比較生理生化学
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35 巻 , 2 号
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総説
  • 櫻井 全
    2018 年 35 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー
    数千種におよぶウミウシのうち数十種において遊泳行動を示すことが確認されている。ウミウシの遊泳行動には体を背腹方向に屈曲させるものと左右に屈曲させるものに大別されるが,遊泳する種の系統樹上における分布には明瞭な規則性が見られない。例えばトリトニアとウミフクロウはよく似た背腹屈曲型の遊泳運動を示すが,系統的に遠戚であるため独自に獲得した行動と考えられる。それでも遊泳の運動出力パターンを作り出す神経回路には相同なニューロンが含まれ,回路構成にも類似点が多く見られる。 さらにセロトニンによる神経修飾作用が遊泳パターン発生において重要な役割をも持つという点においても共通している。一方,スギノハウミウシとメリベウミウシを含む単一系統群では,共通祖先から受け継いだ相同な左右屈曲型の遊泳行動を示すが,遊泳パターン発生回路のデザインや相同ニューロンの機能に大きな違いが見られる。つまり行動の類似性や相同性から神経回路の類似性や相同性を予測することは難しい。このようにニューロンの同定と種間比較が容易であるウミウシの遊泳パターン発生回路は,定型的行動の進化を考える上で有用な研究材料である。
  • 高坂 洋史
    2018 年 35 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

    我々ヒトも動物であるので,動物が動くのを見てもそれほど驚きを感じない。しかし,動物の身体の中で起こっていることに目を向けると,動物が動くことはそれほどあたりまえではないことに気が付く。動物は,体全体に配置された筋肉を巧みに制御することで運動する。その運動制御を主に担うのが,多数の神経細胞が複雑につながった中枢神経系である。複雑な神経ネットワークが,いかにして適切な運動制御を実現するのかというのは,全く自明な問いではなく,神経科学における重要な研究課題である。本稿では,神経回路がどのように運動制御を担うかについて,細胞レベルでの解析が進んでいるショウジョウバエ幼虫を用いた研究を紹介する。ショウジョウバエ幼虫は,体軸方向に体節がつながった構造をしており,各体節の筋収縮パターンによって前進,後進,屈曲などを示す。我々の研究グループを含む世界中の研究者により,これらの多様な運動パターンを担う介在神経細胞が明らかにされてきている。この神経回路機構を,他の動物種の運動回路機構と比較することで,運動制御機構の共通性を探る。

  • 吉川 朋子
    2018 年 35 巻 2 号 p. 100-107
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー
    夜行性げっ歯類の活動リズムにおける二振動体モデルは,活動開始をEvening(E)振動体,活動終了をMorning(M)振動体が制御するという仮説である。これら2つの概日振動体は,相互にカップルするが,それぞれ独立に振動する。 哺乳類の活動リズムは,視交叉上核(SCN)の概日時計によって制御されることから,EおよびM 振動体は,いずれもSCN 内に存在すると考えられる。しかし,そのSCN 内での局在は明らかではなかった。我々は,Period1- luciferase マウスを用いたSCNの発光イメージングにより,SCN内での振動体の局在を検討した。その結果,SCN 水平断において,4つの振動体領域を同定した。このうち,SCNの中心部分を取り囲むように存在する領域がE 振動体,尾側端がM 振動体に相当すると考えられた。SCN 中心部には,光反応性の振動体が存在することも確認された。残る1つは,網膜からの神経投射部位である。これまで,SCNは,前額断におけるコアとシェルのように,2領域に分けて考えられることが多かった。筆者らの水平断による研究は,振動体機能という観点からSCNを4領域に分けることに成功した。この成果は,SCNの機能について,さらに理解を深める基礎になると期待できる。
  • 安藤 規泰
    2018 年 35 巻 2 号 p. 108-118
    発行日: 2018/08/01
    公開日: 2018/08/15
    ジャーナル フリー

    飛行は,昆虫を特徴づける行動の1つであるが,飛行の研究は昆虫に限らず,動物一般の運動制御にとって重要な発見をもたらしてきた。運動制御機構の研究のモデルとなる動物には,主にサバクバッタ,ハエ,そしてスズメガが用いられてきたが,なかでもサバクバッタは中枢パターン発生器の発見で有名であり,昆虫飛行の代表的なモデルである。ハエは小さいながらも極めて優れた飛行能力を有しており,それを支える感覚運動系の研究に多く用いられてきた。特にショウジョウバエは,近年の遺伝子工学の進歩により,飛行の神経メカニズムの解明になくてはならない存在である。一方,スズメガは,サバクバッタと並ぶ大型の実験昆虫で,ハエに匹敵する高い運動能力を備えている。そして,形態も内部メカニズムも両実験昆虫の中間的な特徴を有しており,飛行の多様性を知るうえで無視できない存在である。本稿では,このスズメガを中心に,筆者らがこれまで進めてきた自己受容器による感覚フィードバック経路の解析,自由飛行における飛翔筋活動と羽ばたき運動計測,そして飛翔筋活動による胸部外骨格の変形の解析という,互いに密接に関連した研究の概要を紹介する。さらに,他の研究グループから近年報告されたユニークな飛行のメカニズムの話題を合わせて紹介する。最後に昆虫飛行の研究の今後の展望として,統合的な理解を進めるために何をすべきかを議論する。

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