脳には多種多様な細胞が存在し,かつダイナミックに変化する。細胞種多様性や可塑的変化の実現には,適切なタンパク質発現の調節が不可欠である。近年の研究により,特に神経機能には翻訳レベルでの制御が極めて重要であることが明らかになりつつある。ところがその詳細な理解は,転写レベルの遺伝子発現と比較して遅れており,今後の研究課題といえる。本稿では,リボソームのmRNA 上の位置を解析するリボソームプロファイリング法をメインに,神経系において翻訳をゲノムワイドに解析する手法について議論する。また,これらの手法を使った最新の研究事例を紹介し,神経系における翻訳制御メカニズムを議論する。
眼から得た情報を,瞬時に適切な行動へと変換する―このような外界の刺激に対する応答は,多くの動物に共通する基本的な能力である。なかでも,視野全体が流れるように動くオプティックフローは,視線や身体の動きを適切に制御し,視野の安定を維持するうえで重要である。こうした視覚情報に基づく行動制御は脊椎動物に広く保存されており,ゼブラフィッシュ仔魚はその研究に有用なモデルである。オプティックフローはその動きのパターンから回転性と並進性に大別され,それぞれ眼球運動および遊泳運動を引き起こす。これらの視覚情報は網膜神経節細胞によって検出され,視蓋や前視蓋へと伝達される。とりわけ前視蓋は,オプティックフロー依存的な行動を誘導する神経回路において中心的な役割を果たしている。近年,カルシウムイメージングやscRNA-seq解析などの技術革新により,これらの神経回路の理解が急速に進んでいる。本総説では,ゼブラフィッシュにおけるオプティックフロー情報処理に関与する神経回路について概説するとともに,著者らが開発した神経活動依存的な細胞標識とscRNA-seq解析を融合した「CaMPARI-seq」による独自の戦略を紹介する。