弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
57 巻, 1 号
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原著
  • 増谷 守彦, 原田 征行
    2005 年 57 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー
     自然発生的に脊髄圧迫病変を生ずる twy マウスの延髄下部と上位頚髄部の経時的な病理組織学的変化と,脊柱靱帯骨化発現に関与する TGF-β と decorin の局在及び骨化発現との関連について明らかにするため免疫組織学的検討を行った.上位頚椎部,延髄部では椎間板と椎体に連続し後方へ突出した骨化病変と後方からの突出性病変により圧迫された部位に一致して白質の変化が明瞭に認められた.圧迫が特に顕著な部位では灰白質にも細胞の萎縮と軽度の脱落を認めた.び慢性の変化は白質,灰白質を問わず,延髄,脊髄全体に認められた.抗TGF-β抗体染色では初期に染色性の高い軟骨細胞が増加していた.抗decorin抗体染色では骨髄腔面,線維軟骨,靱帯部分が陽性に染色され,特に変性して突出した部位では明瞭な陽性像を示した.したがって twy マウスでは椎間板線維輪最外側部を中心に骨化過程が進行することが示唆された.
  • 村田 東, 田中 正則, 楠美 智巳, 工藤 一
    2005 年 57 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2005年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー
     潰瘍性大腸炎 (UC) の大腸には化生性パネート細胞 (MPCs) が出現するが,その意義や健常者小腸に元々存在するパネー卜細胞 (IPCs) との機能的な違いについては不明である.我々は,マトリックスメタロプロテナーゼ—7 (MMP7),リゾチーム,分泌型ホスフォリパーゼ A₂ (sPLA₂),α₁-アンチトリプシン (α₁AT) の4つの酵素に注目して,健常者 (n=20) 回腸の IPCs と全大腸炎型UC患者 (n=20) の MPCs における差異を免疫組織化学的に検討した.MMP7 およびリゾチームを含む細胞内顆粒は MPCs で有意に少なく,特に組織傷害を惹起するとされる MMP7 については MPCs を特徴づける所見であった.一方,sPLA₂ と α₁AT は MPCs と IPCs の両者で差がなく,粘膜修復に関与する sPLA₂ は豊富に認められた.UC粘膜での MPC 数は多くはないが,MPCs は UC の傷害粘膜を修復する役割を担って出現している可能性が示唆された.
  • 橋本 直樹, 鳴海 俊治, 板橋 幸弘, 袴田 健一, 佐々木 睦男
    2005 年 57 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2005年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー
    背景: 以前我々は,単独では免疫寛容を誘導できない少量の骨髄細胞でも,脾細胞 (SPLCs) と混合移入することでキメリズムを誘導できることを明らかにしてきた.今回,非致死的照射レシピエントマウスにドナー末梢血幹細胞 (PBSCs) を静注し,キメリ ズム及びドナー特異的免疫寛容が得られるか検討した.さらに PBSCs に SPLCs を混合して移入し,脾細胞混合の有効性を検討した.
    方法: ドナーBALB/c マウス 10x10⁶ PBSCs を,様々な用量のドナー G-CSF-mobilized SPLCs と混合し,非致死的照射レシピエント C57BL/6 マウスに静注した.3ヶ月後,末梢血及び脾細胞でのキメリズムを FACS で検討した.また混合リンパ球試験及び皮膚移植を施行し,ドナー特異的免疫寛容であるか確認した.
    結果: 10x10⁶ PBSCs を 30 X 10⁶ G-CSF-mobilized SPLCs と混合して移入すると,高いレベルのキメリズムが得られ,それらはドナー特異的であった.
    結論: 脾細胞混合末梢血幹細胞移植はドナー特異的免疫寛容誘導に有効である.脾細胞混合により,免疫寛容誘導に必要な PBSCs を減らすことができる.
  • 大黒 幾代, 大黒 浩, 大黒 博, 中澤 満
    2005 年 57 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2005年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー
    目的: 緑内障患者と緑内障を有さない正常者の視神経乳頭所見の特徴を臨床眼底写真を用いて評価し,両者の鑑別を試みる.
    対象と方法: 対象は緑内障患者 329例および緑内障を有さない正常者 220例の片眼である.眼底写真上で,乳頭径と乳頭黄斑距離との比 (DD/DM比),陥凹乳頭径比 (C/D比),乳頭出血 (DH) および網膜神経線維層欠損 (NFLD) の有無を評価し比較した.
    結果: DD/DM比および C/D比はともに,正常者に比べて緑内障患者で有意に大きかった.両者で DD/DM比の増加に伴う C/D比の増加がみられた.しかし,DD/DM比と C/D比の一次回帰式の傾きは正常者で有意に大きかった.DH と NFLD は緑内障患者でのみみられた.
    結論: 本研究から,乳頭径を考慮した C/D比,DH および NFLD の評価は,緑内障患者と緑内障を有さない正常者を眼底写真上で見分ける簡易法となり得ることが示唆された.
  • 棟方 栄治, 土田 成紀
    2005 年 57 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2005年
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー
     肥満の候補遺伝子であるアンカップリングプロテイン2の第8エクソンの3’末端側の非翻訳領域に存在する遺伝子多型を健康な日本人の成人男性について検討したところ,コーカシア人に報告されている 412bp の deletion型は認めず,457bp の insertion型が主要な遺伝子型であった.457bp の insertion型に 45bp がさらに挿入された 502bp の新しい遺伝子型を見い出した.検索した 18例中 457/457 のホモ接合体が 14例,457/502 のヘテロ接合体が4例であり,502/502 のホモ接合体は観察されなかった.
     上記の 18例について,このアンカップリングプロテイン2の遺伝子多型と体重,体格指数 (BMI),上腕三頭筋と側腹部での皮下脂肪の厚さ,安静時代謝率 (RMR),脂肪率及び脂肪量との関係を検討した.年齢は 27歳から 58歳,体重は 58.2kg から 99.2kg に分布した.Mann-Whitney の U検定により,457/502型の人は 457/457型の人より,体重,上腕三頭筋と側腹部の皮下脂肪の厚さ,脂肪率及び脂肪量が有意に高く,502bp の新規遺伝子型は肥満に関与する可能性が示唆された.
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