北海道畜産草地学会報
Online ISSN : 2434-138X
Print ISSN : 2187-5391
3 巻, 1 号
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原著
  • 泉 賢一, 長澤 好美
    原稿種別: 原著
    2015 年 3 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    40頭の泌乳牛を用い、混合飼料(TMR)の給与時刻と給与回数が日内行動、乳生産およびルーメン内pHに及ぼす影響について検討した。フリーストール・ミルキングパーラー飼養下の泌乳牛を20頭ずつ2群に分け二つの試験を実施した。試験1では給与時刻について検討するため、朝夕の搾乳時刻(5時30分および16時)に合わせて6時と16時にTMRを給与した6h+16h区と、午前給与を10時とした10h+16h区を設けた。試験2では給与回数を検討するために、1日1回10時給与とした1回区、1日2回10時と16時に給与を行う2回区を設けた。乳量、乳成分は試験1の乳中尿素態窒素濃度を除き、処理による差はみられなかった。試験1において、採食時間は10h+16h区が有意に長かった(P < 0.05)。牛群の採食行動パターンでは、6h+16h区が両搾乳後に採食ピークが現れたのに対し、10h+16h区では両搾乳後と10時給与時の3回のピークが認められた。試験2では、採食時間は1回区で長くなる傾向を示し(P < 0.10)、牛群の採食パターンは処理間で大差なかった。ルーメン内pHは2回区が有意に低かった(P < 0.05)。以上から、TMR1回給与であっても乳牛の生産性に悪影響はなく、給与時刻を搾乳とずらすことで採食行動が分散することが示された。

  • 泉 賢一, 石塚 研太
    原稿種別: 原著
    2015 年 3 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    副産物等由来の非粗飼料繊維源の多給が泌乳牛の乳生産、咀嚼活動およびルーメンマット(RM)性状に及ぼす影響について、4頭のルーメンカニューレ装着泌乳牛を用いて検討した。慣行飼料を対照区、濃厚飼料全量と牧草サイレージの一部を副産物で代替した飼料を試験区とした。対照区の粗飼料と濃厚飼料の給与割合および試験区の粗飼料と副産物の給与割合は、それぞれ60.4:38.9および53.3:45.4であった。DM採食量に差はなく、NDF採食量は試験区で多かった。NDF採食量あたりの採食時間および反芻時間は試験区で短い傾向を示し、DMおよびNDF採食量当たりの総咀嚼時間は試験区で有意に短かった。乳中尿素態窒素濃度が試験区で低かった以外は、乳生産成績に処理間差はなかった。RMの堅さは給与2時間後を除き両区で差はなかった。1.18mm以下のルーメン内小飼料片割合が試験区で高かった。ルーメン内pHおよびVFAモル濃度に差はなかったが、ルーメン内アンモニア態窒素濃度は試験区で低かった。以上の結果から、副産物由来の非粗飼料繊維源の多給は、同時に粗飼料給与割合が低下しても、RMの物理的構造を軟弱化せずルーメン環境や乳生産にも悪影響を及ばさないことが示された。

  • 森田 茂, 中屋 まりな, 干場 信司
    原稿種別: 原著
    2015 年 3 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    給与飼料の存在位置は、乳牛の採食行動とともに変化する。この残存飼料形状に関して、飼槽構造や飼料給与方法の異なる酪農場における調査は行なわれていない。本試験では、飼料形状変化の様相について、計測が容易な複数の指標を用い、表現を試みた。調査は、放し飼い牛舎にて乳牛を飼養している5戸の農場にて行った。飼料形状は、最遠飼料端距離(LER: the length of the edge of ration)、最大飼料高距離(LTR: the length of the top of ration)および最大飼料高(HTR: the height of the top of ration)を指標に用いた。給与直後のLERは、85~120cmの範囲内にあった。いずれの農場でも乳牛採食に伴いLERは延長し、餌寄せ作業に伴いLERは減少した。LERは、餌寄せ作業の状況や施設施工に伴う残存飼料位置の把握、および自動餌寄せ機の評価に有効な指標となった。一方で、農場ごとの飼料給与後のLTRやHTRの変化は、飼料形状の二峰化に伴い複雑に変化した。採食可能範囲内における飼料の量的把握を、これらの指標から行なうのは困難であると考えた。

  • Bo Min, 正木 智之, 永野 昌志, 栁川 洋二郎, 三谷 朋弘, 上田 宏一郎, 近藤 誠司
    原稿種別: 原著
    2015 年 3 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    16頭のホルスタイン種乳牛を分娩後2グループにわけ、4kg原物/日の蒸煮圧片コーン(C区)もしくはビートパルプ(BP区)を給与する2つの飼料処理のいずれかにランダムに配置した。供試験牛には処理飼料のほかに、乳牛用配合飼料(4kg原物/日)、大豆粕(2kg原物/日)、イネ科乾草(2kg原物/日)およびコーンサイレージ(自由採食)を給与した。分娩後60日まで、乾物摂取量、全消化管エネルギー消化率、乳量、乳成分、血液成分濃度(グルコース、遊離脂肪酸、尿素態窒素およびインスリン)、反芻胃内発酵産物濃度、超音波画像診断による卵巣の卵胞の数とサイズを測定した。乾物摂取量はC区に比べてBP区で有意に高い値を示した。また、エネルギー消化率についてもC区に比べてBP 区で高い傾向を示した。代謝エネルギー(ME)摂取量は、C区に比べてBP区で有意に高い値を示した。ME摂取量からME要求量を差し引いたエネルギーバランスは、分娩後週数と飼料処理との交互作用の傾向が認められ、いずれの区ともに分娩後3週目までは負の値であったが、分娩後4~6週目ではC区は負の値であるのに対しBP区では正の値を示した。反芻胃内の総揮発性脂肪酸中の酢酸モル比はC区がBP区より有意に低く、プロピオン酸モル比はC区がBP区よりも有意に高い値を示した。血中インスリン濃度は両区間に差はなかったが、グルコース濃度はC区がBP区より高い傾向を示した。血液中遊離脂肪酸濃度は、いずれの区ともに分娩後週数の経過にともない減少したが、区間の差および分娩後週数と飼料処理の交互作用は認められなかった。分娩後60日までに、両処理ともに8頭中6頭が排卵した。このうち、C区では6頭が2回排卵したが、BP区では1頭のみが2回排卵した。初回排卵までの日数は、C区はBP区に比べ有意に短かった。

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