北海道畜産草地学会報
Online ISSN : 2434-138X
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2 巻, 1 号
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原著
  • 塚田 夏子, 宿澤 光世, 米田 陽俊, 遠藤 哲代, 杉本 昌仁, 扇 勉
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    黒毛和種去勢肥育牛における繊維摂取量と採食・反芻時間との関係を明らかにするため2つの試験を行った。試験1では肥育前期牛18頭を用いて12、15か月齢に、試験2では肥育中期・後期牛15頭を用いて20、25、28か月齢に飼料摂取量および採食・反芻時間の調査を行った。試験1では12、15か月齢時に濃厚飼料各々5.2、7.8kg、粗飼料3.1、1.5kgを給与した。試験2では粉砕トウモロコシ主体配合飼料(濃厚飼料A)を5.1~5.3kg、トウモロコシサイレージ(CS)を 3.1~5.4kg給与する濃ACS区(6頭)、粉砕玄米主体配合飼料(濃厚飼料B)を4.8~5.1kgCS を3.3~5.7kg給与する濃BCS区(6頭)、濃厚飼料Aを8.5~8.8kg、麦稈を1.0~1.6kgを給与する対照区(3頭)を設けた(いずれも乾物ベース)。試験1の粗飼料由来NDFFNDF)摂取量およびその含量は、濃厚飼料の増給により15か月齢が12か月齢の1/2程度以下となり、反芻時間も短くなった。試験2ではFNDF摂取量およびその含量は、濃ACS区、濃BCS区、対照区各々1.6、1.6、0.7kg/日および17.5、17.2、7.6%、反芻時間は386、436、289 分/日、RVI値は60、62、46分/kgDMと、対照区のFNDF摂取量およびその含量は他区の1/2以下となり、反芻時間の減少とRVI値の低下がみられた。また、FNDF摂取量およびその含量と反芻時間との相関係数は0.49、0.51とやや高かったが、NDF摂取量およびその含量とは0.27、0.28と低かった。これらから、黒毛和種肥育牛ではFNDF摂取量およびその含量が反芻時間およびRVIに大きく影響することが明らかとなった。

  • 宿澤 光世, 塚田 夏子, 米田 陽俊, 遠藤 哲代, 杉本 昌仁, 扇 勉
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    黒毛和種去勢肥育牛におけるデンプン摂取量およびデンプン源の違いと、糞性状との関係を検討するため2つの試験を行った。試験1では肥育前期牛18頭を用いて12、15か月齢時に、試験2では肥育後期牛15頭を用いて25、28 か月齢時に飼料摂取量および糞性状の調査を行った。試験1では12、15か月齢時に濃厚飼料各々5.2、7.8kg、粗飼料3.1、1.5kgを給与した。試験2では粉砕トウモロコシ主体配合飼料(濃厚飼料A)を5.1、5.3kg、トウモロコシサイレージ(CS)を 5.4、4.8kg給与する濃ACS区(6頭)、粉砕玄米主体配合飼料(濃厚飼料B)を4.8、5.1kgCSを5.7、4.9kg給与する濃BCS区(6頭)、濃厚飼料Aを8.5、8.8kg、麦稈を1.6、1.3kg給与する対照区(3頭)を設けた(いずれも乾物ベース)。試験1では乾物摂取量(DMI)中デンプン含量は12、15か月齢で各々28.8、36.8%であったが、糞のデンプン含量およびpHに差はなかった。試験2ではDMI中デンプン含量は濃ACS区、濃BCS区、対照区各々41.3、38.3、38.8%と差は小さかったが、糞のデンプン含量は10.9、14.1、6.8%、糞pHは6.09、5.81、6.31と、糞のデンプン含量が高い濃ACS区および濃BCS区で、糞pHが低い傾向がみられた。また、糞pHは糞のデンプン含量および乾物率と負の有意な相関(各々r = -0.44、-0.47、p<0.01)がみられた。これらから、糞のデンプン含量が高まると、糞pHは低下することが明らかとなり、未消化デンプンが下部消化管に多く流入すると、下部消化管でデンプンが発酵し、糞pHが低下すると推察された。

