比較生理生化学
Online ISSN : 1881-9346
Print ISSN : 0916-3786
ISSN-L : 0916-3786
29 巻 , 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総説
  • 加賀谷 勝史
    2012 年 29 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     動物行動は,特定の外部感覚刺激に応答して開始するだけでなく,自発的にも開始する。このような自発的(随意的)な行動開始の神経機構はどのようなものだろうか。我々はアメリカザリガニにおいて,自発性歩行に動員される脳内ニューロンを多数同定した。とりわけ,自発的な歩行開始に先行すること1秒以上前にスパイク活動が増加するニューロンを発見した。これらのニューロンの活動は,脊椎動物の脳で記録される随意行動開始に先行する活動,すなわち準備活動に相当するものであると考えられる。また,歩行の継続中あるいは停止時に賦活されるニューロンを同定した。以上から,自発性歩行は,組織化された下行性信号によって開始,継続,停止が制御されることが判明した。さらに,これらの下行性信号がどのような神経回路機構で生成されるのかを明らかにするために,細胞内記録・染色法によって脳内神経細胞を調べた。その中で,準備活動ニューロンを同定することに成功し,準備活動が内発的興奮性によってではなく,逐次的な興奮性・抑制性シナプス入力によって形成されることが分かった。同定された多数の脳内ニューロンのシナプス活動,樹状突起投射部位を解析した結果から,自発性歩行制御に関わるシナプス賦活が前大脳内側部と後大脳とで構成される回帰性神経回路で起こるモデルを本稿で提案する。
  • 神尾 道也
    2012 年 29 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     殻を持たない軟体動物であるアメフラシの仲間は,体が軟らかくて傷つきやすい上に,動きが緩慢であることから,皮膚または皮膚からの分泌物に含まれた物質による化学防御により捕食者から身を守っていると考えられる。さらに,アメフラシは化学防御物質を多く含む紅藻類や藍藻類を好んで食べるので,これらの植物の持つ物質を自分の化学防御の原料として用いるのだろうと考えられてきた。しかしながら,この「皮膚に含まれる海藻由来の2次代謝物による防御」仮説を満足に支持するような実験結果は得られておらず,研究者間で意見が分かれている。また,アメフラシは攻撃を受けた時に紫色の液体を放出することから,この液体による煙幕で捕食者の視界を撹乱して逃げる,または,この液体に含まれる化合物で捕食者の味覚や嗅覚などの化学感覚に働きかけて攻撃をやめさせる,と考えられてきたが,この「紫色の液体放出による防御」説に関してもまた,はっきりと支持するような実験結果が得られてこなかった。それが,近年になって紫色の液体を構成する紫色のインクと白色のオパリンという二つの分泌物に含まれる化学防御物質群の解析が進み,その役割と仕組みが徐々に明らかにされてきた。これらの化合物は捕食者の化学感覚に働きかけて防御物質として働くだけでなく,同種個体に対しては警報物質として働く。本稿では最近明らかにされてきたアメフラシの多重の化学防御機構,皮膚に含まれる2次代謝物とインクとオパリンの成分として放出される化合物群の正体とその役割について概説する。
技術ノート
  • 甲斐 加樹来, 岡田 二郎
    2012 年 29 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/17
    ジャーナル フリー
     我々は,一般的な埋め込みワイヤ電極を用いた電気生理学的手法に,ファクトリ・オートメーション機器として用いられる画像センサを導入して,非拘束昆虫から神経活動の細胞外記録と行動計測を同時に行うための実験システムを開発した。このシステムでは,画像センサによるリアルタイム画像解析の結果をアクチュエータにフィードバックして,カメラが動物を追跡する。これにより,比較的広範囲にわたり動物の細かい挙動を高倍率で撮影することが可能となる。また,動物のターンにともなって自動回転するスリップリングを装備することにより,電極線の捩れを解消し,長時間の神経活動記録が可能となる。このシステムは,画像解析によって算出される,動物の運動を表すユーザー定義のパラメータをアナログ出力して,神経活動と共に記録するためのDAコンバータを備えている。このシステムを用いて,非拘束のフタホシコオロギの歩行運動と前大脳におけるニューロン活動を記録した。本システムは,適切な実験系の設定と画像センサの機能を応用することで,昆虫のような小動物を対象に,歩行をともなう行動と神経活動の関連を解析することが期待できる。
講義実況中継
  • 酒井 正樹
    2012 年 29 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2012/01/31
    公開日: 2012/10/17
    ジャーナル フリー
     私は,ながらく岡山大学で教鞭をとり,退職後も現在特命教授として教育に従事している。しかし,それもそろそろ終わりになりつつある。それで,これまで自分がやってきた講義のなかで,学生からよく出た質問や学生が陥りやすい誤りなどについて,書き残しておきたいと思っていた。かって十数年前,私が本誌編集長をしていたとき,大学での講義について,指導方法や教材などを紹介してもらう欄を企画したことがあった。そういうものを復活してもらえないかと考えていた折も折,私たちの学会で教育の向上をはかるための議論がおこってきた。そこで,黒川編集長と相談のうえ,ここに書かせて頂くことになった。
feedback
Top