弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
55 巻, 1 号
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原著
  • 板橋 幸弘, 馬場 俊明, 栗田 武彰, 加藤 智, 佐々木 睦男
    2003 年 55 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2003年
    公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー
     当院における腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(Laparoscopy-assisted distal gastrectomy;以下,LADG)10例(LADG群)を,開腹による幽門側胃切除術4例(ODG群)を対照とし,根治性および有用性について検討した.郭清リンパ節個数は有意差がなく根治性には問題ないと思われた.LADG群で有意に手術時間が長かったが,術中出血量や,術後の CRP値,鎮痛剤使用回数は LADG群で有意に少なかった.また術後の離床日や経口摂取開始日も LADG群で有意に早く,ODG群と比較して,より低侵襲であることが示唆された.LADG は2002年4月より社会保険診療報酬の対象術式として認められ,手術を受ける患者さんの Quality of life(以下,QOL)をも考慮した手術であり,時代のニーズとなっていくものと思われる.今後も LADG の標準化と適応の拡大に向けてさらなる研鑽をつんでいきたい.
  • 真里谷 靖, 安倍 明, 渡辺 定雄, 甲藤 敬一, 松倉 弘明, 近藤 英宏, 場崎 潔, 青木 昌彦, 阿部 由直
    2003 年 55 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2003年
    公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー
     主に 30 Gy/3分割/3日間の分割による定位放射線治療(SRT)を加えた聴神経腫瘍 19例,20病変の成績を検討した.SRT 後の MRI で2mm 以上平均腫瘍径(MD)が増加,或いは腫瘍による神経症状が発現した場合を非制御とすると,3,5年臨床的腫瘍制御率(CTCR)は,各々 75%(12/16),61%(8/13)であった.合併症は軽度の三叉神経障害を1例で認めた.腫瘍サイズと性状別に成績をみると,MD が中央値未満か solid type の腫瘍では5年 CTCR は各々 100%(7/7),89%(8/9)と良好で,腫瘍は徐々に縮小する傾向を示した.一方 MD が中央値以上ないし cystic type の腫瘍では,5年 CTCR は各々 17%(1/6),0%(0/4)と不良で,縮小はないか一時的で再増大する傾向を示した.しかし救済手術を要したのは 19例中2例に留まった.我々の分割による SRT は,神経系合併症の面では安全だが,比較的大きな或いは cystic な腫瘍の長期制御については,今一度検討の余地があると思われた.
  • 石澤 幸男, 高畑 武功, 古郡 規雄, 斉藤 正人, 佐々木 睦男, 立石 智則
    2003 年 55 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2003年
    公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー
     内因性や外因性物質の酸化代謝を担うチトクロームP450 (CYP) は複数の酵素からなる酵素群であり,その分子種である 2C19 (CYP2C19) は diazepam や omeprazole など多くの薬物の代謝酵素として知られる.生体内CYP2C19活性には遺伝的多型性があり,日本人の酵素活性欠損者は CYP2C19*2 もしくは *3 の変異遺伝子を有する.これまでの青森地域の ABO式血液型の頻度分布や東北地方出身者における CYP2C19PM の頻度を検討した報告では青森県出身者と他地域出身者において CYP2C19PM の頻度や変異遺伝子頻度が異なる可能性を示唆している.そこで今回下北半島の過疎地である川内町在住高齢者の CYP2C19変異遺伝子の頻度を検討し,これまでの日本人の報告と比較した.川内町出身の在住者 108名を対象に CYP2C19変異遺伝子を検索した.今回得られた遺伝子型頻度は homoEM:32.4%,hetEM:51.9%,PM:15.7% および変異遺伝子アリル頻度は *1:58.3%,*2:30.6%,*3:11.1% とこれまでの日本人の報告と有意の差を認めなかった.本研究の結果やこれまでの報告から,日本人においては出身地域による CYP2C19変異遺伝子の頻度や遺伝子型頻度の差異は小さいと考えられた.
症例研究
  • 大黒 浩, 田村 正人, 鎌田 義正, 大黒 幾代, 中澤 満
    2003 年 55 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2003年
    公開日: 2021/11/02
    ジャーナル フリー
    緒言:結膜黒色腫はその多くは50歳以上の患者にみられ,小児期にみられることは非常に稀と考えられている.今回我々は,14歳の少年にみられた結膜悪性黒色腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて紹介する.
    症例:患者は14歳少年,12歳時に右眼球結膜に色素沈着を伴う隆起性病変があることに気づき,最近増大したため精査加療を求めて弘前大学眼科を受診した.腫瘍切除を施行したところ,病理学的検査により腫瘍は悪性黒色腫であることが判明し,直ちに結膜の拡大切除と冷凍凝固術が施行された.2回目の手術後,現在まで再発はみられていない.
    結論:小児期の結膜色素病変は,時に悪性のこともあるので,注意深い経過観察が必要と思われる.また,小児結膜悪性黒色腫において,腫瘍切除と冷凍凝固術の併用は有効な治療手段の一つと考えられる.
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