本研究の目的は、個人の合理性を前提とした集合財供給を目的とする集合行為状況において、集合財の最適供給の条件の提示、および、オルソンの「大規模集団のジレンマ」を検証することにある。
集合財の供給の確立を問題とした時には繰り返しの意思決定を想定すべきである。そのため、ゲーム理論を用いて、繰り返しゲームで定式化する必要がある。そして、その定式化に基づいたフリードマン最適均衡の定理より、集合財の最適供給の条件を導く。
その条件から、(1)無限の繰り返しを想定するだけで最適均衡解が導かれ、しかもその無限の仮定を我々は実在とみなしている、また、(2)最適均衡の可能性は利得の大きさに依存している、ということが論証される。
また、利得関数を設定した分析の結果、(3)集合財供給を目的とする集合行為に関しては集団規模が大きい方が集合財の最適供給をもたらしやすくなる、ということが明らかにされる。繰り返しの意思決定に基づく集合財供給のための集合行為においては、集団規模が大きければ大きいほど、その最適供給が達成されやすくなる。これはオルソンとは逆の結論である。
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