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平安時代初期の山陽道を中心に
村上 晴澄
p.
24-25
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
地形図や文字史料・発掘調査資料等を用いて、山城国における平安時代初期の山陽道の経路を復原した。
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仲尾次・稲嶺を事例として
松井 幸一
p.
26-27
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
沖縄県名護市の集落調査から伝統的集落景観の地理学的特徴を明らかとする。
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徳安 浩明
p.
28-29
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
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空中写真の判読から北上川水系砂鉄川流域の砂鉄採取にともなう地形改変の実態を、史料から鉱害の発生状況を明らかにした。
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文久三年阿波国名東郡日開村限絵図を中心として
羽山 久男
p.
30-31
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
明治維新期まで地方知行制が展開した徳島藩領阿波国藩政村で幕末期に作成された知行絵図(一筆限耕地絵図)を素材として、村の耕地空間や景観及び社会構造を明らかにする。
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GIS城下図の比較分析
平井 松午
p.
32-33
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
安政4~6年に作成された鳥取城下絵図およびその下図から,当時の侍屋敷地の実像を探ろうとするものである。
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平野屋遠藤家を事例として
長島 雄毅
p.
34-35
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
本報告は、近世京都商家が雇用する奉公人の性格を、奉公人請状を使用して、性別・出身地・身分などの点から検討していくものである。
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有薗 正一郎
p.
36-37
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
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大蔵永常は三河田原藩領に水田二毛作を普及させようとしたが、百姓たちは水稲の一毛作に固執した。それは三河田原藩領の技術水準から見て、「土地相応」「環境への適応」の視点から妥当な対応であった。
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宮本 真二, 安藤 和雄, バガバティ アバニィ, デカ ニッタノンダ, リバ トモ
p.
38-39
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
東部ヒマラヤ(インド北東部,アルナーチャル・プラデーシュ州,ネパール東部,ブータン東部)における埋没腐植土層の各種分析から,土地開発史を検討した.その結果,①古い段階での初期的な土地開発時期(約2000年前代が中心)も分散的に行われた。②集中的な土地開発時期は、約千年前以降、特に約500年前以降に行われた。③民族移動のルートは、東ネパールでの先行研究とは違い、東西ルートでの民族移動にともなう土地開発過程が示唆された。
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林 哲志
p.
40-41
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
渥美半島の伊良湖村は明治39年にそのほとんどが陸軍省所轄地となった。人々は狭小な土地を活用するために,許可を得て使用料を払い農業的土地利用をすすめた。また,使用を認めることが土地買収をスムーズに行うための方策でもあった。
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上島 智史
p.
42-43
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
朝鮮半島に設置された近世倭館を、大正期に作成された地籍図をもとに復原し、その空間構造と変容について分析した。
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清水 克志
p.
44-45
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
岩手県北地域のキャベツ産地における地域農業史編さん事業の具体的実践結果をもとに、歴史地理学(人文地理学)からの社会貢献の可能性・問題点等について考察する。
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戦前期山陰地方の事例から
長尾 隼
p.
46-47
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
本報告では,戦前期の山陰地方を事例に,国立公園の指定を希求する運動が地域と政策決定にどのような影響を与えていたのか,国立公園関係者と地域社会それぞれの思惑に注目しながら明らかにする。
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福島県伊達市霊山町の事例から
渡辺 和之
p.
48-49
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
福島県内のホットスポットである伊達市霊山町で農産物を作っている人々が原発被害でどのような被害を受けたかを報告する。
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戦後の比叡山を事例として
卯田 卓矢
p.
50-51
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
本研究では叡山文庫所蔵資料を基に、戦後比叡山の観光化に伴う維持・管理の過程について検討を行う。
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防衛白書の地政言説
山﨑 孝史
p.
52-53
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
過去刊行された防衛白書の記載内容をテキスト分析することによって、インド洋とシーレーンが日本の防衛政策の中でどのように表象され、どのような地政実践に結びついて行ったかを明らかにする。
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九州地方を事例に
上野 莉紗
p.
54-55
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
昨年8~9月・11月、今年8~9月に行政機関に行った聞き取り調査の内容をもとに、地域の実態と道州制の議論との関係性について検討する。
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1970年代のウトロ地区をとりまく文化地理
全 ウンフィ
p.
