The Horticulture Journal
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84 巻, 2 号
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原著論文
  • 岩波 宏, 守谷(田中) 友紀, 本多 親子, 和田 雅人
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/02/21
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    高品質なリンゴを生産するためには,摘花・摘果は必須である.薬剤による摘果が世界中で行われているが,隔年結果を防止し,高品質なリンゴを生産するためには着果量を厳密にコントロールする必要があり,そのための人手による摘果は依然として重要な作業である.本研究は,人手による摘果作業時間を左右する要因を調べ,品種による摘果作業時間の違いを明らかにすることを目的とした.花そうあたりの摘果にかかる時間は,いずれの品種でも落花後には短くなっていくが,この短くなる程度が品種によって異なった.摘果にかかる時間は,幼果が自然に落果する時期と量に依存していた.果そう内の幼果の数が 4,5,6 個では摘果に要する時間に大きな違いはなく,幼果の数が 2 個および 3 個となると,半分の時間で摘果できるようになった.すなわち,果そう内の幼果が 3 果以下になると,摘果に要する時間は大きく減少する.腋芽果そうの摘果に要する時間は,開花後 7 日目までは徐々に増えたが,その後は減少した.1 日 6 時間摘果作業に従事した場合,開花 10 日後から 30 日までに摘果できる面積は,開花後 15 日目に 3 果以下の果そう割合が 50%となるような品種では,一人あたり 24.3 a となり,開花後 30 日目に 3 果以下果そう割合が 50%となるような品種より,40%も広い面積を摘果できた.したがって,果実が早くさらに多く落果する品種を導入することが,摘果を省力化する一つの解決策となる.
  • 松本 敏一, 山本 伸一, 福井 邦明, Tariq Rafique, Florent Engelmann, 新野 孝男
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/12
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    超低温保存は,植物遺伝資源の長期保存法として有効な手法となっている.カキ‘西条’(Diospyros kaki Thunb.)の冬芽から摘出した茎頂を用いて,乾燥法による新しい超低温保存法である D クライオプレート法による超低温保存法を検討した.2013 年 1 月に島根大学農場より冬芽を付けた休眠枝を収集し,2°C で貯蔵した.表面殺菌後,1 mm の大きさに調整した茎頂を冬芽から摘出し,0.3 M ショ糖を含む 1/2MS 固形培地に置床し,25°C で一晩の前培養を行った.その後,アルミニウムクライオプレートのウエルに茎頂を入れ,アルギン酸カルシウムで固着させた.LS 液(2 M グリセリン + 1.0 M ショ糖を含む 1/2MS 培地)に茎頂を付着したクライオプレートを 25°C で 30 分間入れ,凍害防御処理を行った.クリーンベンチ内に茎頂を付着させたクライオプレートを置き,30–90 分間の風乾を行い,液体窒素で直接冷却した.1.0 M ショ糖を含む 1/2MS 液体培地にクライオプレートを入れ,25°C で 20 分間の昇温を行った.本実験では 0.3 M ショ糖による前培養による再生率向上効果は認められなかったが,他の品種への応用やジーンバンクでの実用面を考えると D クライオプレート法の手順に加えるべきと思われる.高い再生率(84%)は30 分間の乾燥時間で得られ,この条件で他の 10 品種のカキで比較したところ,67–97%の再生率となった.冬芽は高い低温耐性を持つことから,冬芽を用いた D クライオプレート法はカキの超低温保存に有効な方法であると考えられる.
  • 東出 忠桐, 安場 健一郎, 畔柳 武司, 中野 明正
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 111-121
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/02/21
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    日本のトマト品種における CO2 施用と細霧の併用による収量増加のメカニズムを調べるため,3 つの日本品種について CO2 施用と細霧を併用した場合と CO2 施用も細霧も行わない場合で,地上部総乾物生産量,果実への乾物分配率および光合成に関する特性を調査した.果実収量および地上部総乾物生産量は,CO2 施用と細霧の併用によって 3 品種とも有意に増加し,光利用効率も増加した.‘朝日和10’および‘純系愛知ファースト’では,CO2 施用と細霧併用による果実への乾物分配率の低下はみられず,光利用効率の向上による地上部総乾物生産量の増加が直接,収量増加に結びついていた.一方,‘桃太郎ヨーク’では,CO2 施用と細霧併用により果実への乾物分配率が有意に低下した.このために‘桃太郎ヨーク’では地上部総乾物生産量が増加したにもかかわらず,収量増加はやや少なめになった.CO2 施用と細霧を併用した場合,‘桃太郎ヨーク’では,発育中の果実を持つ果房数が有意に多かったが,他の 2 品種では増加はみられなかった.葉面積,葉や茎の生体重および乾燥重で表される栄養成長は CO2 施用と細霧併用によって促進した.しかし,これらによって群落の吸光係数が変化したり,最大光合成速度が低下したりするような負の効果は観察されなかった.3 品種とも CO2 施用と細霧併用によって収穫果実数は増加したが,一果重は減少した.
