北海道畜産草地学会報
Online ISSN : 2434-138X
Print ISSN : 2187-5391
7 巻, 1 号
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原著
  • 鈴木 惇文, 木村 康二, 唄 花子, 川原 学, 高橋 昌志
    原稿種別: 原著
    2019 年 7 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2019/03/22
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    インターフェロン-τ(IFN-τ:195 aa)は反芻動物特異的に分泌される分子であり、妊娠認識及び妊娠の成立に重要な役割を持っている。IFN-τの研究には組換え体が用いられている。しかし、組換え体は作製、入手の難しさや様々な法律による生体投与への使用制限のため、生体研究の妨げとなっている。そこで、本研究では組換え体に変わるIFN-τ構成ペプチドを化学合成し、活性リガンド部位の探索並びに、効果の評価検証を目的とした。IFN-τのアミノ酸配列や立体構造を考慮し、11種のペプチド(長鎖:27-28 aa, 短鎖:7-17 aa)を化学合成した。先ず、ペプチドを培養子宮内膜間質細胞に添加し、インターフェロン刺激遺伝子(ISGs)の遺伝子発現量を測定することでIFN-τ活性の有無を評価した。次に、組換えIFN-τとペプチドを同時に添加することでペプチドとIFN-τの競合を評価した。組換えIFN-τの添加によってISGsの発現量の増加がみられたが、合成ペプチドの添加による増加はみられなかった。また、組換えIFN-τとペプチドの同時添加によるISGsの抑制もみられなかった。そのため、今回合成したペプチドは活性リガンド領域を有していない、もしくは立体構造が変化したため、受容体への結合能を十分に有していないことが示唆された。

  • 大久保 倫子, 原 光輝, 宮城 優一, 増子 孝義, 相馬 幸作
    原稿種別: 原著
    2019 年 7 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2019/03/22
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    デンプン粕とフスマの混合サイレージ、デンプン粕のみの個別サイレージを調製して、試験1:両サイレージの発酵品質、試験2:両サイレージの好気的安定性、試験3:基礎飼料に混合サイレージを配合した混合飼料の消化率および栄養価を調べた。両サイレージには乳酸菌製剤の無添加(混合NPS、個別NPS)と、添加( 混合LPS、個別LPS)処理を設けた。試験2では個別サイレージにフスマ(W)を混和した個別NPS+Wと個別LPS+Wの処理を設けた。試験1:混合サイレージの発酵品質は個別サイレージより低かったものの、Vスコアは90点台の高判定であった。個別サイレージは冬期間に凍結したが、混合サイレージは凍結しなかった。試験2:混合サイレージの好気的安定性は、個別NPS+Wと個別LPS+Wより高く、乳酸菌製剤の添加によりさらに高くなった。試験3:乾物摂取量が少なく、粗蛋白質含量が8%台、TDN含量が55%台において、混合サイレージはフスマと圧片トウモロコシの代替として摂取させると、同等の消化率および栄養価であることが示唆された。

  • 大久保 倫子, 志水 宏明, 関沢 卓也, 土田 好起, 富田 勝将, 花田 正明, 増子 孝義, 相馬 幸作
    原稿種別: 原著
    2019 年 7 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2019/03/22
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    生体捕獲したエゾシカの短期飼育を行っている知床ファームにおいて、放牧している飼育ジカの乾物摂取量(DMI)および粗蛋白質摂取量(CPI)の季節推移を調査した。6月から11月まで計9回、刈り取り前後差法によって放牧草の摂取量を測定した。補助飼料のビートパルプとデンプン粕のDMIとCPIも測定した。調査開始時の飼育ジカは140頭であり、順次出荷し調査終了時は80頭であった。放牧草の乾物(DM)含量は22.2-29.7%FMであり、9月以降高くなった。粗蛋白質(CP)含量は6月と10月が21%DM台であり、8月にピーク(25.1%DM)に達した。放牧草のDMIとCPIに季節変動がみられ、DMIとCPIは8月と10月に増加した。補助飼料と放牧草合計のDMIとCPIは8月と10月で高く、養分要求量を満たした。特に、8月と10月のCP充足率は放牧草のみで90%を超えたことから、補助飼料のCPIは過剰であり、補助飼料のCP含量の低い安価な飼料への変更が可能であった。

