北海道畜産草地学会報
Online ISSN : 2434-138X
Print ISSN : 2187-5391
5 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 前田 尚之, 岩﨑 智仁, 石下 真人
    原稿種別: 原著
    2017 年 5 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    ブタ骨格筋の部位の違いによるミオシンの加熱ゲル形成能の特性を明らかにすることを目的として、腰最長筋(M. longissimus lumborum、LL)、半膜様筋(M. semimembranosus、SM)、大腰筋(M. psoas major、PM)および横隔膜脚筋(DiaphragmPars muscularis、DM)ミオシンの加熱ゲル形成能ならびにそれらに及ぼすLLとDMアクチンの影響を調査した。いずれの部位のブタミオシンの加熱ゲル形成能はpH 5.7付近で最大となったが、剛性率の最大値は筋肉の部位によって大きく異なっていた。また、LLアクチンの添加はDM以外のミオシンの加熱ゲル強度を高めたが、DMアクチンにはこのような効果は認められなかった。いずれのアクチンもミオシンと相互作用していることは光散乱によって確認された。部位の違いでミオシンの加熱ゲル形成能、さらにこれに及ぼすアクチンの影響が異なることが明らかとなった。

  • 長谷川 靖洋, 能代谷 和正, 岩崎 智仁, 山本 克博
    原稿種別: 原著
    2017 年 5 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    ニワトリ胸肉から調製した筋原線維および肉パティを用いて、トレハロース添加と加圧処理の併用が筋原線維の可溶化と加熱ゲルの物性に及ぼす影響について調査した。筋原線維懸濁液(0.1–0.2 M NaCl, pH 6.0 あるいは7.0)に0.1–0.5 M トレハロースを添加して、室温にて所定の加圧処理(100,200,300 MPa)を15分間行った。無加圧では、トレハロース濃度に依存した溶解性の変化はなかった。加圧処理試料ではNaCl、トレハロース濃度、pHおよび圧力強度に依存した筋原線維の溶解性の増大が見られ、0.2 M NaCl, 0.5 M トレハロース、pH 7.0、並びに300 MPa の加圧処理で最も高い溶解性を示した。SDS-PAGE解析より,筋原線維の溶解性増加は太いフィラメントの脱重合が主要因であることが示唆された。0.2 M NaCl(pH 6.0)に懸濁した筋原線維では、トレハロースを添加して加熱前に加圧処理すると加熱ゲルの強度が高くなった。肉パティの加熱ゲルにおいて、200 MPaでの加圧処理およびトレハロースの添加を併用すると、最も高いゲル強度を示した。以上の結果から、ソーセージタイプの食肉製品を製造する際にトレハロース添加および200 MPaでの加圧処理を併用すると、良好な物性の加熱ゲルが得られることが示唆された。

  • 國重 享子, 山田 渥, 菅原 玲, 宮崎 亜希子
    原稿種別: 原著
    2017 年 5 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    褐藻類の海藻には、フコイダンやω-3関連脂肪酸等の機能性成分が含まれていることが知られている。アイヌワカメにも含まれていることから、これらを給与することにより機能性成分の卵黄中への移行や鶏の自然免疫機能の向上が期待できる。そこで、採卵鶏雌に熱水で脱塩処理後乾燥したアイヌワカメ粉末を5%添加した飼料を30日間給与した。

    アイヌワカメ粉末を5%添加した区(5%区)における、血液のマクロファージ走化性の変化量は有意に高かった

    (P<0.05)。しかし、卵黄中のω-3関連脂肪酸量、フコステロール量、コレステロール量は処理間に有意な差はなかった。

    以上より、アイヌワカメ粉末を5%添加した飼料を給与することより、採卵鶏の自然免疫機能の向上が示唆されたが、卵黄中への機能性成分の移行は認められなかった。

  • 國重 享子, 山田 渥, 菅原 玲, 宮崎亜希子
    原稿種別: 原著
    2017 年 5 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    前報では、アイヌワカメ粉末を5%添加した飼料を給与することより、採卵鶏の自然免疫機能は向上したが、卵黄中への機能性成分の移行は確認できなかった。そこで、アイヌワカメ抽出物を添加した飼料を給与し、自然免疫機能へ及ぼす影響や機能性成分の卵黄への移行について検討した。

    アイヌワカメ抽出物を3%添加した飼料を給与した区(3%区)は、偽好酸球の貪食能の変化量、マクロファージ走化性の変化量ともにビタミンEを0.003%添加した区(VE区)や対照区より有意に高かった(P<0.05)。

    卵黄中のω-3脂肪酸量は、3%区が1,435mg/100gであり、VE区の689mg/100g、対照区の651mg/100gより有意に高かった(P<0.01)。フコステロール量は、3%区では20mg/100g含まれていたが、VE区や対照区では検出されなかった。

    以上より、アイヌワカメ抽出物を3%添加することにより、採卵鶏の自然免疫機能の向上が示唆され、ω-3脂肪酸やフコステロールは添加濃度を高めることにより卵黄中への移行が明らかとなった。

  • Tony AIOLUPO, Sina TAULEALO, Mitsuo SEKIKAWA, Kyu-Ho HAN, Michihiro FU ...
    原稿種別: 原著
    2017 年 5 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2017/03/24
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    サモア共和国に国内と畜場がなく、農家の軒先でと畜をしていた2010年3月~2011年4月にかけて、国内の食肉衛生の状況を把握するために、国内産の牛枝肉(n=180)および小売りの牛肉(n=18)、さらに輸入肉(n=20)を試料とした。日本より一般生菌数(TVC)と大腸菌・大腸菌群用(E.coli, coliform)の3 M ペトリフィルムおよび拭き取りキット、滅菌希釈水やディスポザブルスポイトを持ち込んで、現地の協力を得て検査を実施した。枝肉の拭取り部位は、チャックとランプの2か所とした。検査した牛枝肉、小売の牛肉および輸入肉の大腸菌群は菌数の平均値が2 log CFU/cm2以上であった。これはオーストラリア、ニュージーランドやUSDAの基準では詳細な検査が必要なレベルであった。一方、一般生菌数の結果ではEU の基準に当てはめると、牛肉の32%が5 log CFU/cm2以上の不適合なレベルの菌数となった。また、現地スーパーで販売されている小売りの牛肉および輸入肉においても大腸菌群が2 log CFU/cm2以上であった。得られた結果より検査実施時のサモアの食肉衛生状況は非常に悪い結果となり、早急に衛生的な食肉処理場(と畜場)を設立し、食肉衛生の環境改善が必要であると示唆された。

feedback
Top