弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
62 巻 , 1 号
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原著
  • 木村 一之, 松﨑 康司, 北村 英夫, 赤坂 英二郎, 六戸 大樹, 中野 創, 今泉 忠淳, 佐藤 敬, 澤村 大輔
    2011 年 62 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
     Retinoic acid-inducible gene-I (RIG-I) はウイルスの二本鎖RNA を認識し type I interferon (IFN) の産生を誘導する細胞質蛋白である.ヒト表皮細胞では RIG-I は IFN-γ および tumor necrosis factor-α 刺激によって誘導される.今回我々は,表皮への代表的な外的刺激であるウイルス感染と紫外線がヒト表皮細胞での RIG-I発現に与える影響について検討した.擬似的ウイルス感染を生じる polyinosinic-polycytidylic acid を用いてヒト表皮細胞を刺激すると RIG-I の発現増強が認められたが,この発現増強と非刺激時の RIG-I基礎発現量は中波長紫外線 (UVB) 照射によって抑制された.このことより UVB が RIG-I発現抑制を介して皮膚免疫の低下を促し,皮膚におけるウイルス感染やその再活性化の誘導に関与している可能性が示唆された.
  • 長谷部 達也, 梅田 孝, 檀上 和真, 高橋 一平, 松坂 方士, 工藤 淳子, 狭戸尾 真梨子, 斉藤 百合子, 久田 貴義, 辨野 義 ...
    2011 年 62 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
     一般住民 697人 (58 ± 13 歳,男性 261人,女性 436) の腸内細菌叢とメタン産生の関係を調査した.一晩の絶食の後,呼気中メタン濃度と呼気中水素濃度測定,T-RFLP を用いた腸内細菌叢の測定を行った.腸内細菌は遺伝子長ごとに 28 の分類群 (OTUs) に分類した.また呼気中メタン濃度が 10 ppm より大きい者をメタン陽性,呼気中水素濃度が 20 ppmより大きい者を水素陽性とし Both negative, CH₄ only, H₂ only, Both positive と群分けした.CH₄ only 群では Bothnegative 群と H₂ only 群に比べて OTU317 (Prevotella) の比率が有意に高く, OTU940 (Clostridium subcluster XIVa,Enterobacteriales) の比率は有意に低かった.以上より OTU317 と OTU940 はメタン産生に関わっている可能性が考えられた.
  • 花田 賢二, 長内 智宏, 祐川 誉徳, 大矢 史恵, 泉山 圭, 相樂 繁樹, 伊藤 太平, 山本 祐子, 渋谷 修司, 富田 泰史, 奥 ...
    2011 年 62 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
    背景: P38 mitogen-activated protein kinase (MAP kinase) は病的心肥大の形成に重要な役割を持つが,圧負荷肥大心における役割は不明である.そこで,大動脈縮窄術 (TAC) による圧負荷心不全モデルに対して p38 MAP kinase の阻害薬を投与しその効果を検討した.
    方法と結果: TAC6週間後には,マウスの左室中隔壁厚および心筋細胞断面積は増加し,左室短縮率は減少していた.P38 MAP kinase のリン酸化が亢進していた一方で,他の心肥大促進シグナルの発現には変化は見られなかった.次に p38 MAP kinase 阻害薬 SB202190 を TAC 翌日より6週間皮下投与を行った (5 mg/kg/day).左室中隔壁厚および心筋細胞断面積の増大は阻害薬非投与群に比べて軽減し,左室短縮率の低下も軽減した.
    結語: 圧負荷肥大心に対して p38 MAP kinase 阻害薬を投与することにより,左室肥大を軽減し心機能低下を抑制した.圧負荷による心不全において p38 MAP kinase 阻害薬は,心不全の進行に対して保護的な効果を有することが示唆された.
  • 渋谷 修司, 長内 智宏, 大矢 史恵, 相樂 繁樹, 泉山 圭, 山本 祐子, 花田 賢二, 富田 泰史, 奥村 謙
    2011 年 62 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
     冠攣縮は異型狭心症や急性冠症候群の病因に重要な役割を果たしている.ABCC9遺伝子のノックアウトマウスは冠攣縮性狭心症の動物モデルとして報告され,ABCC9 は冠動脈の収縮拡張の調整に関与している可能性がある.今回,我々は日本人の冠攣縮性狭心症患者において,ABCC9遺伝子のコード領域の変異の有無について検討した.9例の患者 (男6例 女3例 平均年齢 51± 13歳) の血液より DNA を抽出し,ABCC9遺伝子のコード領域の遺伝子変異を直接シーケンス法により解析した.その結果,一例でこれまで報告されていない遺伝子変異 (エクソン21領域126番目のG→Aの変異) が検出された.この変異はヘテロであり,アミノ酸置換を伴わなかった (T878Tサイレント変異).他の8例では,ABCC9遺伝子のコード領域で塩基置換は検出されなかった.ABCC9遺伝子の変異は冠攣縮性狭心症の成因に必ずしも関与しないことが示された.
  • 西村 美八, 檀上 和真, 松坂 方士, 津谷 亮佑, 倉内 静香, 古川 照美, 高橋 一平, 梅田 孝, 兼板 佳孝, 大井田 隆, 中 ...
