを用いた研究論文の発表数が急速に増加している。従来のメタアナリシスは2者の比較に限定されていたのに対して,ネットワークメタアナリシスは3者以上の比較を行うことができる。しかし,この解析によって,新たに大きなエビデンスを生み出されるというわけではない。また,その解析の実施,結果の解釈は容易ではなく,ネットワークメタアナリシスにおいては,通常のメタアナリシスで求められる前提に加えて,さらにいくつかの条件が加わってくる。しかし,新規治療薬同士の直接比較試験が行われる可能性が低いような状況などでは,ネットワークメタアナリシスは,強固なエビデンスではないものの,治療選択上の参考になるデータを提供してくれる有用なツールであるといえる。

  • 緒方 正男
    2020 年 9 巻 3 号 p. 77-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

     Human herpesvirus 6B(HHV-6B)脳炎は同種造血幹細胞移植における重要な中枢神経合併症である。中枢神経症状発症時にHHV-6B脳炎を疑う状況としてはⅰ)臍帯血移植やHLA不一致非血縁者間移植,ⅱ)移植後2〜6週目での発症,ⅲ)記憶障害や異常感覚,ⅳ)PIR,GVHD,生着症候群の先行,ⅴ)ステロイド使用下での発症,ⅵ)低ナトリウム血症があげられる。HHV-6B脳炎が疑われる場合には髄液PCR結果を待たずに治療を開始する。ホスカルネット(FCN)180mg/kg/dayでの開始が推奨される。初期治療が有効でない場合にはⅰ)治療期間延長,ⅱ)初期治療がFCN単独の場合はガンシクロビル(GCV)との併用,ⅲ)GCV単独の場合はFCNや併用療法へ変更,などを検討する。意識障害や痙攣が改善しない場合にはGCVとFCNの併用療法を考慮する。

研究報告
  • 青山 高, 山田 絢子, 秋山 加菜, 粂 哲雄, 土屋 貴之, 河島 美帆, 枷場 美穂, 米永 悠佑, 川崎 和広, 宮下 千晶, 福田 ...
    2020 年 9 巻 3 号 p. 83-92
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

     【目的】患者用栄養パスを用いた造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation,HSCT)における喫食率の有益的側面を検討する。【方法】静岡がんセンター血液・幹細胞移植科において2019年1月から2019年12月までにHSCTを受け患者用栄養パスを適用した症例を対象にした。前処置前から経静脈栄養(parenteral nutrition,PN)終了まで喫食率の関連因子を評価した。【結果】10例(女性3例)の喫食率の中央値61.3%(範囲:34.0~90.9),経口摂取熱量の中央値11kcal/標準体重: kg/day(範囲:7~22),PN期間の中央値33日間(範囲:15~60)であり,喫食率と経口摂取熱量およびPN期間は関連していた(r=0.75;P=0.012,r=-0.65,P=0.044)。経時的な栄養関連有害事象と喫食率および経口摂取熱量は負の相関を示していた(r=-0.57;P<0.001,r=-0.62;P<0.001)。【結論】患者用栄養パスを用いたHSCTにおける喫食率には臨床上の有益的側面があると考えられた。

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