56-57
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
70年代のウトロ地区を事例に地域における政治・文化的状況の展開をマルチスケールの観点から分析する。
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主に英語圏の研究を中心に
石田 曜
p.
58-59
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
本発表は、近年の人文地理学における公共空間研究の展開と課題について、主に英語圏の研究を中心に検討することを試みるものである。
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立岡 裕士
p.
60-61
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
近世社会において地理学がどのように定義されていたかを、著者・読者・分類者の観点から把握することを試みる。
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長井 彩
p.
62-63
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
近年、従来では均質的で凡庸なものとして批判の対象であった景観に魅力が見出されており、その評価の特質について分析した
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大平 晃久
p.
64-65
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
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「記憶の場」論の観点から戦前期の大分における南蛮貿易の記憶化の諸相を論じる。
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GISを援用した分析
小林 茂, 森野 友介, 角野 宏, 多田隈 健一, 小嶋 梓, 波江 彰彦
p.
66-67
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
植民地期以降の台湾桃園台地の灌漑水利を概観し、地形図にGISを適用して水田面積やため池面積をもとめ、現地調査もあわせて、ため池の変化を検討する。
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徳島平野を例に
古田 昇, 小林 郁典, 川瀬 久美子
p.
68-69
発行日: 2011年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
DEMを用いた標高マップと新旧地形図から地形環境を考察し、土地条件図、ハザードマップとの整合と解析を行う。
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松井 優理, 若林 芳樹
p.
70-71
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
地形図を用いた設問の解答過程にみられる空間的思考過程とその多様性,およびそれに作用する要因について,質問紙調査と面接調査に基づいて検討した.
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米谷 葵
p.
72-73
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
奈良市郊外住宅地において食料品店の立地と、高齢者の買い物行動の実態をアンケート調査に明らかにした。
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千里ニュータウンとその近隣地域を事例として
関村 オリエ
p.
74-75
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
地域住民である主婦の家庭と仕事の両立のようすから、再開発の進む大阪府千里ニュータウンにおける変容を考察する。
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埼玉県富士見市関沢地区を事例に
西山 弘泰
p.
76-77
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
埼玉県富士見市の住宅地開発の変遷を開発業者のミニ開発,農家の土地売却とそれらの関係性からミニ開発住宅地の形成メカニズムを明らかにする。
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上杉 昌也, 浅見 泰司
p.
78-79
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
東京都市圏における社会属性別人口の時空間分布を明らかにし、地域別に社会階層の多様性を評価する。
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山田 浩久
p.
80-81
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
近年における地価変動を全国レベルで概観した後,傾向が変わった地域の特徴から地価の局地的変動要因を明らかにする。
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名護市辺野古と二見以北十区を事例として
中島 弘二
p.
82-83
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
本発表では沖縄県名護市の東海岸地域を対象として、米軍基地関連の地域振興事業が地域の生活環境や地域文化に与えた影響を明らかにする。
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杉江 あい
p.
84-85
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
従来,人文,社会科学において「物乞い」は,社会学,地理学,歴史学,人類学,民俗学などにおいて研究がすすめられてきた。地理学では「物乞い」に焦点を当てたものは稀であり,「ホームレス」の研究が蓄積されている。そのなかで,「物乞い」行為は社会問題として扱われ,「ホームレス」の生計戦略の1つとして言及されるにとどまってきた。一方で,民俗学や人類学といった分野における関心は,社会問題としての「物乞い」の存在ではなく,「物乞い」の起源,その地域における「物乞い」の社会的,文化的意味,宗教との関係,および,なぜ施しが行われるのかといった点に置かれている。このように,「物乞い」という現象は同一であるにもかかわらず,各分野による「物乞い」の捉え方は,大きく異なっている。しかし,この違いについて言及し,各分野に横断する「物乞い」の研究をまとめ,蓄積の厚い「ホームレス」研究と「物乞い」の研究を接続するような議論はなされてこなかった。各分野による捉え方の違いには,それぞれの分野の抱く関心,また,対象とする時代,地域,およびその地域的文脈に即した問題意識の違いが深く関わっている。本発表は,欧米において「物乞い」が「浮浪者」,「ホームレス」という枠組みで捉えられる世俗の社会問題になっていった歴史的過程を述べ,各分野による捉え方の違いが生まれる背景について議論する。
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沖縄出身の集団に着目して
松下 直樹
p.
