【目的】日本の在留外国人数は増加し国籍も多様化しているが、小規模歯科医院の多文化対応に関する研究は限られる。本研究は、 郊外都市部の小規模歯科医院において、 多言語対応・スタッフ教育・地域連携などの多文化対応策が①外国人新規患者の受診行動(受診数、比率、主訴、出身国、予約方法)と②スタッフの業務・心理的負担に及ぼす影響を介入の前後で検証することを目的とした。
【方法】2017 年 1 月~ 2024 年 9 月に小規模歯科医院を新規受診した外国人患者 108 名を対象に、介入前(2017 ~ 2020 年)と介入後(2021 ~ 2024 年)を比較した。外国人新規患者数や全新規患者数に占める割合の年次推移を Welch の t 検定、 主訴・出身国・予約方法などのカテゴリ変数をχ² 検定(Cramer’s V)で解析した。また、スタッフ 46 名にアンケートを配布し、回答の得られた 33 名の業務・心理的負担を 4 段階で評価した。
【結果】介入後における外国人新規患者の年平均は 21.2 名に増加したが、 有意差はみられなかった(t=2.573, p=0.076)。一方、全新規患者数に占める外国人患者の割合は 1.0%から 2.7%に有意に上昇し(t=2.77, p=0.05)、 出身国分布も有意な変化を示した(χ²=43.63, p=0.0058, Cramer’s V=0.588)。Web 予約が 13.9%から 44.8%へ増加し、電話予約・予約なし来院が減少した(χ²=23.34, p=0.000034)。主訴「健診」の増加に有意差はなかった(χ²=0.213, p=0.645)。スタッフの 84.9%が「外国人患者とのコミュニケーションは改善した」と回答し、78.8%が「対応の不安が軽減した」と回答した。
【結語】多言語対応やスタッフ研修、 地域連携を組み合わせた多文化対応は、 郊外都市部の小規模歯科医院でも外国人患者の受診機会拡大とスタッフ負担軽減につながる可能性が示唆された。今後は多施設での検証や長期的評価、予防的受診を促す取り組みが求められる。
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