比較生理生化学
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33 巻 , 3 号
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総説
  • 下澤 楯夫
    2016 年 33 巻 3 号 p. 98-107
    発行日: 2016/09/29
    公開日: 2016/10/17
    ジャーナル フリー

    生物の生きる仕組みの動作原理をヒトの技術へ転化するバイオミメティクスを紹介する。生物の機能の全ては,特定の構造に裏付けられている。生きる仕組みの理解を目指す生理学では,「構造の無い機能は幽霊,機能の無い構造は死体」である。生物は全ての機能的(適応的)構造を,極ありふれた元素のみから作る。コガネムシが金の原子を1個も使わずに常温常圧で金色の鞘翅を作り上げる能力は,技術と呼ぶにふさわしい。ガルバーニが,金属との接触でカエルの筋肉が攣縮する仕組みを追い求めたことが,電池の発明を惹き起こして世界を一変させた。パソコンでクリックした際に動作するシュミットトリガー回路は,イカの巨大神経軸索のパルス発生機構に由来し,現実の世界経済を支えている。サカナの眼のレンズは単に球形なのではなく,中心部の屈折率が高い屈折率分布レンズで,球面収差が補正されている。生理学ではマーティセン比として知られるこの結像原理の二次元版が光ファイバであり,現在の光通信を支えている。物理学が人間の英知で解き明かし制定したかのように言い触らしている法則の多くは,生物が既に十分に使いこなして物作り技術にまで高めていた自然の性質の1億年遅れの再発見に過ぎない。

  • 早川 昌志, 洲崎 敏伸
    2016 年 33 巻 3 号 p. 108-115
    発行日: 2016/09/29
    公開日: 2016/10/17
    ジャーナル フリー

    ミドリゾウリムシは,共生クロレラと呼ばれる単細胞緑藻類を細胞内共生させている繊毛虫類の一種である。ミドリゾウリムシは,共生クロレラを除去する「白化」と,共生クロレラの「再共生」が容易に行えることから,細胞内共生研究における有用なモデル生物であり,以下のように多くの研究がなされている。ミドリゾウリムシには,宿主由来の共生クロレラのみだけでなく,別株や別種の宿主に由来する共生クロレラや,自由生活性の藻類,さらには酵母や細菌などの微生物も共生させることができる。共生クロレラに特徴的な生理学的特性として,外液が酸性の条件で細胞外にマルトースを放出する性質がある。共生クロレラはPV膜と呼ばれる生体膜によって近接して包まれており,PV膜の内部が酸性環境に維持されていると考えられており,共生と関連したクロレラからの糖の放出システムが構築されていることが予想されている。PV膜には宿主ミトコンドリアが密着・融合しており,細胞内共生において何らかの役割を果たしている可能性がある。ミドリゾウリムシは分子生物学的な研究は遅れているが,比較トランスクリプトーム解析などが行われており,共生と関連して発現が変動する遺伝子も報告されている。

  • 小泉 修
    2016 年 33 巻 3 号 p. 116-125
    発行日: 2016/09/29
    公開日: 2016/10/17
    ジャーナル フリー

    私は,動物界で最も単純な刺胞動物の散在神経系の構造・機能・発生を分子レベルから個体レベルにわたり総合的に研究してきた。そしてその知見を他の集中神経系(哺乳類に至る背側神経系と昆虫や軟体動物頭足類に至る腹側神経系)と比較して,神経系進化の一番底から,2つのルートを眺めて,神経系の起源と進化を考えてきた。その結果,現在,「発達程度は低いとしても,刺胞動物の散在神経系は,神経系の要素の全てを持ち合わせている」と考えている。この点は,中枢神経系に関しても同様ではないかと予想している。この総説では,散在神経系の研究より見えてきた神経系の起源と進化について議論する。

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