The Horticulture Journal
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85 巻, 1 号
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依頼総説
  • Md Mizanur Rahim Khan, 一色 司郎
    原稿種別: 依頼総説
    2016 年 85 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/07/25
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    細胞質雄性不稔(CMS)は作物品種の雑種種子生産にきわめて有効なシステムである.本研究では,6 種のナス属野生種の細胞質を用いて,連続戻し交雑によるナスの CMS 系統の開発を行った.これらの CMS は次の 2 種類に分けられた.一つ目は,Solanum kurzii Brace and Prain,S. violaceum Ort. および S. virginianum L. の細胞質をもつ葯の裂開不全型の CMS である.これは葯内に花粉を形成するにもかかわらず開葯しないために花粉を放出できないものである.二つ目は,S. aethiopicum Aculeatum Group,S. anguivi Lam. および S. grandifolium C.V. Morton の細胞質をもつ花粉形成不全型の CMS である.これは花粉を全く形成しないものである.これら 2 種類の CMS について花粉稔性,種子稔性等について詳細を明らかにし特徴づけた.さらに,花粉形成不全型の CMS では,2 種類の独立した優性の稔性回復遺伝子(Rf)の存在を明らかにするとともに,それらに密接に連鎖する Sequence Characterized Amplified Region(SCAR)マーカーを開発した.
  • 菅野 明
    原稿種別: 総説
    2016 年 85 巻 1 号 p. 8-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/08/20
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    双子葉のモデル植物であるシロイヌナズナやキンギョソウの遺伝学的・分子生物学的解析により,花器官形成の ABC モデル(現在は ABCE モデル)が提唱された.このモデルは形質転換や突然変異体を用いた遺伝子の機能的な解析により,さまざまな双子葉植物で支持されている.双子葉植物は 2 層の花被を有しており,緑色のがく片と華やかな花弁から構成されているものが多い.一方,ユリなどの単子葉植物の花被は 2 層の花弁状器官から構成されている.この花の形態は改変 ABC モデル(現在は改変 ABCE モデル)で説明され,このモデルによれば,B クラス遺伝子ウォール 1 から 3 まで発現することにより,ウォール 1 と 2 に花弁状花被が形成される.本総説では,単子葉植物における花器官形成の分子機構について解説する.花き園芸植物では花被が重要な形質の一つであることから,花被の形成や改変に関与する B および C クラス遺伝子に着目した.本総説においてはこれらの花器官形成遺伝子の発現解析や花の突然変異体を用いた機能解析について概説するとともに,園芸的に有用な八重化または緑化した花の器官形成の分子機構についても概説する.また単子葉植物にはユリタイプの花だけでなく,ツユクサのように花被ががく片と花弁に区別できる植物やラン科植物やイネ科植物のような特殊な形態の花を有する植物がある.本総説ではこれらの花器官形成の分子機構についても概説する.
原著論文
  • 西川 芙美恵, 岩崎 光徳, 深町 浩, 松本 光
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/06/16
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    カンキツ樹では,着果が花成と樹の栄養状態に影響する.このため,着果過多あるいは過少になると翌春に花数が変動する.この特性は,豊作と不作を交互に繰り返す隔年結果を引き起こす.隔年結果に関連する代謝産物を明らかにするために,11 月に採取された春枝の茎組織を用いて,代謝産物量を網羅的に調査した.本研究では,着果量の異なるウンシュウミカン 12 樹を使用した.それぞれの樹における着果量は,11 月茎組織におけるカンキツ FLOWERING LOCUS TCiFT)遺伝子発現量および翌春の花数と密接に関連した.網羅的な代謝産物解析では,154 の代謝産物が同定された.本解析で検出された代謝産物のうち,アデノシン 3 リン酸(ATP)が着果量の少ない樹で高く検出された.ウリジン 3 リン酸(UTP)やニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH, NADP+),アスコルビン酸といった他の補酵素も着果量の少ない樹に多く含まれていた.さらに,着果少樹は,フルクトース 6 リン酸やリブロース 1,5 リン酸,グルコース 6 リン酸といった糖リン酸を蓄積していた.一方,多くのアミノ酸が,着果過多樹で蓄積していた.これらの結果は,着果が春枝の茎における補酵素や糖,アミノ酸の代謝に影響することを示唆している.
