弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
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60 巻 , 1-4 号
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原著
  • 秋田 美季, 七島 直樹, 山田 俊幸, 中野 創, 清水 武史, 范 洋, 土田 成紀
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 1-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     弘前ヘアレスラット (HHR) は SDラット (SDR) から自然発生した変異ラットで,常染色体劣性の遺伝形式を示す.我々は最近,HHR では,塩基性へアケラチン遺伝子 Kb21,Kb23,Kb26 と Krt2-25 などを含む7番染色体の末端領域 7q36 が 80-kb にわたって欠失することを明らかにした.HHR の毛包の性質を明らかにするため,毛の性状を調べるとともに,毛包の構造と毛周期を HE染色や免疫組織化学により検討し,SDR と比較した.HHR の体毛は屈曲し,SDR の直線状の毛に比べ短く,皮膚の単位面積当りの毛の本数も少なかった.HHR では,毛包の退行期が早期に始まり,退行期に毛包の構造が完全に破壊され,炎症細胞の浸潤が観察された.HHR では,毛皮質は形成されたが,髄質が拡大し,内毛根鞘は菲薄化し,毛小皮は欠損した.SDR ではへアケラチン Kb25 は,マトリックスと髄質に発現したが,HHR ではこれらで発現せず,皮質で発現した.HHR の毛の異常は,ヘアケラチン遺伝子の欠失と融合遺伝子の発現によると考えられ,HHR は毛包形成におけるへアケラチンの役割を解析するモデルとなることが示唆された.
  • 千葉 貴子, 大森 厚子, 高橋 賢次, 柏倉 幾郎
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 12-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     全ての血球の源となる造血幹細胞を豊富に含む臍帯血は,幹細胞研究,再生医療研究さらには臍帯血移植へとその応用が進み,今や単なる医療廃棄物ではなく,社会の多様な需要の中でその重要性は益々高まっている.本研究では,造血幹細胞の基礎医学研究に資した臍帯血採取を実施した単一助産所における過去10年間の取組みから,助産所の臍帯血採取施設としての可能性の可否を含め,その内容を検討した.研究には,1998年から2007年の単胎正期産児を経膣分娩した585名を対象とした.その結果,助産所出産の母子の概要は,国内における平均的な出産と大差なかった.平均臍帯血採取量は 54.2 g であり,重回帰分析の結果,胎盤重量,胎盤体積,出生体重,羊水混濁及び臍帯の長さと採取臍帯血量との間に関連が見られ,これまでの報告と一致した.以上の結果から,助産所においても安全かつ確実に臍帯血採取が行えることが実証された.
  • 芦立 俊宗, 長内 智宏, 田中 真実, 孫田 浩二, 越前 崇, 富田 泰史, 奥村 謙
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 18-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     最近我々は,Coupling factor 6 (CF6) がプロスタサイクリン産生を抑制することを明らかにした.CF6 はうっ血性心不全 (CHF) の成因に関与する腫瘍壊死因子により血中に放出される.CHF における CF6 の役割を解明するために,CF6過剰発現 (TG) マウスを作製し,表現型を野生型と比較検討した.Human elongation factor-1 promoter/ カルシトニンN末端/ ヒトCF6 からなる DNA断片を C57BL/6J マウス embryo に導入し,ホモ接合体を作製した.CF6 の発現はすべての臓器で,約2倍の亢進を認めた.7週齢における血圧,心拍数,体重,ならびに心臓のエネルギー代謝に2群で差は認めなかった.食塩負荷により血圧,心拍数は2群で差を認めなかったが,TG マウスで死亡率の有意な上昇が認められた.早期死亡の原因を解明するために,心機能を含めた更なる解析が必要と考えられた.
  • 丹羽 英智, 坂井 哲博, 古川 賢一, 金丸 幸太, 廣田 和美
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 27-35
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     我々は中枢神経系におけるケタミンとセボフルランの抗炎症作用を評価するため C6,ラットグリオーマ細胞を用いて cDNAマイクロアレイを行った.培養された C6細胞にケタミン (0-100 μM)及びセボフルラン (0,0.66 mM) 処理をおこなった後,RNA を採取,その RNA をフルオレセンで染色,1936個の遺伝子の乗ったマイクロアレイスライドにハブリダイゼイションさせ,遺伝子発現を観察した.個々の遺伝子発現の定量は更にリアルタイムPCR で確認した.マイクロアレイ解析の結果,ケタミンとセボフルランの抗炎症作用のメカニズムは個々の遺伝子をみると互いに異なっていることが判明した.しかし,両薬剤とも炎症において重要な作用を持つインターロイキン1β を共通して抑制した.以上より,ケタミンとセボフルランの抗炎症作用のメカニズムは厳密には異なるが,大元のインターロイキン1β を抑制することで作用することは共通であることが示唆された.
