東日本大震災後,親を亡くした子どもたちの社会的養護として,親族里親制
度の情報がマスメディアで集中的に取り上げられた。本稿では,親族里親の中
でも祖父母に注目し,日米の親役割を担う祖父母の事例から日本の親族里親制
度の活用を考えた。
日本のインフォーマル・ケアとアメリカのフォーマル・ケアの中で孫の養育
を担う祖母の事例研究で共通していたことは,祖母にとって孫の年齢が低いほ
ど,養育上の問題が少ないということである。さらに乳幼児期での養育の重要
性を,相反する事例から確認している。
祖父母自身が親族に養育された経験者が日本にいたため,祖父母が語るその
経験,「孫育て」と「子育て」の違い,祖父母が定義する「家族」に着目した。
その結果,祖父母が子育てよりも愛情のかけ方に加減ができる孫育てをして,
祖父母の定位家族と対極にある「家族」を望み,構築しようとしていたことが
わかる。
他の日本の対象者も,孫育てには子育ての止揚がみられていることから,祖
父母の生殖家族を超える「家族」が構築されつつあるか,あるいは構築されて
いたと捉えることができる。その根底には,孫の幸福と祖父母の幸福を不可分
とみなす孫と祖父母の相互作用があった。
上記の結果から筆者が言えることは,親族里親制度が,今後子どもの乳幼児
期からの活用にも重点を置くことを希望したいということであり,さらに子ど
ものためにも,必要があればこの制度の積極的な活用を望むということである。
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