北海道畜産草地学会報
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総説
原著
  • 足利 和紀
    原稿種別: 原著
    2022 年 10 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    チモシーにおけるリードカナリーグラス(RCG)に対する競合力に及ぼすRCGとのアレロパシーに関するチモシーの抵抗性と潜在的アレロパシー活性(PAA)の影響を評価するため、チモシー10品種系統とRCG(品種「パラトン」)を用いてagar-based methodと圃場試験を実施した。その結果、競合条件でのチモシー3 か年合計乾物収量に対するチモシー地上部長の抵抗性の寄与率は40.0%、また競合条件でのRCG3か年合計乾物重量に対するRCG地上部長へのPAAの寄与率は58.7%、競合条件での裸地進出RCG3年目合計乾物重量に対するRCG根長へのPAAの寄与率は84.7%を示した。アレロパシーに関する上記3形質は、チモシーまたはRCGの合計収量または重量で群別した正準判別分析でも選択され、有意な判別関数が得られた。以上より、競合力に及ぼすアレロパシーの影響は大きく、育種改良の可能性が示された。

  • 島田 謙一郎, 宇佐川 淳子, 今野 宗, 韓 圭鎬, 福島 道広, 関川 三男
    原稿種別: 原著
    2022 年 10 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    北海道ではエゾシカを農林業へ被害を与える害獣として処理するだけでなく,エゾシカを食肉として利用する試みが進んで,北海道では精肉が流通するようになっている。しかし,エゾシカ肉の熟成に関する情報はあまり知られていない。そこで, 3〜5才齢のと殺した雄エゾシカ3頭から半腱様筋を採取し,4℃で貯蔵した。pH,剪断値,筋原線維の小片化率,筋原線維タンパク質の変化を調べた。pHはと殺12時間後に最も低い5.65を示した。剪断値はと殺1日目で1.45 kg/cm2からと殺5日目で0.82 kg/cm2まで低下し,それ以降はと殺21日目まで僅かに低下し0.69 kg/cm2となった。筋原線維の小片化率は,と殺直後は0.14を示し,と殺10日目で0.63まで増加し,それ以降はと殺21日目まで横ばいに推移した。筋原線維タンパク質の分解の程度を調べるため,2%均一ゲルによる解析では,と殺10日目でα-コネクチン(タイチン-1)のバンドが完全に消失し,β-コネクチン(タイチン-2)のみのバンドとなった。12.5%均一ゲルでは30 kDa成分と思われるバンドがと殺7日目で明確となり,と殺日数に伴い染色強度が増した。抗トロポニンT抗体を用いたウェスタンブロッティング法ではと殺10日目でトロポニンTの陽性バンドが殆ど消失し,トロポニンTの分解産物と思われる30 kDa付近のバンドが幾つか見られた。そのバンドのうち最も染色強度の強い陽性バンドはと殺10日目と14日目であった。抗デスミン抗体によるウェスタンブロッティング法ではデスミンの陽性バンドはと殺日数に伴い染色強度が弱くなり,デスミンの分解産物と思われる38 kDa断片はと殺10日目に明確に出現した。電気泳動の染色像で30 kDaと思われるバンドの染色強度からアクチンの染色強度で補正した染色強度のグラフではと殺10日目で最大となった。以上の結果から,エゾシカ肉はと殺12時間後に極限pHに達し,剪断値ではと殺5日目以降で最低値を示し,筋原線維の小片化率ではと殺10日目で最大となり,主な筋原線維タンパク質の分解はと殺7日目から14日目の間で起こるため,十分な軟らかさを得るための熟成期間はと殺7〜10日間であると結論した。

  • 山根 慧悟, 佐々木 真彩, 金 翔宇, 小出 明里, 米田 英里奈, 近藤 大輔, 渡部 浩之, 佐々木 基樹, 村西 由紀
    原稿種別: 原著
    2022 年 10 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    ハンガリー原産のマンガリッツァは、希少な在来豚で、保護と増産が求められているが、その繁殖に関する報告はほとんどない。本研究は、マンガリッツァの14日齢の精巣ならびに精巣上体の組織学的評価および遺伝子発現解析を行い、商業品種(ケンボロー)と比較した。精巣の組織学的評価では、生殖細胞の発達ステージがゴノサイトから精原幹細胞への移行期であることが確認された。マンガリッツァは、ケンボローより精細管全長が短く(P < 0.05)、精巣あたりのセルトリ細胞数が少ない結果を示した(P < 0.05)。また、遺伝子発現解析から、マンガリッツァはケンボローと比較して、精巣発達に重要な転写因子であるSOX9の発現が高い傾向がみられた。本研究の結果から、マンガリッツァの春機発動期や精巣発達が商業品種とは異なることが明らかとなり、マンガリッツァの特性に適した繁殖管理が必要であると考察した。