  • 加藤 千里, 長内 智宏, 渋谷 修司, 花田 賢二, 奥村 謙
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 36-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     Insulin-like growth factor (IGF)-1 は心臓に有益な効果を及ぼす.低酸素刺激により増加する IGF-1 の起源と機能は不明である.生後1~2日齢マウスの心臓から心筋細胞と線維芽細胞を単離培養した.心筋細胞では,IGF-1 mRNA発現は低酸素条件下で3時間後に約 3.5 倍亢進し,それに伴い IGF-binding protein 3,vascular endothelial growth factor-A の発現も亢進した.線維芽細胞の IGF-1 mRNA は低酸素で変化しなかった.心筋細胞では,心筋再生に関連する stromal cell-derived factor-1 mRNA は低酸素条件で3時間後に亢進し,IGF-1 mRNA と相関する傾向が認められた.以上より,低酸素条件下において,心筋細胞では IGF-1 発現が亢進し,心筋保護的に作用する可能性が示唆された.
  • 堀内 大輔, 長内 智宏, 越前 崇, 芦立 俊宗, 加藤 千里, 横山 公章, 花田 賢二, 澁谷 修司, 伊藤 太平, 奥村 謙
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 45-53
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     構造的リモデリングの進展は心房細動や心筋梗塞をさらに悪化させる.以前我々は犬心房細動モデルでアミオダロン (AMD) が構造的リモデリングを抑制することを示した.そのリモデリング抑制機序に AMD のマトリックスメタロプロテイナーゼ (MMP) 抑制作用が関与するかを,ラット心筋梗塞モデルで検証した.Sham群,AMD を投与し sham を作成した Sham+AMD群,プラセボを投与し冠動脈結紮した MI群,および AMD を投与し冠動脈結紮した MI+AMD群に分類し,術後4週目にザイモグラフィーでの MMP-2活性を比較した.投薬は術前2週から術後4週まで継続した.術後4週目の左室内径短縮率は MI群で低下したが,MI+AMD群では低下しなかった.Sham群に比し,MI群の MMP-2 活性は増強していた (P<0.01) が,MI+AMD群では有意差を認めなかった.心筋梗塞モデルで AMD は MMP-2活性を抑制することが示され,心筋梗塞による心機能抑制の改善に関係することが示唆された.
  • 友常 健, 小川 吉司, 長谷川 範幸, 工藤 貴徳, 奈良岡 真紀, 近澤 真司, 玉澤 直樹, 須田 俊宏
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 54-62
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     今回我々は低酸素暴露による膵ランゲルハンス島 (以下膵島) 機能障害の経時変化とその機序を検討した.膵島は SDラットから単離し酸素濃度1% (低酸素) で培養後,インスリン分泌実験 (静置法,灌流法) を施行.ミトコンドリア活性と膵島細胞死も測定した.更に低酸素後24時間 (以下h) 再酸素化し,インスリン分泌実験 (灌流法) で評価した.静置法では,24h 以降で Ins分泌が有意に低下した.灌流法では第1相分泌の AUC が 6h 以降で,第2相は 12h 以降で有意に低下した.ミトコンドリア活性は48時間以降で低下が有意となった.アポトーシスに差は無かったが,ネクローシスが 24h 以降で有意に増加した.再酸素化はインスリン分泌を有意に悪化させた.以上から低酸素暴露はまず機能障害を起こし,その後にアポトーシスよりはむしろネクローシスに影響された細胞死を引き起こすと考えられた.また再酸素化は膵島の機能障害を促進させた.
