植生史研究
Online ISSN : 2435-9238
Print ISSN : 0915-003X
20 巻 , 1 号
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  • 堀川 久美子
    2011 年 20 巻 1 号 p. 3-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル オープンアクセス
    日本列島における遺跡出土カゴ類・編物の時空的分布と,素材や編組技法における時期差・地域差を明らかにするため,縄文時代から室町時代における遺跡出土カゴ類の集成を行った。1980(昭和55)年以降に報告された資料の集成を行った結果,123 遺跡,1146 点の遺跡出土カゴ類・編物を確認することができた。素材の地域差については,東北・関東付近にタケ・ササ類のカゴ類が多く,西の方へいくにつれてタケ・ササ類以外の素材(ヒノキ,マタタビ属,イヌビワ属等)が占める割合が多くなる傾向が認められた。また,日本海側においてはタケ・ササ類以外の素材が多く利用される傾向があることを示した。編組技法では,北陸を除き全国的に広義の網代編みが多い傾向がみられた。また,地域ごとに素材に合った編組技法が定着するとともに編組技法に合った素材選択がなされていた可能性を指摘した。タケ類・ワラ類の導入時期については,状況証拠から弥生時代後期であるという仮説がたてられているが,ワラ類については実物の遺物がほとんどなく,画期とよべる時期を特定できなかった。タケ類については,縄文・弥生・古墳~平安時代のカゴ類における素材の割合を示し,古墳時代以降タケ類素材のカゴ類は増加したと考えられるが画期とは言いがたい点を指摘した。また,マダケは13 世紀後半~ 14 世紀にはカゴ類の素材として使用されていたと推測され,モウソウチクはカゴ類の素材として使用された時期を特定することができなかった。
  • 吉田 明弘, 鈴木 三男, 金 憲奭, 大井 信三, 中島 礼, 工藤 雄一郎, 安藤 寿男, 西本 豊弘
    2011 年 20 巻 1 号 p. 27-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル オープンアクセス
    茨城県南部の花室川中流域における地質調査と堆積物の14C 年代測定,花粉分析,木材化石の樹種同定の結果から,この地域における最終氷期の環境変遷と絶滅種のヒメハリゲヤキの古生態的な特徴について考察した。この地域の台地では,約5.0 万年前以前~ 4.3 万年前には最終氷期のなかでも比較的に温暖な気候環境下でカバノキ属やコナラ亜属を主とする冷温帯性落葉樹林が分布し,約3.8 ~ 3.5 万年前には寒冷化に伴って,冷温帯性落葉樹と亜寒帯性針葉樹の混交林となった。その後,約3.5 ~ 1.7 万年前には寒冷な気候となり,森林はマツ属単維管束亜属やトウヒ属を主体とする亜寒帯性針葉樹林へと変化した。一方,緩斜面や河床では,約5.0 ~ 2.4 万年前にはハンノキやヤナギ属の湿地林が形成された。約2.5 万年前以降の谷底では泥炭地が形成され,その上にカヤツリグサ科やヨモギ属などの草原が広がった。この地域では,ヒメハリゲヤキが少なくとも約5.0 ~ 4.3 万年前まで冷温帯の気候環境下で生育し,その後の最終氷期極相期における寒冷化が原因となって絶滅した。当時のヒメハリゲヤキは,地下水位の変動や土壌撹乱の著しい不安定な地形環境に立地していた可能性が高い。
  • 庄田 慎矢, 松谷 暁子, 國木田 大, 渋谷 綾子
    2011 年 20 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2021/06/16
    ジャーナル オープンアクセス
    煮炊きに使用された土器の内面に付着した炭化物の由来を探ることは,先史時代の食用植物の利用形態の復元に重要な役割を果たす。縄文時代の土器付着物に比べ弥生時代の分析事例は極めて少ないため,弥生土器による炊事の研究も活発に行う必要がある。本論では,内面付着炭化物が極めて良好な状態で検出された岡山県上東遺跡の弥生土器内面付着物を,煮炊き痕跡と炭化物の産状の観察に基づいてサンプリングし,①走査型電子顕微鏡による観察,②炭素・窒素安定同位体比の測定,③残存デンプン粒分析の三つの手法によって検討した。その結果,付着物の顕微鏡観察でイネ頴果の果皮の一部である横細胞層が観察されたことから,この付着物は,糠層が残存している状態のイネ頴果と考えられた。また安定同位体比はC4 植物の寄与を示さなかったため,この炭化物がイネ由来であるという見解が傍証された。一方残存デンプン粒分析からは,根茎・球根類を含む他の食物も調理していた可能性が示唆されたが,サンプリングにおける問題から同一土器による調理物か否かの断定はできなかった。解決すべき課題も多く残されたが,本研究で示したような総合的な方法による研究事例を蓄積することで,弥生時代の食用植物利用についての有力な議論の材料が得られることが期待される。
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