  • 草塲 新之助, 松岡 かおり, 阿部 和博, 味戸 裕幸, 安部 充, 佐久間 宣昭, 斎藤 祐一, 志村 浩雄, 木方 展治, 平岡 潔志
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/08/04
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    東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により放出され樹園地に降下した放射性セシウムについて,リンゴ園における地表面管理の違いが土壌および果実における放射性セシウムの蓄積に与える影響を,福島県において 2011 年から 4 年間にわたり調査した.地表面管理は,清耕区,中耕区,中耕+堆肥施用区,草生区,ゼオライト散布区とした.土壌の放射性セシウム濃度は上層ほど高く,表層土(0~5 cm)では,有意差は認められないものの草生区のみが 2011 年と比較して 2014 年に濃度が上昇した.中層土(5~15 cm)では,中耕を伴う処理区の濃度が他の処理区よりも高くなった.樹冠下地表面の雑草,落ち葉等の有機物に含まれる単位面積あたりの放射性セシウム量は草生区で最も高く,中耕を伴う処理区で低かった.果実の放射性セシウム濃度は,いずれの処理区においても 4 年間にわたり指数関数的に減少した.また,果実の濃度に堆肥施用の影響は認められなかった.果実と土壌の放射性セシウム濃度が連動していないことから,試験地に降下した放射性セシウムのレベルでは,少なくとも事故発生後 4 年間は,中耕,草生管理,堆肥施用などの地表面管理は,リンゴ果実の放射性セシウム濃度に影響を与えないことが示唆された.
  • Hyunsuk Shin, Sewon Oh, Keumsun Kim, Daeil Kim
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/09/12
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    耐寒性の変化,プロリン含量,関係遺伝子の発現を,7~8 年生のモモ 2 品種(‘Janghowon Hwangdo’と‘おどろき’)のシュートにおいては,自然条件下でのハードニングからデハードニングの間,また 1 年生のモモ 10 品種については人工的なデハードニング環境で,それぞれ調査した.特に P5CS(Δ1-pyrroline-5-carboxylate synthase),P5CR(Δ1-pyrroline-5-carboxylate reductase)遺伝子の転写産物の蓄積についてリアルタイム PCR によって調べた.2 品種のシュートにおける耐寒性は,実験期間全体において有意に異なった.両品種の耐寒性は 2012 年 12 月まで段階的に増大し,その後 2013 年 4 月まで減少した.一方で,プロリン含量は実験開始から 2013 年 2 月まで減少し,その後春季には増加した.10 品種では,デハードニング期間で耐寒性が低下し,プロリン含量は増加した.興味深いことに,プロリン生合成経路の最初の段階の glutamate(Glu)から glutamic-γ-semialdehyde(GSA)への反応を触媒する酵素をコードしている P5CS 遺伝子の発現は,両実験においてプロリン含量と対照的なパターンを示していた.対照的に,プロリン生合成経路における最終段階である,Δ1-pyrroline-5-carboxylate(P5C)からプロリンへの変換を触媒する酵素をコードしている P5CR 遺伝子の発現は,両実験においてプロリン含量と似たパターンを示した.我々の結果は異なるモモ品種のシュートにおいて,プロリン蓄積は高温に対してポジティブに応答し,そして P5CSP5CR 遺伝子は対照的な発現パターンを示した.我々の結果より,P5CSP5CR の両遺伝子発現の確認は,プロリン生合成の正確な分析に必要であると思われた.それは,プロリン蓄積は P5CR 遺伝子の発現により強く影響を受けるからである.さらに注目に値するのは,人工的なデハードニング環境において,OAT(ornithine-δ-aminotransferase)遺伝子の発現が増加したことである.我々の結果から,オルニチン経路はモモにおいて,デハードニングの間プロリン生合成経路の代替経路として機能しているのではないかと考えられた.
  • 山根 京子, 杉山 泰昭, 魯 元学, 律 娜, 丹野 研一, 木村 衣里, 山口 裕文
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/07/30
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    本研究では,ワサビを含む日本のワサビ属植物 2 種(Eutrema japonicum および E. tenue)とその近縁野生種である中国の E. yunnanense の間の遺伝的分化の程度を明らかにした.葉緑体 DNA の trnK/matK 領域の塩基配列を解析し,アブラナ科有用植物 16 種とあわせて近隣接合法(NJ 法)および最節約法(MP 法)にて分子系統解析を行ったところ,上記 3 種のワサビ属植物は単一クレードを形成した.なかでも日本のワサビ属植物 2 種はほとんど配列に違いがなく,E. yunnanense とは別に単一クレードを形成し,日本と中国のワサビ属植物は,約 500 万年前に分岐したことが明らかとなった.このことは日本のワサビ属植物 2 種が日本固有種であることを支持し,かつ栽培ワサビが中国から日本へ持ち込まれたことを否定している.つまり今回,ワサビが日本で栽培化された植物であることが明らかとなった.また,筆頭著者らが 2007 年に行った中国雲南省における民族植物学的調査から,E. yunnanense は地上部が利用されていたものの,栽培はされておらず,日本のワサビのような辛みがないことが明らかになった.以上の結果から,日本のワサビ属植物の辛み成分は,数百万年をかけて得られた進化の産物であり,日本ではこうした特徴的な成分を香辛料として利用することで,日本独自の食文化の形成につながったことが明らかとなった.
