現代社会学研究
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6 巻
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  • 佐藤 慶幸
    1993 年 6 巻 p. 1-29
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    この論文の背後にある現代産業社会に対する危機意識は、『啓蒙の弁証法』において呈示された「啓蒙は野蛮である」というテーゼに通じる。このテーゼは産業化による環境破壊という現代の危機的状況に集約されている。しかし、われわれは『啓蒙の弁証法』で呈示された普遍史的な文明没落史観を乗り越えねばならない。そのことを試みたのがハーバーマスであった。かれは『コミュニケーション的行為の理論』で社会的行為論の意識論から言語論へのパラダイム転換を試み、コミュニケーション的合理性による新たな社会形成の可能性を示した。しかしながら、ハーバーマスがその理論的前提とした「理想的発話状況」での行為主体という想定は、社会哲学的であり理想的でありすぎる。
    社会学的には、対話当事者は理性的個人ではなく、むしろ階級状況や利害関係状況において対立している集団である。このような対立関係にある集団間に、どのようにして対話的コミュニケーションが成り立つかが問題になる。この問題をとり扱うために、社会経済システムを構成している三つのセクター、すなわち「私」的、「公」的、そして「共」的セクター間の関係をとりあげ、後期資本主義社会が「システムによる生活世界の植民地化」をすすめていることを論じる。同時に新しい生活世界を形成するために様々な社会的活動を展開している「共」的および「社会」的セクターに属する諸集団が存在しており、その一つとして生活協同組合の活動をとりあげる。
  • 中井 美樹
    1993 年 6 巻 p. 30-50
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、現代女性の結婚行動を、主として社会階層的要因との関連において説明することである。三二四人の女性の個人データに基づき、結婚を早めたりあるいは遅らせたりする規定要因をイベントヒストリー分析を用いて明らかにする。
    分析の結果明らかになった知見は、第一に、現代において、女性の結婚の時機は、その出身家庭の社会的地位によっては規定されないこと、つまり結婚の時機を規定するのは、女性本人が形成した社会的地位それ自身である。第二に、学歴や職業といった女性の社会的地位が、結婚の機会や意思決定に影響し、高学歴女性や専門職など高い地位を達成した女性は結婚を遅らせるようになる。第三に、興味深い知見として、母親の就労は娘の結婚年齢を低下させる。
  • 繰り返しゲームによるオルソン問題の検証
    高田 洋
    1993 年 6 巻 p. 51-80
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、個人の合理性を前提とした集合財供給を目的とする集合行為状況において、集合財の最適供給の条件の提示、および、オルソンの「大規模集団のジレンマ」を検証することにある。
    集合財の供給の確立を問題とした時には繰り返しの意思決定を想定すべきである。そのため、ゲーム理論を用いて、繰り返しゲームで定式化する必要がある。そして、その定式化に基づいたフリードマン最適均衡の定理より、集合財の最適供給の条件を導く。
    その条件から、(1)無限の繰り返しを想定するだけで最適均衡解が導かれ、しかもその無限の仮定を我々は実在とみなしている、また、(2)最適均衡の可能性は利得の大きさに依存している、ということが論証される。
    また、利得関数を設定した分析の結果、(3)集合財供給を目的とする集合行為に関しては集団規模が大きい方が集合財の最適供給をもたらしやすくなる、ということが明らかにされる。繰り返しの意思決定に基づく集合財供給のための集合行為においては、集団規模が大きければ大きいほど、その最適供給が達成されやすくなる。これはオルソンとは逆の結論である。
  • 自己啓発セミナー現象再考
    井上 芳保
    1993 年 6 巻 p. 81-105
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    情報社会には、産業社会(モダン)との連続面と断絶面の二つがある。ソフトノミックスと言われているにも拘らず、過労死の多発など人間にとって抑圧的事態が発生している事実は禁欲的なエートスを基礎とするモダンの原理が情報社会においても相変わらず貫徹していることを意味している。だが、情報の産業化にはモダンを変質させる潜在的可能性がある。われわれは自己啓発セミナー現象の中にそのことをみてとれる。自己啓発セミナーはルサンチマン処理産業というモダンとの連続面以外に「目的―手段連関」を超える身体性文化というモダンとの断絶面からも捉えられる。セミナー参加者であってかつ傍観者的な「透明人間」でいることは不可能である。情報社会における社会運動を論ずるメルッチは、前言語的な身体性領域から発されるアラーム・シグナルに関心を払っている。われわれは身体性文化としての自己啓発セミナー現象にある二種の身体性メッセージの中にアラーム・シグナルを聞き届けうる。一つは人間にとって抑圧的な現代社会からの「解放」を求める参加者から聞こえ、今一つはセミナーに強い興味を持ちながら参加に踏み切らぬ「透明人間」の姿から聞こえる。「透明人間」は主観的動機はともあれ、客観的には心の商品化の動向に躊躇という形で抵抗している。このことは情報資本主義が人間性の一切を商品化しようとしても実際にはそうはならぬことを示している。
  • 性・家族・階層をめぐる新たな問題
    笹谷 春美, 加藤 喜久子
    1993 年 6 巻 p. 106-131
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    女性の解放、自立という側面を持つ最近の離婚の増加が、一方で大量の貧困母子家族を生み出すというパラドックスが生じている。欧米において顕著な「貧困の女性化」と呼ばれるこの新しい現象は、階層・階級問題としての従来の貧困研究にジェンダーの視点を導入する必要性を提起している。
    本稿は、わが国の離婚母子家族の貧困化の要因を、このような現代的視角から考察を行うものである。分析対象は母子寮入寮者68名である。
    分析の結果、母子家族の貧困化は、女性に期待されている家事・育児の役割と密接に関連した労働市場における低い地位により構造的に生み出されることが明かにされた。特に男性の扶養者を持たない母子家族では、母親が低賃金・不安定な差別的労働市場から脱出しえない限り貧困は免れない。学歴・資格・サボート資源等の個々人の階層的要因は貧困から脱出する契機にもなりうるが、特にわが国では、離婚に対する偏見や母親労働者に対するマイナスのラベリングが根強く、高学歴であっても再就職が困難な場合も見られた。また、今日の福祉施策は、厳しい資格審査や母子一体論によりジェンダーシステムを補完する側面も有し、女性や単親家族の自立要求とは一致しない点も見られた。従って、母子家族の貧困問題の解決には、経済的対応のみではなく、家族、労働市場、その他諸領域に張り巡らされている今日のジェンダーシステムを見直し、男女の自立と平等、子供の発達権を第一義とし、多様な家族を主体的選択しうる新たな家族・福祉・労働諸政策が要求されている。
  • 白倉 幸男
    1993 年 6 巻 p. 132-133
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
  • 松山 博光
    1993 年 6 巻 p. 134-136
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 井腰 圭介
    1993 年 6 巻 p. 136-138
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 田中 昇平
    1993 年 6 巻 p. 138-141
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 朝岡 幸彦
    1993 年 6 巻 p. 141-146
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
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