  • Pedro Palencia, Fátima Martínez, Maribela Pestana, Jóse A. Oliveira, P ...
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 122-130
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/11
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    イチゴ栽培品種‘Splendor’と‘Primoris’を用いた養液栽培条件下で,実験開始時の Bacillus velezensis 接種の有無およびアーバスキュラー菌根菌 Glomus intraradices の接種時期による効果を検証した.1 栽培バッグに 10 株植えを 1 反復とし,B. velezensis 施用の有無,イチゴ 2 品種および 3 水準の接種時期を組み合わせた 12 の試験区について完全無作為化法(2 反復)にて試験を行った.果実重,果実品質,生育パラメーターおよび最新展開葉の SPAD 値を,温室内で 2011 年 10 月から 2012 年 6 月にかけて調査し,栽培終了時に根圏における Bacillus および G. intraradices の菌密度または感染率を測定した.その結果,養液栽培においても B. velezensisG. intraradices は定着しており,G. intraradices の効果は生育よりも果実品質に及ぼす影響のほうが強かった.複合接種区においては TSS(可溶性固形物),pH,TA(滴定酸度)の低下を引き起こした.B. velezensisG. intraradices の接種時期との組合せ効果は‘Splendor’よりも‘Primoris’において顕著であったが,両品種ともに定植後 12 ~22 週において SPAD 値の上昇が観察された.養液栽培においては,栽培品種により,接種時期がアーバスキュラー菌根菌定着による植物の発育反応に顕著に影響を与えることが示唆される.
  • 髙取 由佳, 清水 圭一, 緒方 潤, 遠藤 大輝, 石丸 幹二, 岡本 繁久, 橋本 文雄
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/07
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    トルコギキョウ(Eustoma grandiflorum)の花弁から,シアニジン系アントシアニンの生合成に関与する Flavonoid 3-hydroxylaseF3H)遺伝子の cDNA を単離した.この F3H 遺伝子のアミノ酸配列は,Arabidopsis thalianaF3H と 75.1%,Ipomoea nilF3H と 73.8%,Petunia hybridaF3H と 68.2%の相同性を示した.また,RT-PCR の結果,トルコギキョウ花蕾の生育過程別の花弁における F3H 遺伝子の発現量は,早期ステージで高く,後期ステージで低下した.なお,葉では,花弁の早期ステージと同程度に高い発現量を示した.さらに,単離したトルコギキョウの F3H 遺伝子を,F3′H 機能欠損で赤色の花を咲かせるアサガオの品種‘Violet’に導入して異種発現させた結果,花色が赤色から青色に変化し,花弁中にシアニジン系色素の蓄積がみられた.以上のことから,今回,単離に成功したトルコギキョウ由来の F3H 遺伝子はシアニジン系色素の生合成機能を有することが明らかとなった.
  • 水ノ江 雄輝, 久保田 渉誠, 菅野 明, 尾崎 行生
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 140-147
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/07
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    シクラメン(Cyclamen persicum Mill.)において,自然突然変異による複数の種類の八重咲き品種が作出されている.我々は八重咲きシクラメンの形態的特徴と器官数を調査し,“雄蕊弁化型”,“萼弁化型”および“whorl 2 における花弁増加型”の 3 タイプに分類した.形態観察の結果,雄蕊の弁化と萼の弁化とが同時に起こっている個体は認められなかった.次に,一重咲きおよび雄蕊弁化型八重咲きシクラメンの花芽から 3 種類の AG-like 遺伝子を単離し,それぞれの whorl における発現を比較した.一重咲きのwhorl 3 では,全ての AG-like 遺伝子が発現していたが,雄蕊弁化型の八重咲きでは 3 種類とも発現は認められなかった.whorl 4 では,一重咲きおよび八重咲き花の両方において 3 種類の AG-like 遺伝子の発現が認められたが,八重咲き花における発現量は一重咲き花よりも低かった.これらの結果は,自然発生の八重咲きシクラメンが ABC モデルによって説明できること,そして雄蕊の弁化は whorl 3 における AG-like 遺伝子の発現抑制に起因することを示唆する.
  • 白 建芳, 河鰭 実之
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 148-155
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/04
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    トルコギキョウの花は朝開花し夕方に閉じる開閉リズムを示す.この研究では異なる光リズムにおけるトルコギキョウ‘あずまの紫’の花の開閉の過程を,インターバル撮影により記録して調べた.24 時間周期の明暗リズムでは,花の開閉は明暗リズムと同調した.また開閉運動は 2 段階からなった.第一段階は明期および暗期の開始とともに始まる花の開閉で,第二段階は明期の終わりから 12 時間後および明期の開始から 2 ~3 時間後に始まるゆっくりとした開閉である.第一段階は光による直接的な効果と考えられ,第二段階は概日時計による制御と考えられた.連続暗期条件,連続青色光条件,および連続赤色光条件ではそれぞれ25.5 ± 0.6,25.6 ± 0.6,および 24.3 ± 0.4 時間周期の開閉リズムを続けた.一方,連続白色光条件および青色光と赤色光の連続共照射条件では,1 回だけ開閉を示し,その後は開閉リズムを示さなかった.花の開閉リズムの光周期への同調は,24 時間および 20 時間周期の青色光および赤色光の明暗周期においても認められた.しかし,この同調は 16 時間周期でははっきりとしなくなり,12 時間周期では 24 時間周期の開閉運動を示した.光による直接的な開花効果は,光強度に依存した.青色光の光強度を 25,40,100 W·m−2 として比較したところ,最も強い光強度において明期開始後急速に開花した.しかし,光強度による効果は赤色光には認められなかった.