    2011 年 62 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
     睡眠は生活の質 (QOL) における重要な因子であり,包括的な睡眠状況の把握とその改善に向けた対策が求められている.本研究では一般住民を対象とし,睡眠障害と生活習慣の関連について検討した.平成19~21年度岩木健康増進プロジェクトに参加した1,273名を対象とした.自記式アンケートにて生活習慣の聞き取りを行い,ピッツバーグ睡眠質問票 (PSQI) により睡眠障害を判定した.対象者を男女別に分類し,年代を若年群,中年群,高齢群に区分した.PSQI の得点を従属変数とし,BMI,喫煙習慣,飲酒習慣,抑うつの有無を独立変数とした重回帰分析を行った.その結果,男女とも,すべての年代において,睡眠障害とうつとの間に正の相関を示した.以上より,睡眠障害の予防と良好な睡眠習慣の獲得のためには精神的なサポートが重要であり,これにより QOL の改善が可能であることが示唆された.
  • 瀬尾 京子, 梅田 孝, 高橋 一平, 檀上 和真, 松坂 方士, 中路 重之
    2011 年 62 巻 1 号 p. 44-55
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
    【目的】我々は女性アスリートで実施される運動,食事制限がもたらす体脂肪の減少とこれにより誘発される性ホルモン分泌や免疫機能の変化を検討した.
    【方法】対象者は大学女性アスリート51名 (体操選手15名,女子長距離陸上選手17名,女子柔道選手19名) であった.調査項目は,身体組成値,栄養摂取状況,月経状況,血液生化学検査値,血中性ホルモン濃度 (FSH,E2),血清オプソニン化活性 (SOA) であった.
    【結果】最も食事制限が厳しく % fat が最も低かった体操選手で月経異常割合が最も高く,次いで長距離陸上選手,柔道選手となっていた.また,体脂肪率,総エネルギー摂取量と脂質摂取量は SOA と有意な正の相関を示した.
    【結論】脂質摂取を中心とした栄養摂取制限が好中球機能の低下をもたらすとともに,これに付随して生じる体脂肪率の低下もこれを抑制する要因となる可能性が示唆された.
  • 宮澤 眞紀, 小島 尚, 中路 重之
    2011 年 62 巻 1 号 p. 56-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
     合成麻薬 MDMA の designer drug として乱用され,麻薬指定された methylone の行動毒性や依存性について検討した報告はない.そこで,methylone の危害性を明らかにするためにマウスによる行動毒性及び場所嗜好性 (CPP) 試験を行った.さらに,依存性薬物投与時に前脳側坐核に蓄積する ΔFosB を免疫組織学的に検討し,methylone の急性投与時における脳線条体での ΔfosB mRNA 発現量を定量的PCR で確認した.その結果,methylone による運動量及び行動の質的変化は,MDMA よりむしろ methamphethamine に類似していた.さらに methylone では,CPP試験で依存性が確認されただけでなく,組織学的にも報酬系回路の側坐核で ΔFosB のタンパクと mRNA の有意な増加が確認された.以上より,methylone は向精神作用を有する依存性薬物である可能性が示された.
  • 西野 加代子, 高橋 一平, 梅田 孝, 檀上 和真, 松坂 方士, 津谷 亮佑, 中路 重之
    2011 年 62 巻 1 号 p. 72-79
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
     分娩・閉経と動脈硬化の関係を青森県一般住民で疫学的に検討した.対象は平成18~21年度の岩木健康増進プロジェクト健診に参加した成人女性735人であった.生活習慣,生殖歴,血液検査,脈波伝播速度 brachial-ankle PWV (baPWV) を測定した.その結果,非閉経群より閉経群が baPWV,収縮期血圧,LDLコレステロール及び HbA1c が有意に高値であった.分娩回数が多いほど,baPWV,収縮期血圧,HbA1c が高値であった.一方,未産婦では,非閉経群より閉経群が baPWV,LDLコレステロール,HbA1c が高かったが,経産婦ではそれに加え収縮期血圧も高かった.さらに閉経前・後ともに未産婦より経産婦の方が baPWV および収縮期血圧が高かった.また baPWV は喫煙と,収縮期血圧は BMI・喫煙・飲酒と正の相関関係がみられた.以上より,閉経や分娩が各々独立して動脈硬化を促進することが明らかになった.また,若年期からの生活習慣も重要と考えられた.
症例研究
  • 照井 一史, 高畑 武功, 佐藤 淳也, 石黒 敦, 伊東 重豪, 早狩 誠, 西條 康夫
    2011 年 62 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー
     5-FU の Prodrug である S-1 は,日本において,固形腫瘍に広く使われている.著者らは,S-1 とワーファリンを同時に使用することにより, international normalized ratio (INR) の延長を来たした2例を報告する.第1例は,63歳男性.拡張型心筋症でワーファリン 3.5mg 内服しており,進行期胃癌のためドセタキセル+S-1 併用化学療法施行9コース後に左眼の下に血腫が出現した.慎重な INRモニターにも関わらず INR は3.68と延長していた.第2例は68歳の女性.進行期大腸癌で,S-1+塩酸イリノテカン併用化学療法を受けていたが,治療中 INR の延長を来たし, 2回ワーファリンの減量が必要であった.S-1 投与中のINR の不安定さは,ワーファリンの効果増強には複数の機序が関わっていることを示唆する.S-1 とワーファリンの同時使用時には,予期しない抗凝固能の異常を予防するため,頻回の INR の測定が重要であると考えられる.
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