耐寒性の変化,プロリン含量,関係遺伝子の発現を,7~8 年生のモモ 2 品種(‘Janghowon Hwangdo’と‘おどろき’)のシュートにおいては,自然条件下でのハードニングからデハードニングの間,また 1 年生のモモ 10 品種については人工的なデハードニング環境で,それぞれ調査した.特に
P5CS(Δ
1-pyrroline-5-carboxylate synthase),
P5CR(Δ
1-pyrroline-5-carboxylate reductase)遺伝子の転写産物の蓄積についてリアルタイム PCR によって調べた.2 品種のシュートにおける耐寒性は,実験期間全体において有意に異なった.両品種の耐寒性は 2012 年 12 月まで段階的に増大し,その後 2013 年 4 月まで減少した.一方で,プロリン含量は実験開始から 2013 年 2 月まで減少し,その後春季には増加した.10 品種では,デハードニング期間で耐寒性が低下し,プロリン含量は増加した.興味深いことに,プロリン生合成経路の最初の段階の glutamate(Glu)から glutamic-γ-semialdehyde(GSA)への反応を触媒する酵素をコードしている
P5CS 遺伝子の発現は,両実験においてプロリン含量と対照的なパターンを示していた.対照的に,プロリン生合成経路における最終段階である,Δ
1-pyrroline-5-carboxylate(P5C)からプロリンへの変換を触媒する酵素をコードしている
P5CR 遺伝子の発現は,両実験においてプロリン含量と似たパターンを示した.我々の結果は異なるモモ品種のシュートにおいて,プロリン蓄積は高温に対してポジティブに応答し,そして
P5CS と
P5CR 遺伝子は対照的な発現パターンを示した.我々の結果より,
P5CS と
P5CR の両遺伝子発現の確認は,プロリン生合成の正確な分析に必要であると思われた.それは,プロリン蓄積は
P5CR 遺伝子の発現により強く影響を受けるからである.さらに注目に値するのは,人工的なデハードニング環境において,
OAT(ornithine-δ-aminotransferase)遺伝子の発現が増加したことである.我々の結果から,オルニチン経路はモモにおいて,デハードニングの間プロリン生合成経路の代替経路として機能しているのではないかと考えられた.
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