  • Amna Fareed, 新藤 春香, 高橋 弘子, 中村 郁郎
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/07/14
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    ブラシカ属は,さまざまな重要な種を含んでおり,3 つの二倍体種:Brassica rapa(A ゲノム),B. nigra(B ゲノム),B. oleracea(C ゲノム)と 3 つの複二倍体種:B. juncea(AB ゲノム),B. napus(AC ゲノム),B. carinata(BC ゲノム)が U の三角形を構成している.これら A,B,C ゲノムの類縁関係を解明するために多数の遺伝子の塩基配列が解析されてきたが,ひとつの核遺伝子の系譜が U の三角形全体の類縁関係と一致する例は知られていない.植物の核ゲノム配列は,種間雑種の対立遺伝子座間で遺伝的な組み換えを起こすが,私達は,RNA ポリメラーゼ I 複合体の最大サブユニットをコードする PolA1 遺伝子の第 19 イントロンおよび Nucleotide tag(Ntag)配列がクサビコムギ(Aegilops speltoides)の起源に関与した浸透交雑の間にほとんど組み換えを起こしていないことを見出した.組み換えた配列を含む分子系統解析では,その組み換えが生じた以前の系譜を解明することはできないので,本当の進化経路を明らかにするためには,組み換えていない配列のみを解析することが必要である.本研究において,ブラシカ属 6 種の PolA1 遺伝子の分子系統関係は,U の三角形と明瞭に一致する事が明らかになった.加えて,B. napus の 2 つのグループは,B. rapa の 2 つのグループと B. oleracea との間の交雑および複二倍体化によりそれぞれ独立に起源したことを示唆する結果を得た.
  • 立澤 文見, 細川 宗孝
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/09/04
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    セントポーリア 16 品種の花色とアントシアニンを調査し,花色とアントシアニン構成成分の関係を判定した.6 種類の主要アントシアニンとともに 3 種類の微量アントシアニンが確認でき,co-HPLC,化学,およびスペクトル分析により同定した.これらのうち,‘ジョージア’と‘ジェシカ’の花から得られたペラルゴニジン 3-O-[6-O-(4-O-(アセチル)-α-ラムノピラノシル)-β-グルコピラノシド](ペラルゴニジン 3-アセチル-ルチノシド;色素 8)が新規アントシアニンであった.セントポーリアの花色(特に色調:b*/a*)にはアントシアニジンに結合する糖の位置および構成アントシアニンの種類が影響していた.これらは花色とアントシアニン構成によって以下の 6 つのグループに分けられた.紫青色の花色のグループ A(b*/a* = −2.61~−1.72,VB N89B~VB 94B)と紫色の花色のグループ B(b*/a* = −1.06 と −0.81,PV N82A と PV N80B)にはマルビジン 3-アセチル-ルチノシド-5-グルコシドが最も主要なアントシアニンとして含まれていた.紫色の花色のグループ C(b*/a* = −0.69 と −0.53,PV N80B と PV N81A)にはペオニジン 3-アセチル-ルチノシド-5-グルコシドが最も主要なアントシアニンとして含まれていた.赤紫色の花色のグループ D(b*/a* = −0.44~−0.27,RP 73A~RP N74B)にはペラルゴニジン 3-アセチル-ルチノシド-5-ルコシドが,グループ E(b*/a* = −0.03 と −0.02,RP 60D と RP 71D)にはペラルゴニジン 3-アセチル-ルチノシドが,そして,グループ F(b*/a* = 0.04 と 0.13,RP 61A と RP 71A)にはペオニジン 3-アセチル-ルチノシドがそれぞれ最も主要なアントシアニンとして含まれていた.これらの結果から,アントシアニジン 3-アセチル-ルチノシドの 5-OH のグルコシル化およびアントシアニジンの B 環のメチル化の増加が,セントポーリア栽培品種における花色変化への最も重要な効果と考えられた.