  • 北村 嘉邦, 上野 祥代
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/07
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    アジサイ(Hydrangea spp.)の切り花における,花序からの蒸散量と花持ちとの関係について調査した.二次花序の一部の切除や花序へのポリ塩化ビニルフィルムによる被覆処理によって,切り花からの蒸散量が抑制され,花持ちが延長された.小型の花序をもつ切り花では大型の花序をもつ切り花と比較して蒸散量が少なく,花持ちも長かった.がく片における気孔伝導度の平均値は 2.7 mmol·m−2·s−1 から 3.3 mmol·m−2·s−1 であり,がく片の背軸面に存在する気孔のうち,開口していた気孔が占める割合は明期の測定で約 6%であった.また,切り花からの蒸散量に明暗周期に同調する明確な日変化が認められなかったことから,がく片に存在する気孔の多くは機能しておらず,がく片からの蒸散は主にクチクラ蒸散によるものと考えられた.以上からアジサイの切り花では,装飾花数が少ない花序の利用や,装飾花がく片の表面からの蒸発散を抑制する処理を行うことで,花持ちの延長が可能になると考えられた.
  • Audchara Sorwong, Siriwat Sakhonwasee
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 161-171
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/14
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    マリーゴールド‘ナライイエロー’,‘バリゴールド’,‘コロンブスオレンジ’の 3 品種について,高温ストレス環境下におけるグリシンベタイン(GB)の効果を検討した.15 日間の昼温/ 夜温:25°C/25°C(対照区)または 39°C/29°C(高温ストレス区)の条件に晒す 24 時間前に,3 品種の実生に対して GB を葉面散布した.25°C/25°C(対照区)で生育させた植物に対して,全ての品種において高温ストレスは光阻害並びに低レベルの二酸化炭素の取り込み率(A)を誘因し,また,気孔コンダクタンス(gs),蒸散率(E)に対して低い値を示した.活性酸素分子種(ROS),脂質過酸化反応および細胞死についても対照区と比較して高温ストレス区のほうが高くなった.しかし,相対水量(RWC)については,‘バリゴールド’についてのみ統計的に有意な差が認められた.すべての品種に対して GB の 0.5 mM および 1 mM の葉面散布は,高温ストレスの光阻害を緩和し,結果として,より高い二酸化炭素の取り込み率(A),気孔コンダクタンス(gs)および蒸散率(E)を与えた.GB の使用はまた,より低い過酸化水素,超酸化物,脂質過酸化反応および細胞死を示した.相対水量(RWC)に対する GB の改善効果は‘バリゴールド’についてのみ有意であった.ほとんどの場合において,GB の 0.5 mM および 1 mM の濃度間に有意差は認められなかった.各パラメーターにおける GB の効果と品種間における低減反応から,マリーゴールドのすべての品種に対して GB は際立った効果を示すことが考えられる.以上の結果,マリーゴールドの高温ストレスに対して GB を使用することにより,緩やかにその効果を発揮できることが示された.
  • 杉山 想, 佐藤 茂
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 84 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/04/21
    [早期公開] 公開日: 2015/02/21
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    2,4- ピリジンジカルボン酸(2,4-PDCA)は,1- アミノシクロプロパン-1- カルボン酸酸化酵素活性を阻害することにより,スプレーカーネーション‘ライトピンクバーバラ’(LPB)切り花の日持ち日数を延長することが明らかにされていた.この作用に加えて,2,4-PDCA が開花を促進する可能性も示唆されていた(Satoh et al., 2014).本研究では,初めに,薬剤処理時の開花到達日数の短縮を指標にして,薬剤の開花促進効果を評価する方法を考案した.この方法を適用して,2,4-PDCA を含む PDCA アナログが,‘LPB’カーネーション切り花の老化を抑制して日持ち日数を延長する作用に加えて,開花促進作用を持つことを実証した.さらに,開花促進効果と老化抑制効果の両方を勘案して,PDCA アナログのなかで,2,3-PDCA と 2,4-PDCA が‘LPB’カーネーション切り花の処理剤として適していることを明らかにした.本研究によって,‘LPB’切り花において,PDCA アナログが開花を促進しかつ老化を抑制するため,開花した花の数が多く維持されて観賞期間が延長されることが示された.
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