  • 三谷 朋弘, 上田 宏一郎, 遠藤 哲代, 高橋 誠, 中辻 浩喜, 近藤 誠司
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 51-62
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    本研究では、述べ170頭分の放牧飼養時に行った出納試験結果を用い、放牧草摂取割合と放牧草粗タンパク質(CP)含量の違いが泌乳牛の窒素(N)およびエネルギー利用に及ぼす影響を検討した。データを放牧草摂取割合により2群(LI: < 35%, HI: > 35%)、さらにHI群内で放牧草CP含量により3群(LP: < 15%, MP: 15~18.5%, HP: > 18.5% of DM)に分類し、解析に用いた。総N摂取量および尿中N排泄量は、放牧草摂取割合およびCP含量の増加に伴い増加した。総N摂取量に対する乳中N排泄割合は放牧草摂取割合の増加に伴い上昇し、HI群内では放牧草CP 含量の増加に伴い低下した。可消化エネルギーおよび代謝エネルギー(ME)摂取量はHI群でLI群より高かったが、HI群内では放牧草CP含量の影響はなかった。乳エネルギー生産量はHI群でLI群よりも高かったが、HI群内では放牧草CP含量は影響しなかった。回帰分析の結果、生産に利用可能なME摂取量(ME摂取量-維持に要するME量)の乳生産に対するエネルギー転換効率(回帰式の傾き)は、LI群でHI群より低く、HI群内では放牧草CP含量の増加に伴い減少する傾向にあった。

  • 山本 祐弥, 中村 亮介, 福永 重治, 中村 冨美男
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 63-71
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    胎盤はと畜を伴わずに採取可能な畜産副生物であり、資源効率の観点から積極的に有効利用するべきものである。本研究では胎盤に豊富な成分であるプロテオグリカン(PG) に着目し、その有用性を評価した。胎盤より抽出・単離したPGを、酵素処理により切断グリコサミノグリカン鎖 (切断GAG鎖) とコアタンパク質ペプチド(CPPs) に分解し、各々がラット真皮線維芽細胞に及ぼす影響を培養系で検討した。 両PG分解物の添加は線維芽細胞の増殖を促進し、さらに、コラーゲンおよびPGの培地への分泌と細胞層への蓄積を促進した。細胞層の抗体染色や培地のSDS-PAGE像でも添加効果が視覚的に確認された。切断GAG鎖は I 型コラーゲン、マトリックスメタロプロテアーゼ-13のmRNA発現を、CPPsIII型コラーゲンのmRNA発現を増加させた。これらの結果より、PG分解物は線維芽細胞のECM分解に関わる反応も刺激し得るものの、その増殖およびECM 産生を促進させる作用があり、真皮組織形成に作用することが示唆された。したがって、胎盤由来PG分解物はスキンケア製品などへの応用が期待できる。

  • 相馬 幸作, 金田 厚司, 増子 孝義
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    規格外ニンジン(ニンジン)にフスマを添加したサイレージを調製し、発酵品質を調べた。規格外ニンジンサイレージ(ニンジンサイレージ)はトウモロコシとフスマの代替えとして比較するため、基礎飼料(牧草サイレージとビートパルプ)と混合し、ヒツジ4頭に給与して採食量、消化率、栄養価および養分摂取量を調べた。混合飼料の乾物摂取割合は、対照区が圧扁トウモロコシ11.7%とフスマ11.4%、試験区がニンジンサイレージ24.0%(ニンジン7.6%、フスマ16.4%)であった。ニンジンとニンジンサイレージの乾物含量はそれぞれ10.2%、28.2%であった。ニンジンサイレージの発酵品質は高品質であった。ニンジンの乾物中における粗蛋白質、WSC、デンプンの含量はそれぞれ6.5、41.1および15.3%、フスマを除去したニンジンサイレージのWSC含量は6.8%であった。混合飼料の粗蛋白質、粗脂肪、NFEADFおよびNDF消化率は、すべて両試験区間に有意差がなかった。TDN含量およびTDN摂取量も両試験区間に有意差がなかった。混合飼料を構成する飼料の乾物摂取割合において、ニンジンサイレージ24%は、トウモロコシ11.7%およびフスマ11.4%を代替えできることが示唆された。

