以上においてCanterburyに発達する地形面について述べたが, これらの地形面は明らかにSouthern Alps山地を中心に発達した洪積世の氷期に関連しており, 25万分の1地質図によれば次のように対比されている (表1)。地形面の形成が新しいBurnham面・Windwhistle面については3図巾とも一致しているが, より古いWoodlands面・Hororata面については, 平野の北部・中部・南部で対比が一致していない。すなわち, Woodlands面は平野の中部・南部でWaimea氷期・北部ではWaimaunga氷期にそれぞれ対比されている。また, Hororata面は平野の南部でWaimaunga氷期・中部ではWaimaungaまたはPorika氷期・北部ではPorika氷期にそれぞれ対比されている。つまりHororata面は南部で新しく北部で古いとされていることになる。本論では, 火山灰などの対比の決め手を欠いていることもあってこれらを確定するに至らなかった。しかし, 比較的地形面が良好に発達している平野中央部を標式地として, Burnham面・Windwhistle面をOtiran, Woodlands面をWaimean, Hororata面をWaimean以前のものとするにとどめた。
西海岸では氷河性outwashの厚い砂礫層からなる段丘が発達している。これらのうちGreymouth-Hokitika間の段丘群については既に一部報告した
10)が, 標高91m以上にあってWaimea氷期に対比されるKumara-1段丘をとりまいて, Otira氷期に対比されるKumara-2・Kumara-3段丘が明瞭に発達している。さらにKumara-2段丘は早期と後期で2分されている。Southern Alpsの東側にあるCanterbury平野では, 山脈中心部から遠いため, 氷期に関連する地形面は西海岸のように明瞭な段丘地形として発達していない。しかし, 筆者は西海岸および前節で述べたCanterbury平野における調査・観察によって, Woodlands面をWaimea氷期に対比されるKumara-1面に, Windwhistle面およびBurnham面はOtira氷期に対比されるKumara-2面に対比するSugate (1965) の説
11)を支持し, さらにWindwhistle面をKumara2-1面・Burnham面をKumara2-2面にそれぞれ相当するものとした (表2)。Kumara3面は西海岸においても河川中流部にtillを伴なった堆積面として観察されるが, Canterbury平野ではRakaia川上流部などで新期のoutwashとして観察されるにすぎない。これらN. Z. における氷期は, 放射性炭素の測定
12)によれば, 西海岸のKumara-2面の後期 (Burnham面相当) で22, 300±350B. P., Kumara3面で14, 800±230B. P. とされている。これらのことから, N. Z. のOtira氷期はヨーロッパのWürm氷期にほぼ対比される。また, 単純にN. Z. とヨーロッパの氷期を対比すればWaimea氷期はRiss氷期・Waimaunga氷期はMindel氷期・Porika氷期はGünz氷期となるが, これらについては今後の研究が必要と考えられる。
前節で述べたCanterbury平野における地形面分布の特徴をみると, 特にRakaia川北部のBurnham面は内陸部で沖積面に移行し, 海岸には砂丘・潟湖などが形成されている。また, 同河川以南のBurnham面は海蝕崖で海に接し, その比高はRakaia川河口付近で12m・さらに南のRangitata川河口付近で22mとなっている。しかし, これら平野部の地形面形成に関与したWaimakariri川・Rakaia川・Rangitata川などの河川はいずれもSouthern Alpsに発源してその規模も類似しており, 運搬堆積作用に大きな差があったとは考え難い。これらのことから, Burnham面形成期以後における地盤運動の傾向として, 平野北部の相対的下降と南部の相対的隆起があったと推定される。
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