現代社会学研究
Online ISSN : 2186-6163
Print ISSN : 0915-1214
ISSN-L : 0915-1214
25 巻
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
自由投稿論文
  • ―家族の段階的推移を踏まえて―
    古口 真澄
    2012 年 25 巻 p. 1-20
    発行日: 2012/06/05
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
     孫の養育責任を担う祖父母の事例を通し,「家」制度の持続・変容面がどのように表れているかについて,先駆的に考察を試みた。家族の段階的推移として家族縮小期,家族再構築期,家族再縮小期を設定しているが,分析の中核は,祖父母が主に孫の養育にかかわる家族再構築期である。
     家族縮小期では,(1)子世代(長男)の結婚年齢が早いと,親世代(祖父母)の方に,夫婦家族規範意識が強くみられていた。
     家族再構築期には,(2)明治民法の「家」制度的要素が,親権問題では払拭されている。(3)「直系家族」的であるという「縦」の系譜・「父子継承ライン」は,祖父母の中に現在でも根強く維持されている。その内実を精査すると,祖父(父)―息子―孫息子という継承ラインではなく,祖母(母)―息子,祖母―孫息子というように,祖母が認知する「子の可愛さ」と「継承意識」が二重になり直系家族の「連続性」が強化されていた。(4)「家」制度の持続面と変容面から,孫息子と孫娘の養育責任を担う父方祖母には,父系血統の存続へのこだわりが表出しやすいと捉えることができる。
     家族再縮小期では,(5)「1960年代生まれには,結婚時の核家族化,中途同居の傾向がみられ,なおかつ同居にもっとも強く働いているのは,夫の続柄(長男)と持家の相続という伝統的な要因である」ということが確認された。本稿からは,長男の転職による近居が,祖父母の「継承意識」を強めていたと考えられる。
  • 上山 浩次郎
    2012 年 25 巻 p. 21-36
    発行日: 2012/06/05
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
     本稿では,これまで高等教育進学率の地域間格差がどのように変化してきたのかを明らかにする。その地域間格差は,過去と比べて拡大してきたのか縮小してきたのか,それとも安定して推移してきたのか。こうした論点を検証することを通して,現在の地域間格差の状況を評価する。
     先行研究を確認すると,1990年以降,高等教育進学率の地域間格差は拡大してきたという見方と,安定して推移してきたという見方が併存している。こうした見解の違いは,標準偏差と変動係数という,用いる格差指標の違いが関係している。しかし,両者ともに,進学率の格差指標としては適切さに欠ける。そこで本稿では,より妥当性が高い都道府県間相関比を格差指標として分析した。
     分析の結果,⑴大学進学率では,男女計・男女別と都道府県別・地域ブロック別のすべての組み合わせで,地域間格差が1990年まで縮小したのち1990年以降は拡大していること,⑵大学に短大を加えた高等教育進学率でも,すべての組み合わせで,地域間格差が1990年を境に縮小から拡大に転じていることが明らかになった。さらに,⑶2010年現在の状況は,「大学立地政策」が実効的な影響力をもつ以前の1975年の格差と比較して,大学進学率で同程度,高等教育進学率でもこれに匹敵する程度となっている。
     以上から,現在は,高等教育進学率の地域間格差の是正を意図するような政策が再び必要となる状況へと変化しつつあることが示唆される。
  • ―コース別に考える―
    乙部 由子
    2012 年 25 巻 p. 37-53
    発行日: 2012/06/05
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,人事制度改革が女性正規従業員の育児休業制度取得に与えた影響をコース別に検討することである。その際,A社に聞き取り調査を実施し,コース別に特徴を整理した。結果としては第1に,育児休業の取得者をコース別にみると,取得者数,取得率ともに一般職が多いことだった。第2に,育児休業の取得者数,取得率ともに一般職が多いにもかかわらず,代替要員をはじめとした取得者増加による問題の解決策の1つとして,女性総合職の新規学卒者採用を意図的に抑制し,男性総合職の採用を増加させていたことだった。第3に,人事制度改革の恩恵を企業,取得者ともに受けているのは,一般職の方が多いことだった。こういった現状を踏まえ,企業は女性総合職に対して,育児休業の取得が仕事の仕方,時間管理能力の向上につながるなど眼にみえない成果ではなく,企業経営,利益に大きく貢献し,実績を残すことを求めていた。 直接わかりやすいのは課長,部長クラスあるいは取締役にまで昇給,昇格する女性が増加し,眼にみえるような貢献,活躍をすることである。一例として,子育てや主婦の経験を生かした消費者目線の商品を開発し,その年の営業利益に大きく貢献するようなヒット商品を生み出すなどである。こういったことが,育児休業を取得して就業継続することの価値を高めるといえる。
  • 寺沢 重法
    2012 年 25 巻 p. 55-72
    発行日: 2012/06/05
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,現代日本において宗教施設を訪れる人は社会活動にも参加する傾向にあるかどうかを,全国データの分析から検討することである。近年,欧米では社会活動への参加を促す場所としての教会が注目され,教会に参加する頻度の高い人は社会活動にも参加する傾向があることも多くの先行研究から明らかにされてきた。しかしながら,非キリスト教社会・アジア社会における実証研究はほとんど行なわれてこなかった。
     本稿では,〝World Values Survey"日本版データの第2回調査と第4回調査のプールデータの分析を通じて,この空白部分を埋めることを目指した。独立変数は,「宗教施設参加頻度」(「非参加層」「行事参加層」「定期的参加層」の3カテゴリー),「ボランタリー組織所属」と「ボランティア活動実施」を従属変数とする二項ロジスティック回帰分析を行なった。
     分析の結果以下のことが明らかになった。1)「非参加層」に比べて,「定期的参加層」の方がボランタリー組織に所属する傾向があり,ボランティア活動を行う傾向もある。2)「行事参加層」に比べて「定期的参加層」の方がボランタリー組織に所属する傾向がある。だが,ボランティア活動については正の関連は見られるものの有意ではなかった。3)「非参加層」と「行事参加層」の間には有意な違いが見られなかった。4)以上の知見は,社会―人口学的変数や他の宗教的変数を統制した上で得られた。
往来
書評
feedback
Top