比較生理生化学
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32 巻, 2 号
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総説
  • 久原 篤, 宇治澤 知代, 太田 茜
    2015 年 32 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/22
    ジャーナル フリー
    温度は生体反応に直結する環境情報であるため,温度に対する適応機構は重要なシステムである。本稿では,温度適応に関する分子生理機構に関して,シンプルな動物である線虫C. エレガンスを使った最新の研究結果を紹介する。特に,線虫の低温適応に関して,従来,光やフェロモンを受容することが知られていた感覚ニューロンが温度を受容し,それに応じてインスリンが分泌され,腸などで受容されることで制御されるという,新たなシステムが見つかってきた。
  • 鈴木 惠雅, 宮本 武典
    2015 年 32 巻 2 号 p. 76-82
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/22
    ジャーナル フリー
    本来,我々にとって最も日常的な食べ物の好き嫌いは生得的に決まっている。しかし,新奇の味を摂取後,内臓不調により不快に感じると,その味を忌避するようになる(味覚嫌悪学習)。この時に獲得する記憶を味覚嫌悪記憶という。一方で,嫌悪記憶を獲得した味も, 内臓不調を伴わず快と感じれば嫌悪記憶を読み出せなくなり,その味を再び好むようになる(消去学習)。この時に獲得する記憶を消去記憶という。我々は,マウスを用いた行動実験によって,性成熟を促す雄性ホルモン(アンドロゲン)の一つであるテストステロンが,味覚嫌悪学習後の消去記憶の保持機構に著しい影響を及ぼすことを明らかにしてきた。その結果,消去記憶の保持機構の成熟は,消去に関連する脳部位(扁桃体,前頭前野腹内側部)が,性成熟前と性成熟後の2段階でテストステロンに曝露されることが必要であり,特に,性成熟前の高くはないが一過性のテストステロン曝露が非常に重要であることが示唆された。近年,行動の発現を調節する中枢神経系への性ホルモンの作用に注目した研究が数多く報告されている。本稿では,性成熟の視点から,味覚嫌悪学習後の消去記憶保持機構の成熟に対するテストステロンの役割について,主として我々の研究成果を通して解説する。
  • 村田 健, 武内 ゆかり
    2015 年 32 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2015/06/22
    ジャーナル フリー
    フェロモンはある個体が発し,同種の他個体に受容されることで特定の行動や生理的変化を誘起する化合物である。特定の行動を生じさせるフェロモンはリリーサーフェロモン,生理的変化を誘起するフェロモンはプライマーフェロモンと呼ばれている。これまでに同定されたフェロモンのほとんどはリリーサーフェロモンであり,プライマーフェロモンは昆虫類を含めても数えるほどしか同定されていない。これは,プライマーフェロモンのバイオアッセイが非常に困難であることに起因すると考えられる。我々の研究グループは,シバヤギをモデル動物として,生殖制御中枢の活動を電気生理学的にリアルタイムで測定する独自のバイオアッセイシステムを用いることで,プライマーフェロモンの探索を行い,雄ヤギが発する4-ethyloctanalという化合物に活性を見いだした。このように中枢作用機構をとらえたバイオアッセイシステムを用いることで,畜産学的に重要な動物種のプライマーフェロモンの同定や作用機構の理解が進み,将来的にはフェロモンを用いた繁殖制御技術に応用されることが期待される。
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