  • 李 成泰, 小田桐 紗織, 目黒 玲子, 浅野 義哉, 正村 和彦
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 63-76
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     ラット視床下部・神経下垂体系の非ヘム鉄 (Fe (III),Fe (II)) を光学・電子顕微鏡的組織化学で可視化した.室傍核の小細胞部に集積する Fe (III)- 陽性グリアが神経細胞を緊密に囲んでいたが,大細胞部と視索上核では,これらの細胞は少数であった.Fe (III)- 陽性グリアは細胞基質と水解小体 (LS) に強い反応を示した.神経細胞は少数の Fe (III)-陽性LS のみを示した.下垂体後葉の軸索終末とヘリング小体 (HB) および正中隆起外板の終末は少数の Fe (III)- 陽性LS を持っていた.後葉細胞の細胞基質と LS は Fe (III)- 陽性で,終末と HB を緊密に囲んでいた.下垂体後葉と正中隆起外板の毛細血管周囲腔で,Fe (III)- 陽性の食細胞が終末に緊密に接触していた.Fe (II)- 反応は Fe (III)- 陽性細胞の LSのみに見られた.これらの所見を内分泌ニューロンの活動と鉄の処理の観点から検討した.
  • 林 慶充, 石橋 恭之, 津田 英一, 山本 祐司, 塚田 晴彦, 木村 由佳, 藤 哲
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 77-85
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     2次元および3次元動作解析法は動的下肢アライメントの計測に良く用いられている.本研究ではジャンプ着地動作を2次元動作解析法と3次元動作解析法を用いて同時に計測し,2つの方法の関係を調べた.大学バスケットボール選手男女各7名を対象とし,着地動作に続いて最大垂直跳びを行なわせた.ビデオカメラ1台を用いた2次元動作解析法では,接地から最大膝屈曲に達するまでに男女ともに冠状面における下肢外反変化を認めた.同時に計測した3次元動作解析法では,男性よりも女性において有意に大きな膝外反モーメントと膝外反角度を認めた.しかし,2次元動作解析法と3次元動作解析法との間には有意な相関関係は認めなかった.2次元動作解析法は簡便な計測法であるため大規模な調査などに対して有用な調査法である.しかし,2次元動作解析法と3次元動作解析法との違いについて注意を払い用いる必要があると考えられる.
  • 長谷川 一志, 及川 広一, 吉田 一弘, 石坂 浩, 長内 智宏, 元村 成, 奥村 謙
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 86-95
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     高血圧自然発症ラット (SHR) と正常血圧ラット (WKY) のランゲンドルフ灌流心を用いて,慢性高血圧の内皮依存性過分極因子反応におよぼす影響を検討した.ブラジキニンは用量依存性に冠血流量を増加し,その増加は NG-nitro-L-arginine methyl ester とインドメサシンの影響を受けなかった.ブラジキニンによる冠血流量の増加は,SHR が WKY に比して小であった.Tetrabutylammonium (非特異的Ca 活性化Kチャネル阻害薬) はブラジキニンによる冠血流量の増加を両群で阻害した.1-EBIO (Intermediate conductance Ca 活性化Kチャネルアゴニスト) による冠血流量の増加は,SHR が WKY に比して小であった.NS1619 (Large conductance Ca 活性化Kチャネルアゴニスト) による冠血流量の増加は,両群で差はなかった.高血圧早期では,ブラジキニンと 1-EBIO による冠血流量の増加は両群で差はなかった.以上から,SHR の冠動脈微小循環における内皮依存性過分極因子反応は intermediate conductance Ca 活性化Kチャネルの機能異常を介して障害されていることが示唆された.
症例研究
  • 藤田 和歌子, 福田 幾夫, 北川 理映子, 木村 大輔, 山田 芳嗣, 對馬 敬夫
    2009 年 60 巻 1-4 号 p. 96-99
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/08/24
    ジャーナル フリー
     著者らは,まれな食道神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は 41歳の男性.胸部圧迫症状があり,当科に紹介入院となった.胸部画像検査では中縦隔に食道および気管を圧迫する腫瘤を認めた.神経原性腫瘍が疑われ,右開胸による腫瘍摘出術を行った.腫瘍は食道壁に連続しており,摘出標本は 4.5×4.3×3.4 cm 大であった.術中所見および病理組織所見から,食道より発生した schwannoma と診断した.食道神経鞘腫は稀であり,文献検索では 27例しか報告されていない.
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