比較生理生化学
Online ISSN : 1881-9346
Print ISSN : 0916-3786
ISSN-L : 0916-3786
34 巻 , 4 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
総説
  • 市之瀬 敏晴, 山方 恒宏
    2017 年 34 巻 4 号 p. 108-115
    発行日: 2017/12/28
    公開日: 2018/01/17
    ジャーナル フリー

    ドーパミンは睡眠,学習や求愛行動など,動物のさまざまな行動を制御する。中脳ドーパミンニューロンは,報酬刺激に対する一過的なバースト発火を生理学的特徴とするが,その多くは,外界からの刺激がない状態でも内因的な神経活動を示すことが知られている。先行研究により,このドーパミンニューロンの「自発活動」は,学習などの脳機能に重要な役割を果たすことが分かってきた。しかし,行動との因果関係やその作用メカニズムについては,未だ不明な点が多い。近年,モデル生物であるキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterの脳内においてもドーパミンニューロンが自発的な活動を示すことが分かってきた。最新の生理学的手法,および遺伝学的アプローチにより,ショウジョウバエの行動および内的状態がこの自発活動に反映されており,その変化は個体レベルの行動に直接的に影響することが明らかとなりつつある。さらに自発活動の制御に関わる分子やドーパミンニューロンの局所回路も同定されつつある。本総説では,ショウジョウバエを中心とした最新の知見をまとめ,ドーパミンニューロンの自発活動が動物の行動制御において果たす意義について考察したい。

  • 十亀 陽一郎, 松岡 達臣
    2017 年 34 巻 4 号 p. 116-122
    発行日: 2017/12/28
    公開日: 2018/01/17
    ジャーナル フリー

    土壌に生息する真核単細胞生物は,乾燥耐性や紫外線耐性などの環境耐性を有する休眠型細胞(休眠シスト)を形成することにより,陸上環境にうまく適応している。降雨により一時的に水環境が出現すると,休眠型細胞は,あっという間に増殖型細胞(栄養細胞)につくりかえられる。短期間しか存在しない水たまりのなかで栄養細胞は非常に速いスピードで増殖する。そして乾燥が近づくと,水たまりが消失する前に,すばやく休眠シストになる。単細胞生物の休眠シスト形成に関する研究は20世紀初頭より始まったが,そのしくみの一端を分子の言葉で語れるようになったのはごく最近のことである。本稿では,土壌性繊毛虫コルポーダ(Colpoda cucullus Nag-1)の休眠シスト形成を誘導するCa2+ 依存的シグナル伝達系および休眠シスト形成過程において発現量が変動するタンパク質について,筆者らの研究を中心に紹介する。

  • 刘 绮丽, 田渕 理史
    2017 年 34 巻 4 号 p. 123-135
    発行日: 2017/12/28
    公開日: 2018/01/17
    ジャーナル フリー

    食物の摂取においてはつねに“何をどのくらい食べるか”という重要な選択が存在する。食物の選択において空腹感は食物に対する生理学的要求を表現する動機付けであり,それゆえに,空腹感というものは塩分やタンパク質のように各種栄養成分特異的に個別付加され得るものであるといえる7, 11)。このような栄養成分に特異的な空腹要求に由来する食物の選択は生物の生存戦略においてとくに重要であると考えられるが,これに関する神経基盤についてはよくわかっていない。筆者らは,ショウジョウバエにおいて,タンパク質に対する要求は特定のドーパミン作動性ニューロンの分枝特異的な可塑的変化により符号化されることを見い出した。同定された特定のドーパミン作動性ニューロンの神経活動はタンパク質の不足に依存して増大し,この神経活動の増大はタンパク質の摂取の増加をひき起こすと同時に糖質の摂取の減少をもひき起こした。さらに,このような栄養に特異的な嗜好性の変化は,このニューロンとその出力先である2つのニューロンとのあいだのシナプスにおける分枝特異的なシナプス伝達の可塑的変化とより持続的な形態的な変化に起因した。この研究により,ニューロンの分枝特異的可塑性に基づく食物摂取における恒常性維持の神経基盤の一端が明らかにされた。本稿では,栄養特異的な空腹感についての筆者らの最近の研究を中心に紹介し,肥満問題の解決に向けたアプローチにおけるモデル生物としてのショウジョウバエの可能性についても考察したい。

feedback
Top