86-87
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
本報告では,複数の移住者集団が雑居する横浜市鶴見区において,沖縄出身で鶴見区に移住した沖縄出身者と,沖縄出身で南米に移住した後,鶴見区に再移住した南米系沖縄人を対象とし,両集団間の関係を解明したうえで,沖縄出身の集団による適応戦略について論じる.
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宮内 洋平
p.
88-89
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
新自由主義下のヨハネスブルグで生じている「新しいアパルトヘイト」の諸様相を空間的に考察したい。
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佐賀市Sビルを事例として
箸本 健二
p.
90-91
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
佐賀市の事例をもとに、中心市街地で経営困難に陥った行政主導による再開発ビルの破綻・再生のメカニズムを、都市地理学の視点から検討する。
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岩鼻 通明
p.
92-93
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
山形県鶴岡市に中心市街地活性化の目的で、新たにオープンした映画館について、アンケート調査から、その役割を検証する。
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竹中 克行
p.
94-95
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
地中海都市レウス(スペイン)を対象として,歴史地区の中心性回復について商業活性化の側面を軸に考察.
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齋藤 鮎子
p.
96-97
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
B級グルメとしての浜松餃子がいかに発祥し、定着・普及したかを地域社会との関わりから考察する。
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現代合唱曲としての復活
川西 孝男
p.
98-99
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
13世紀ドイツの詩歌「カルミナブラーナ」の発祥そして、20世紀にオルフによって合唱曲となって復活した背景について人文地理学的アプローチを用いて考察する。
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横山 智
p.
100-101
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
消えつつある日本でのタブノキ採取、さらに東南アジア大陸部でのタブノキ採取と加工、そして流通について、異なる地域の森林利用の関係性を線香粘結剤のタブ粉を通して論じる。
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山田 耕生, 中村 哲也, 霜浦 森平
p.
102-103
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
沖縄県北部のやんばる地域(東村、国頭村、大宜味村)を事例に、2000年代半ばから取り組みを開始した民泊(修学旅行の中高校生を農家などの一般家庭に宿泊させる)の取り組みを明らかにし、今後の展開について考察する。
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震災直後から1年後の変化
塩川 太郎, 林 麗華, 陳 暁靚
p.
104-105
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
台湾における東日本大震災による日本旅行への心理的影響の変化(発生直後~1年後)をアンケート調査により明らかにした。
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石丸 哲史, 友澤 和夫
p.
106-107
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
都道府県別に事業所の開業率と廃業率を算出し、バブル経済以降今日までの時空間変動の考察結果を報告します。
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社会経済地理学的なアプローチから
杉山 武志
p.
108-109
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
集積研究における都市,学習,コミュニティの論点を整理し,都市集積研究の方向性を考察した。
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なぜ海外就職する日本人若者なのか?
鍬塚 賢太郎, 神谷 浩夫, 由井 義通, 阿部 康久, 中澤 高志, 谷 人旭
p.
110-111
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
日本企業の海外展開と,それに伴う現地での「日本的な」サービス需要の拡大,それを担う現地採用日本人(若者)への需要の構造について検討する。
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上海における現地採用日本人を事例として
神谷 浩夫, 阿部 康久, 中澤 高志, 由井 義通, 鍬塚 賢太郎
p.
112-113
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
上海で現地採用者として働く日本人が、キャリアアップをはたしていくためにどのような戦略を執っているかを検討する。
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清水 和明
p.