  • 金 翔宇, 谷口 航輝, 佐々木 真彩, 山根 慧悟, 髙谷 龍馬, 小出 明里, 米田 英里奈, 萩谷 功一, 佐々木 基樹, 村西 由紀
    原稿種別: 原著
    2022 年 10 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    ハンガリー原産のマンガリッツァは、品種の特徴として厚い脂肪を蓄積することが知られている。しかし、その脂肪発達に関する情報は国内外にほとんどない。本研究は、マンガリッツァの脂肪組織の組織学的評価ならびに遺伝子発現について商業用品種(三元交雑種およびケンボロー)と比較し、脂肪発達と蓄積過程を調査した。脂肪厚測定結果から、マンガリッツァの背脂肪は出生後から商業用品種よりも厚く、両品種間の脂肪蓄積は異なることを示した。8ヶ月齢のマンガリッツァの背部脂肪細胞面積は、商業用品種よりも大きかった(P < 0.05)。脂肪細胞特異的な代謝機能に関する遺伝子(HSLFASNaP2)は、商業用品種と比較し、マンガリッツァの脂肪において有意な減少を示した。一方で、脂肪前駆細胞マーカーであるKLF4の発現が増加した。したがって、マンガリッツァの脂肪細胞における遺伝子発現動態は商業用品種と異なる可能性が示唆された。

  • 鈴木 克弥, 山中 格, 岸 大輔, 口田 圭吾, 萩谷 功一
    原稿種別: 原著
    2022 年 10 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    十勝地方を中心とした黒毛和種繁殖雌牛の体型測定値に影響を与える要因を調査するとともに、約40年間にわたるそれらの年次的推移を調査した。データは1973年(登録得点は2012年)から2020年の間に基本・本原登録を受けた81,528頭の繁殖雌牛の体型測定記録である。分析対象は登録得点、体高、胸囲、胸深、尻長、およびかん幅の6形質である。これらの測定部位に影響を与える要因として、登録年月、審査月齢、飼養農家および審査委員を考慮し、最小2乗分散分析法で解析を行った。審査月齢は2次回帰として考慮した。体高について、登録年月の効果は全期間を通じて121cm程度から127cm程度まで穏やかに増加した。胸囲、尻長およびかん幅について、登録年月効果の趨勢は2007年以降、増加傾向が認められた。

  • 石田 惠香, 杉浦 杏子, 阿部 隼人, 山口 諭, 馬場 俊見, 藤元 郁子, 花牟禮 武史, 萩谷 功一
    原稿種別: 原著
    2022 年 10 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    北海道内のホルスタイン種雌牛の初回授精受胎率に対し、交配相手種雄牛の品種(ホルスタイン種および黒毛和種)の影響を調査した。データは、北海道酪農検定検査協会が牛群検定を通じて収集した繁殖記録であり、2010年から2019年までに分娩した個体の未経産、初産および2産次の授精記録であり、受胎を1、不受胎を0とした合計2,019,493記録である。分析は、牛群・授精年、授精月および月齢を母数効果、交配相手種雄牛・授精年および個体の育種価を変量効果とし、未経産時、初産および2産次における初回授精受胎率を別形質とみなした3形質線形アニマルモデルを使用した。2010年から2018年までの初回授精受胎率は、未経産で55 %から59 %、初産で39 %から41 %、2産で37 %から38 %の範囲であった。産次ごとの受胎率における最良線形不偏予測値による比較において、黒毛和種種雄牛交配時の初回授精受胎率は、ホルスタイン種雄牛交配時のそれらより0.01から0.03の範囲で高かった。

研究ノート
  • 小板 英次郎, 國川 尚子, 中野 まどか
    原稿種別: 研究ノート
    2022 年 10 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2023/04/12
    ジャーナル フリー

    最近、乳房炎の新たなバイオマーカーとして注目される体細胞種別判定(DSCC: Differential somatic cell count)の活用方法について検討した。体細胞数(SCC: Somatic cell count)とDSCCに基き、個体牛を次の4つの乳房健康状態に分類した。A(低DSCCおよび低SCC):健康/正常、B(高DSCCおよび低SCC):乳房炎の疑いあり、C(高DSCCおよび高SCC):潜在性乳房炎、D(低DSCCおよび高SCC):慢性/持続性乳房炎。Bグループの個体牛は、Aグループの個体牛と比較し次回検査においてSCCが20万/ml以上になる確率が有意に高く、感染初期段階の早期発見に有効であると考えられた。牛群の乳房炎防除の管理目標は、Aグループから他グループへの移動割合で表される新規感染率で10 %以下と推測され、経過月の連続したデータとして解析することで、より詳細な乳房炎管理情報となる可能性が示唆された。

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