植生史研究
Online ISSN : 2435-9238
Print ISSN : 0915-003X
17 巻 , 2 号
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  • 渡辺 正巳, 古野 毅, 那須 孝悌
    2009 年 17 巻 2 号 p. 45-53
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル オープンアクセス
    三瓶小豆原埋没林は西南日本の島根県に位置し,およそ3500 年前の三瓶山の火山活動によって形成された。三瓶小豆原埋没林において樹種同定と花粉分析を実施して,古植生を明らかにした。30 試料の埋没立木と火山泥流に含まれていた33 試料の埋没流木の樹種同定の結果,9 分類が識別され,三瓶小豆原埋没林の植物相がスギ,ヒノキ,イヌガヤ属,ツブラジイ類似,コナラ属アカガシ亜属,ケヤキ,トチノキ,カツラ属,ムクロジなどからなることが分かった。花粉分析の結果,2 花粉帯4 花粉亜帯を設定した。これらのことから,およそ4500 年前から3500 年前の間に,荒れ地から河畔林を経てスギ林へと植生が変遷したことが分かった。 また本地域は,完新世の花粉分析で今までスギ花粉の高率出現が報告されていない,中国地方中央部に位置する。本地域でおよそ3500 年前頃の埋没スギ林が発見されたことにより,本地域がスギの生育に適した冷涼多雨の気候であったことが分かった。さらに,今回の発見は,中国地方中央部で完新世においてスギ林が発達しにくかった原因について論じる上で,貴重な資料となる。
  • 神谷 千穂, 守田 益宗, 佐々木 俊法, 宮城 豊彦, 須貝 俊彦, 柳田 誠, 古澤 明, 藤原 治
    2009 年 17 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル オープンアクセス
    中期更新世末以降の植生史を明らかにするため,岐阜県瑞浪市大湫盆地で得られたOK4 ボーリングコアの花粉分析を行い,同盆地の既存分析結果(OK1)との対比を行った。OK4 に挟在する5 枚のテフラ層の深度と年代の関係から,深度10 m は約17 万年前(酸素同位体ステージ6)に遡ると推定される。コア上部10 m の分析結果に基づき, OK4-I 帯からOK4-XIV 帯の14 局地花粉帯を設定した。各花粉帯の植生は以下の通りである。I 帯(約167~ 155 ka)とVIII 帯(約64 ~ 56 ka),XI 帯(約30 ~ 26 ka)はマツ科針葉樹林,II・III 帯(約155 ~ 125 ka)とXII 帯(約26 ~ 16 ka)はマツ科とカバノキ属の混交林,V・VI 帯(約115 ~ 90 ka)はスギとコウヤマキの森林,VII 帯(約90 ~ 64 ka)はコウヤマキとマツ科の森林,IX・X 帯(約56 ~ 30 ka)はマツ科と落葉広葉樹の混交林,XIII 帯(約16 ~ 7 ka)はコナラ亜属を主とする落葉広葉樹林,IV 帯(約125 ~ 115 ka)とXIV 帯(約7 ~ 0 ka)はアカガシ亜属を含むマツ科と広葉樹の混交林である。今回の分析結果から,K-Tz の降下は約115 ~ 90 ka のスギとコウヤマキの森林が最も発達した時期の終盤で,K-Tz 降下以降にスギが衰退し,コウヤマキとマツ科の森林からマツ科針葉樹林へと変化したことを読み取ることができた。
  • 大井 信夫, 佐々木 章, 佐々木 尚子
    2009 年 17 巻 2 号 p. 65-74
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル オープンアクセス
    大分県九重町田野地区に広がる低地,千町無田における鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah) 降下頃(7.3 ka) 以降の環境変遷を,ボーリング調査およびボーリング試料の花粉,植物珪酸体,微粒炭分析に基づいて議論する。K-Ah 降下前後,北部は湖が広がり,中央部は浅くなり,南側は干上がっていて土壌が発達する。中央部の花粉分析結果は,K-Ah 降下前から木本花粉でアカガシ亜属とクリ属/シイ属/マテバシイ属が目立ち常緑広葉樹林の存在を示唆する一方で,イネ科や,カヤツリグサ科,ヨモギ属などの草本花粉の産出率が高く,植物珪酸体も多いことから草原が広がっていたことも示す。この傾向は全般に大きな変化はなく現在まで続く。K-Ah 降下後,木本花粉ではクリ属/シイ属/マテバシイ属が減り,アカガシ亜属がもっとも目立つ。珪酸体ではタケ亜科の珪酸体が少なくなり,大量の微粒炭が見られる。その後,T2 火山灰降下前に全域で黒色シルト層が広がるまでは,何層もの砂礫が挟まり,河川活動の影響が大きかった。T2 降下直前にシルト層から土壌層への変化が広い範囲で認められ,千町無田全体で水位が低下し,水域から陸域への変化が起こったと考えられる。土壌層直下からはイネの機動細胞珪酸体が産出し,マツ属花粉が目立つ。土壌層は微粒炭を多く含み,珪酸体も多いがイネの機動細胞珪酸体は一時的に減少する。その後いずれの地点でも再び土壌化しイネの機動細胞珪酸体が再び産出する。花粉では最上部へ向けてマツ属やスギ属花粉が増加し,古代以降の人間活動を示唆する。
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