比較生理生化学
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34 巻 , 1 号
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総説
  • 服部 淳彦
    2017 年 34 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 2017/03/29
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー

    エイジングに伴って,様々な器官に衰えが生じることは避けられない。特に,睡眠障害や記憶力の低下,骨粗鬆症による骨折などは,高齢者のQOL(Quality of Life)低下につながり,その予防や改善策は喫緊の課題である。メラトニンは松果体から夜間にのみ分泌される「夜の時刻情報の伝達物質」であるが,その分泌量は加齢とともに激減する。近年,メラトニンは松果体以外の様々な器官においても合成されること,フリーラジカルや活性酸素を消去する抗酸化物質としての性質を併せ持つことが明らかとなった。そこで,この加齢に伴って減少するメラトニンを補充するという長期投与実験がなされ,マウスやラットでは寿命を延ばすことが報告されている。ヒトでも,閉経後骨粗鬆症の進行を抑制し,アルツハイマー病に対しても通常の治療薬との併用ではあるが,進行を抑制することが報告され,一段とアンチ(ウェル)エイジング効果に期待が集まりつつある。最近我々は,メラトニンの学習・記憶増強作用が,メラトニンの脳内代産物であるN-acetyl-5-methoxykynuramine (AMK)の長期記憶誘導作用に起因していることを見出し(特願2016-42875),老化によって長期記憶形成力が低下したマウスやコオロギにおいて,AMKの単回投与が記憶力の有意な改善をもたらすことを明らかにした。また,我々が見つけたメラトニンの破骨細胞(骨溶解)抑制作用を期待して,国際宇宙ステーション「きぼう」実験棟において実験を行い,宇宙でもメラトニンが破骨細胞を抑制することを確認した。

  • 西野 敦雄, 小野 富三人
    2017 年 34 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2017/03/29
    公開日: 2017/04/11
    ジャーナル フリー

    我々の体は,筋肉が動かしている。骨格筋には発生段階,部位,生理特性に応じた分化・多様化が見られ,中枢神経系がその収縮を精妙に指令している。神経からの入力が筋肉をいかに収縮に導くかについては,Galvani以来,時に歴史的な発見を生み出しながら,これまで哺乳類や両生類の脚の筋肉が主なモデルとなり,理解がもたらされてきた。そこで明らかになった興奮−収縮連関機構は,単一の運動ニューロンが骨格筋線維に入力し,イオンチャネル型アセチルコリン受容体に受容されたシグナルが筋細胞膜の活動電位を誘起する“全か無か”の過程が基本となる。他方で,両生類や魚類がもついわゆる「遅筋」は,活動電位が発生せずに収縮が起こることが認められていたが,その興奮−収縮連関の仕組みは未知のままであった。近年,脊椎動物に最も近縁な無脊椎動物の系統に属する動物「ホヤ」のオタマジャクシ幼生における神経筋シナプスの研究をきっかけとして,魚類の速筋と遅筋の興奮−収縮連関機構の意外な相違点が明らかになった。我々の体に備わっている多様な筋肉がもつ興奮と収縮の仕組みには,まだまだ未知の問題が多く残っている。

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