114-115
発行日: 2012年
公開日: 2013/12/17
会議録・要旨集
フリー
本報告では,新潟県上越市三和区における大規模稲作経営の展開とその特性を明らかにし,地域農業の維持に果たす意義を考察した。三和区は上越市の中央部に位置する。区の面積は39.4㎢であり,その大半が標高20~30mの平坦部に位置し,東部と北東部には標高100~200mの丘陵地がみられる。冬期には日本海側からの季節風の影響を受け,毎年1m以上の積雪を記録する豪雪地域である。2010年の総人口は6,211人,総世帯数は1,793戸である。総農家数は392戸で,その内訳は専業農家44戸,第1種兼業農家50戸,第2種兼業農家201戸,自給的農家97戸となっている。総経営耕地面積1,135haのうち,田の面積は1,112haとなっており,典型的な水稲単作地域である。三和区では,1980年代から今日にかけて総農家数は約4分の1に減少しており,とくに2000年代に入り経営規模耕地面積が1ha未満の小規模農家の減少が著しい。しかし,経営耕地面積が10ha以上の農家数が増加しており,農家1戸当たりの経営耕地面積の拡大も進んでいる。その拡大過程をみると,1990年には1.8haであったが,2000年の段階で2.1haになり,2010年には上越市内でも最大の3.8haになっており,20年間で2haの増加が確認できる。この直接的な要因となったのが,1994年から開始された県営経営体育成基盤整備事業(大区画圃場整備)である。同事業では三和区内全域を対象に1区画当たり50a~1㏊の圃場の整備が行われた。この結果,以下で取り上げる認定農業者や集落営農組織といった担い手に農地が集積することになった。2010年の段階で三和区には66戸の認定農業者がおり,その経営耕地面積は合計で722.9haになる。これは三和区の全経営耕地面積の約6割を占める。次に,経営規模別の農家数をみると,10ha未満の農家が43戸,10~20haの農家が13戸,20~30haの農家が5戸,30ha以上の農家が5戸となっている。 三和区の認定農業者において特筆すべきなのが,借地農地を利用した農業経営を行っていることである。合計経営耕地面積に占める借地農地の合計はおよそ5割(397.5ha)に留まっているものの,自作地のみの農家は全66戸中5戸であり,認定農業者の経営基盤を考える上で借地農地の存在は欠くことのできないものになっている。借地農地の分布についてみると,大半の農家が居住する集落ないし周辺の集落に借地農地に抱えているが,経営規模の大きい農家になるほど複数の集落に借地農地を有しており,経営規模20ha以上の農家では,三和区外の上越市の他地域にまで借地農地を抱えている。しかしながら,こうした借地農地を基盤とする認定農業者の更なる経営規模の拡大については慎重な姿勢をとっている農家が多くみられた。その要因の1つは,米価が低迷している今日において生産コストの削減が経営を維持するうえで不可欠になっており,経営規模の拡大に向けた投資に対して消極的な点である。第2の要因として,三和区内で集落営農組織の設立が進んでいることが関係している。本来であれば借地農地となり得る農地がこれら組織によって囲い込まれ,新たな借地農地が創出されにくくなっているという状況が形成されている。三和区には2010年の段階で10の集落営農組織がみられ,これら組織の経営耕地面積は合計 336.4haになる。組織の形態をみると,集落を構成単位とする農事組合法人が9法人,集落内の有志によって設立された株式会社が1社である。1つの農事組合法人を除いた2006年以降に設立されているが,これは米政策の転換にともない集落営農組織が施策の助成対象として位置付けられたことで行政側が組織の設立を積極的に促したことと,同時期に三和区内で実施されていた圃場整備事業が相次いで完了したことが理由である。とくに,圃場整備事業の実施による圃場の大型化にともない,集落の農地の維持管理を集落内で完結させるという規範が働いた集落において組織化が進んだとものと考えられる。集落営農組織による農業経営についてみると,これまでの個別農家ごとに行われていた農業生産は組織に一元化されている。また,農業生産にかかるコストも個々の農家で経営を行っていた時期と比べて削減され,作業料も軽減されているため,組織の活動を好意的に捉えている集落が多くみられた。しなしながら,政策が目まぐるしく変化する現状において,集落内の農業経営を組織に一元化させることに対して慎重な姿勢を取る農家もみられ,集落営農組織と個々の農家の経営が同時に行われている集落も存在する。集落営農組織の経営を持続させる上でそれぞれの組織が重要視しているのが販路の安定的な確保である。各組織では,新潟県特別栽培農産物等認証制度の適用を受けた米の栽培をはじめ,独自の減農薬・減化学肥料栽培を行い,で付加価値を高め,それと同時に,米穀店や一般消費者への直接販売を行っている。こうした取引関係を強化よる取り組みとして,一環として消費者を対象とした米の収穫体験の受け入れを行う組織や,新潟県外の米穀店に直接出向き店頭で米や郷土料理の直接販売を行う組織もみられた。
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