  • Tawanda Elias Maguvu, 湯本(清水) 弘子, 柴田 道夫
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/09/15
    ジャーナル オープンアクセス HTML
    ハナスベリヒユ(Portulaca umbraticola Kunth)は一日花ではあるものの日本の夏季において重要な花壇用花きである.近年,さまざまな特性を有する品種が開発されているが,ハナスベリヒユの開花特性の品種間差異に関する報告はない.本報では,在来品種である‘赤一重’(SR)と近年開発された品種‘サンちゅらかチェリーレッド’(SCR)について花の寿命と内生エチレン生成ならびにエチレン感受性の品種間差異を調べた.SCR は SR よりもやや遅く開花するものの,かなり遅く閉花するために,SCR の花の寿命は SR に比べて著しく長くなった.SCR の花の老化時の内生エチレン生成量を調べたところ,SR より有意に低く,生成のピークが 2 時間遅れた.一方,両品種とも受粉処理,花糸の切除処理および雌しべの除去処理のすべてが有意に花の老化を早め,中でも花糸の切除処理が最も花の老化を促進した.両品種とも濃度 0.5,1,2 μL·L−1 の外生エチレン処理が花の老化を促進した.また,エチレン作用阻害剤である 1-メチルシクロプロペン(1-MCP)とエチレン生合成阻害剤であるアミノエトキシビニルグリシン(AVG)の処理は両品種ともに花の老化を大幅に遅延させ,AVG の方が花の老化遅延により効果的であった.ハナスベリヒユの花の寿命と花の老化時の内生エチレン生成との間に明らかな品種間差異が認められ,内生エチレン生成が遅れて起こり,少ないことが花の寿命の長さに関与していると推定された.一方,ハナスベリヒユ品種は花の寿命の長短に関わらずエチレンに対して感受性を示すことも明らかになった.
  • William Olubero Asiche, Eric Gituma Mworia, 小田 千里, Oscar Witere Mitalo ...
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 76-85
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/07/04
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    キウイフルーツ‘レインボーレッド’Actinidia chinensis,‘さぬきゴールド’A. chinensis および‘ヘイワード’A. deliciosa について食用最適期間“eating window”を延長するためにプロピレンおよび 1-methylcyclopropene(1-MCP)の処理期間,組み合わせを検討した.プロピレン処理は果実成熟を誘導し,果肉軟化,可溶性固形物含量の増加,滴定酸含量の減少を促進したが,その処理期間に応じてエチレン生成誘導に至る場合も至らない場合もあった.内生エチレン生成が誘導されると成熟を促進し,過熟段階に達するのが早まり“eating window”期間は短くなった.プロピレンを 48 時間処理すると‘レインボーレッド’と‘さぬきゴールド’では内生エチレン生成に至り“eating window”期間は僅か 2 日間(処理開始後 3–5 日)であったのに対し,‘ヘイワード’では 7 日間(処理開始後 3–10 日)であった.すなわち,‘レインボーレッド’と‘さぬきゴールド’では‘ヘイワード’より“eating window”が短く,品種間に大きな差異があることを示している.プロピレン処理を 24 時間に短縮するとエチレン生成誘導には至らなかったが,品種により時期の違いはあったもののいずれでも果実は可食状態に達した.‘レインボーレッド’と‘さぬきゴールド’では 48 時間プロピレン処理の後に 1-MCP 処理することで内生エチレン生成を抑制し“eating window”および棚持ち期間を延長できた.これらの結果は,プロピレン処理の期間の調整および 1-MCP 処理との組み合わせによってキウイフルーツ果実の棚持ち期間を延長できることを示している.
  • 山家 一哲, 國賀 武, 青木 慎一, 加藤 光弘, 小林 康志
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 85 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/23
    [早期公開] 公開日: 2015/09/04
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    青かび病菌(Penicillium italicum)は,収穫後のカンキツ類果実の傷に付着し,青かび病を引き起こす主要なカンキツ貯蔵病害菌である.収穫後ウンシュウミカン果実において,紫外線(UV-B)照射が青かび病の発生,病斑拡大と果実品質に及ぼす影響ついて調査した.in vitro において,試験を行ったすべての UV-B 照射(15,30,60,120 kJ·m−2)が,青かび病菌に対して 99%以上の高い殺菌効果を示した.続いて,ウンシュウミカン‘青島温州’の早期収穫果(収穫日:10/30)と通常収穫果(収穫日:11/20)に対して,菌接種前または接種後に UV-B 照射を行い,腐敗果率と軟化部(水浸状の部分),菌糸部(軟化部より内部の菌糸を拡大させている部分)の直径について調査した.菌接種後 5 日目における軟化部の直径と発生率は,UV-B 照射の有無により違いがみられなかった.しかし,早期,通常収穫果とも,60 kJ·m−2 UV-B 照射により青かび病菌接種後 5 日目の菌糸部直径が小さくなった.早期収穫果においては,菌接種前,接種後の UV-B 照射にかかわらず 30 kJ·m−2 UV-B,60 kJ·m−2 UV-B 照射により,菌糸部発生率が減少した.また,UV-B 照射によって,果実の糖度,クエン酸含量,果実比重,果肉歩合,果皮色(L*,a*,b*)等に影響はみられなかった.このことから,収穫後ウンシュウミカンへの UV-B 照射は,病斑全体の抑制に対して明らかな効果はみられなかったが,UV-B 照射によって菌糸部が抑制されたことから,接種環境によっては貯蔵病害の抑制に有効な手段となる可能性が示された.
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