  • 林田 まき, 相馬 幸作, 工藤 博史, 東條 圭輔, 池田 慧, 藤森 俊行, 安藤 達彦, 増子 孝義
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    北海道阿寒湖周辺において冬季に生体捕獲した野生雌エゾシカの飼育期間中に出生した子鹿5頭を15~23週齢まで飼育してと畜、解体した。体重、飼料摂取量、枝肉、正肉および部位別の肉重量を測定し、ロース肉の一般成分およびミネラル含量を測定した。子鹿の生時体重および日増体量は3.8~5.8kgおよび83.6~179.1gであり、日増体量は解体時体重の重い個体ほど重かった。枝肉および正肉重量はそれぞれ8.5~15.5 kgおよび5.0~10.9kgであり、枝肉および正肉歩留りは41.9~51.1%および27.1~34.6%であった。部位別の肉重量においては、モモが最も重く(3,222g;46.6%)、次いでカタ(1,330g;19.4%)およびバラ(960g;13.5%)の順であった。ロース肉の粗蛋白質および粗脂肪含量は19.2~2.9%FMおよび0.8~3.2%FMであり、個体差が大きかった。水分および粗灰分含量は71.7~76.4%FMおよび1.1~1.4%FMであった。一方、ミネラル含量においては、ナトリウム、カルシウムおよび鉄において個体差が大きかった。カドミウム、鉛およびモリブデンは検出されなかった。

  • 相馬 幸作, 岩瀬 彩弥加, 兼次 浩司, 小寺 雅則, 伏屋 絢美, 増子 孝義
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    エミューに給与可能で嗜好性が高い飼料を選抜するため、地場産の作物副産物および製造粕類の嗜好性を調べた。供試動物はエミュー成鳥4羽とした。調査方法はカフェテリア方式とし、第1グループはニンジン、キャベツ、ダイコン葉、第2グループはサイレージ調製したニンジン、キャベツ、トウモロコシ、第3グループはトウフ粕、大豆粕、デンプン廃液濃縮物(濃縮物)、第4グループは第1グループと同じ飼料それぞれに乾物給与量の5%相当量の濃縮物を混合した飼料を給与した。採食試験の結果、キャベツ、ダイコン葉、キャベツサイレージ、トウモロコシサイレージ、トウフ粕、大豆粕は乾物給与量を全量採食した。ニンジンおよびニンジンサイレージは乾物採食量がやや劣ったが、細断形状による影響と考えられた。濃縮物は単独給与では採食されなかったが、嗜好性が高い飼料に混合すると全量が採食され、粗蛋白質含量を向上させるのに適した飼料であると考えられた。

  • 内山 知, 上田 宏一郎, 秦 寛, 近藤 誠司
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 93-97
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    多様な林床植生を持つ林間放牧地内で北海道和種馬が採食する10種の林床植物のin vitro消化試験によるDM消化率 (試験1)および二者択一試験による植物の選択採食順位 (試験2)をそれぞれ測定し、林床植物のDM消化率と選択採食順位の関係について検討した。林床植物のDM消化率はフッキソウ、ミツバおよびアキタブキで70%と高く、ミヤコザサ、ミズヒキおよびスゲで40%程度と低かった。植物の選択採食順位はミヤコザサ、ミゾソバおよびスゲで高く、ヨブスマソウおよびフッキソウで低かった。同様の成分を持つ一部の植物種間においてはDM消化率と選択採食順位に正の相関が伺えたが、植物全体では負の相関が認められた。2次代謝産物を含む性質が大きく異なる林床植物間で選択順位を比較した場合、DM消化率の違いは選択採食において大きな要因でないことが示唆された。

  • 松谷 陽介, 高橋 良平, 河合 正人
    原稿種別: 原著
    2014 年 2 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    ダチョウは粗飼料利用性が高い鳥類とされているが、粗飼料の自由採食量やその栄養価は明らかにされていない。本研究では、イネ科生牧草(生草)、乾草およびサイレージをダチョウに給与し、自由採食量および消化率を配合飼料給与時と比較した。ダチョウによる生草、乾草およびサイレージの自由採食量は乾物で0.5~0.6kg/日と同程度であり、体重の0.5~0.8%と配合飼料と比べて少なかった(P<0.05)。NDF消化率はサイレージ給与時で46%と生草(65%)および乾草(62%)給与時より低かったが(P<0.05)、生草および乾草の値は鳥類としては非常に高いものと考えられる。 TDN含量は生草、乾草およびサイレージでそれぞれ68.3, 56.8, 51.9%DMであり、イネ科牧草のダチョウに対する栄養価は同じ後腸発酵動物であるウマに匹敵する値であった。一方、イネ科牧草給与時においては、採食量の不足から体重を維持することができなかったため、より有効利用するためには飼料の消化管内の滞留や微細化といった動態についても今後検討する必要があると考えられる。

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