【目的】本稿では人々の健康と well-being の向上を目指し、健康の社会的決定要因(SocialDeterminants of Health(SDH)概念の定義と経緯、保健医療実践への適用について既存資料を用いて明らかにする。
【方法】既存の資料より、1)定義と関連概念および経緯、2)日本国内外での同概念等の導入等の経緯、 ならびに 3)保健医療領域における同概念の適用について記述した。そして、今後のさらなる SDH 概念導入推進等への示唆を得た。
【結果】1)定義と関連概念および経緯としては、世界保健機関(WHO)の定義では、健康とそのアウトカムである健康寿命に影響する健康の決定要因(Determinants of Health(DH))は、個人あるいは集団の特性ならびに社会、経済、商業、物理的環境等の周囲を取り巻くもの等を指す。これらの要因が健康格差をもたらすが、SDH はシステムや権威等の社会的な事項である。DH では、 その状況の変更(修正)不可のものもあるが、 個人の行動や生活様式の他にも変更(修正)可能な SDH があり、ヘルスプロモーションひいては健康格差解消のために、 政策としてかつマルチセクトラルな活動としてそれら要因への取り組みが必要である。2)同概念等の導入等の経緯として、1970 年代より健康格差とその要因が注目されており、1991 年には Dahlgren & Whitehead がモデルを提唱し、1998 年に WHO は、Marmot & Wilkinson の SDH の概念を用い、これを個人または集団間に健康格差と不公平をもたらす変更可能な社会文化経済的条件として提唱した。具体的には社会格差、 ストレス、 失業等の 10 項目についてエビデンスが示された。WHO は2005 年に SDH を公式に導入し、2011 年のリオ政治宣言により、 全加盟国が政策としての SDH 対策実施を要請されている。日本では英米等に遅れをとりながらも、政策として2013 年開始の「健康日本 21(第二次)」で健康格差の解消を目標とした。3)保健医療領域における同概念の適用として、日本では 2017 年より、保健医療サービスへの導入をめざし、健康格差の解消ならびに SDH が医学および看護学の卒前教育の必修項目に含められた。
【結語】健康格差解消に向けて、 国内外における SDH の普及と保健医療実践のさらなる強化の必要性が示唆された。
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