  • 島田 謙一郎, 三原 新, 宇佐川 淳子, 韓 圭鎬, 福島 道広, 関川 三男
    原稿種別: 原著
    2019 年 7 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2019/03/22
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    牛心筋を骨格筋と同様に低温下における熟成を行い、牛心筋が熟成に伴い軟化するのか否かを物性および筋原線維構造の両面から検討した。剪断値および貯蔵弾性率の結果より、と畜後6~12時間の間に最も硬くなり、その後しだいに軟らかくなり、熟成1日目にはと畜直後付近まで軟らかくなり、それ以降は変化しなかった。と畜6時間後のサルコメア長は1.69μmまで短縮しており、と畜24時間後には1.87μmまでサルコメア長は復元していた。物性およびサルコメア長の結果から牛心筋はと畜6時間~12時間くらいに死後硬直が最大に達して、その後、アクチンとミオシンの硬直結合の解除によりサルコメア長の復元および剪断値の低下が起きたと推察された。また、筋原線維の小片化率は、と畜2日目で最大になったが、数値はそれ程高くなかった。筋原線維タンパク質の分解の程度を調べるためにSDS-PAGEによる解析でも主要な筋原線維タンパク質の分解は認められなかった。さらに抗トロポニンTモノクロナール抗体によるウェスタンブロッティング法による解析でも分解は認められなかった。以上の結果から牛心筋はと畜後に死後硬直を起こし、硬直結合の解除に伴い軟化することが明確となった。しかし、軟化の度合いはそれほど大きくなく、その変化は骨格筋と異なることが明らかとなった。

  • 村西 由紀, 梅田 憲吾, 齋藤 永二, 林田 空, 永田 龍次, 稲森 潤平, 平田 浩, 茅野 光範, 岡田 秀紀, 韓 圭鎬, 福島 ...
    原稿種別: 原著
    2019 年 7 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2019/03/22
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    本研究では、肥育期の去勢ブタに植物エキス発酵液製造副産物 (FPEB) を飲水給与し、発育・産肉性、肉質、筋肉・脂肪組織における脂肪酸組成について分析した。また脂肪中の悪臭物質 (インドール, スカトール) 濃度を測定し、糞便中の腸内細菌叢の関係を調べた。肥育豚の増体成績および大部分の肉質項目でFPEB給与区と対照区間に差は見られなかった。しかし、脂肪組織の脂肪酸組成では、すべての脂肪組織においてリノール酸が対照区に比べてFPEB給与区で有意に低い値を示し(皮下脂肪: P <0.01, 筋間脂肪: P <0.01, 筋肉内脂肪: P <0.05) 、オレイン酸は筋間および筋肉内脂肪で対照区に比べて有意に高い値を示した(筋間脂肪: P <0.01, 筋肉内脂肪: P <0.01)。またFPEB区の皮下脂肪において、インドールおよびスカトール濃度は有意に低下した(インドール:P <0.05,スカトール:P <0.01)。さらにFPEB給与によりBacteroidetes門の増加およびFirmicutes門の減少する傾向がみられた。以上のことから、FPEBは養豚のエコフィードの原料として活用でき、肉質改善に有効なプレバイオティクス効果を含む資源循環物質の可能性が示唆された。

  • 齋藤 克幸, 高坂 泰地, 倉科 妙香, 山中 将彦, 林 英明, 山田 未知, 小糸 健太郎, 中辻 浩喜
    原稿種別: 原著
    2019 年 7 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2019/03/22
    公開日: 2019/10/17
    ジャーナル フリー

    単飼房飼養時において、屋内・屋外パドックを行き来できるグループ、あるいは屋内パドックのみで飼養されているグループの中ヨークシャー種妊娠豚を分娩房へ移動した後の行動やストレス指標物質コルチゾール濃度に及ぼす影響について検討した。妊娠末期(交配後95日目)の中ヨークシャー種妊娠豚延べ7頭を用いて、単飼房で飼養した10日間のうち任意の5日間と分娩房へ移動後10日間、行動調査を行った。また、単飼房および分娩房それぞれ10日間の唾液および同期間に伸びた被毛中のコルチゾール濃度を測定した。分娩房へ移動後の行動は、1日目の横臥発現割合が最も高く、立位発現割合が最も低い値を示した。両行動とも移動後1日目と単飼房飼養時、移動後3日目、6日目、8日目、9日目、10日目との間に有意な差がみられ(P<0.05)、横臥行動ではこれらに加え、4日目との間にも有意な差が見られた(P<0.05)。分娩房へ移動直後の唾液中コルチゾール濃度は、それ以後の値、および単飼房飼養時の値に比べ有意に高い値を示した(P<0.05)。被毛中コルチゾール濃度は単飼房飼養時に比べ分娩房飼養時で有意に高い値であったP<0.05)。

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