保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
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18 巻 , 1 号
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原著
  • 石川 哲郎, 高田 未来美, 徳永 圭史, 立原 一憲
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 1 号 p. 5-18
    発行日: 2013/05/30
    公開日: 2017/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1996〜2011年に、沖縄島の266河川において、外来魚類の定着状況と分布パターンを詳細に調査した結果、13科に属する30種1雑種の外来魚類を確認した。このうち、温帯域から熱帯域を含む様々な地域を原産とする合計22種(国外外来種19種、国内外来種4種)が沖縄島の陸水域で繁殖していると判断され、外来魚類の種数は在来魚類(7種)の3倍以上に達していた。繁殖している外来魚類の種数は、20年前のデータと比較して2倍以上に増加していたが、これは1985年以降に18種もの観賞用魚類が相次いで野外へ遺棄され、うち10種が繁殖に成功したことが原因であると考えられた。外来魚類の分布は、各種の出現パターンから4グループに分けられた:極めて分布が広範な種(カワスズメOreochromis mossambicusおよびグッピーPoecilia reticulata)、分布が広範な種(カダヤシGambusia affinisなど4種)、分布が中程度の広さの種(マダラロリカリアPterygoplichthys disjunctivusなど5種)および分布が狭い種(ウォーキングキャットフィッシュClarias batrachusなど20種)。外来魚類の出現頻度と人口密度との間には正の相関が認められ、外来魚類の出現パターンと人間活動との間に密接な関係があることが示唆された。外来魚類は、導入から時間が経過するほど分布を拡大する傾向があったが、その速度は種ごとに異なっていた。特に、日本本土やヨーロッパにおいて極めて侵略的な外来魚類であると考えられているモツゴPseudorasbora parva、オオクチバスMicropterus salmoidesおよびブルーギルLepomis macrochirusの分布拡大が遅く、外来魚類の侵略性が導入された環境により異なることが示唆された。沖縄島の陸水域において新たな外来魚類の導入を阻止するためには、観賞用魚類の野外への遺棄を禁ずる法規制の整備と共に、生物多様性に対する外来生物の脅威について地域住民に啓発していくことが重要である。
  • 今井 淳一, 角谷 拓, 鷲谷 いづみ
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 1 号 p. 19-31
    発行日: 2013/05/30
    公開日: 2017/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    農業を中心とした人間活動により比較的限られた空間範囲の中に多様な土地利用形態が存在する里地里山は、マルチハビタットユーザー種を含む多様な生物に好適な生息場所を与えてきた。本研究は、日本の代表的な里地里山地域を有する福井県を事例とし、対象地域内の里地里山に典型的な水辺の生物の分布とよく対応する土地利用のモザイク性指標(Localized Satoyama Index)の算出に適したユニット空間サイズ(以下、ユニットサイズ)と土地被覆解像度(指標の算出に用いる土地被覆図の解像度:以下、解像度)を検討した。モザイク性指標(ユニット空間の内部に含まれる土地利用のシンプソン多様度指数と非農地率の積)を3段階(50m、500m、1000m)の解像度および4段階(2km四方、5km四方、6km四方、10km四方)のユニットサイズを用い計12通りの組み合わせで算出し、同県による市民参加型調査で把握された魚類6種、カエル類8種、カメ類2種、昆虫類5種の計21種の出現率との関係を階層ベイズ法を用いて解析した。最適なユニットサイズと解像度の組み合わせを出現率推定結果のDICで検討したところ、解像度50mおよびユニットサイズ6kmを用いて算出されたモザイク性指標(以下、L-SI)が種の分布を最もよく説明することが明らかになった。すなわち、対象とした21種のうち、カエル類、昆虫類など、マルチハビタットユーザー種を中心とした13種がL-SIに対し有意な正の応答を示した。また、同県の指定する福井県重要里地里山地域では、それ以外の地域に比べ、L-SI値が有意に高い(Mann-Whitney,p<0.001)ことが確認された。里地里山の水辺の多くの生物の正の応答や、重要里地里山地域内外の比較結果は、L-SI値の高い地域は里地里山に生育・生息する多くの種にとって潜在的な生息適地であることを示唆している。L-SI算出に適した解像度50mおよびユニットサイズ6kmの組み合わせは、同じような地形、自然環境および農業形態を有する日本国内の多くの地域において有効であると考えられる。
  • 志賀 隆, 横川 昌史, 兼子 伸吾, 井鷺 裕司
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2013/05/30
    公開日: 2017/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    シモツケコウホネNuphar submersa Shiga & KadonoとナガレコウホネN.×fluminalis Shiga & Kadonoは残存集団がそれぞれ4集団のみであり、絶滅が危惧されている水生植物である。それぞれの生育面積はわずかであるにもかかわらず、近年、群落の一部を根こそぎ持ち去るような、園芸目的の盗掘と思われる被害が確認されるようになった。本研究では、形態形質の調査とマイクロサテライトマーカー15遺伝子座の遺伝子型解析を行うことにより、市場に流通しているシモツケコウホネ、ナガレコウホネ、これに加え「ナガバベニコウホネ」の流通名で販売されている植物についてC社とT社から購入し、産地の特定を試みた。ナガレコウホネについては現存個体の多座位遺伝子型を明らかにするために、全ての現存集団から合計59サンプルを得て遺伝子型解析を行った結果、19種類の多座位遺伝子型が確認された。流通株の形態形質を調査した結果、T社の「シモツケコウホネ」(T1)はシモツケコウホネであったのに対し、C社の流通株(C1〜C9)は全てナガレコウホネであった。また、流通株の遺伝子型を決定した結果、2種類の多座位遺伝子型が確認された。流通株から得られた多座位遺伝子型に対応するものが野生集団で確認されるか検討したところ、T1は日光市(NIK)のシモツケコウホネ(NIK-25)と、C1〜C9は同一クローンであり、佐野市(SAN)のナガレコウホネ(SAN-10)と多座位遺伝子型が完全に一致した。日光市と佐野市の各集団において、NIK-25とSAN-10と全く同じ多座位遺伝子型を持つ別個体が集団内の任意交配により生じる確率(PG)はそれぞれ0.00034と0.00030であることから、日光市および佐野市において採集された2種類の株が流通していたことが示唆された。全個体遺伝子型解析に基づく遺伝子型データの整備は流通や盗掘に対して抑制的な効果をもたらすことが期待できる。
  • 梯 公平, 倉西 良一, 鎌田 直人
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 2013/05/30
    公開日: 2017/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    陸生ホタルの一種であるヒメボタル幼虫の空間分布と活動性に影響する環境要因を調べるため、千葉県鴨川市内浦のスギ社寺林においてベイトトラップによる調査を行った。空間分布は、林床に設けた35m×50mの調査区内に間隔を変えて(5m、50cm)トラップを配置して調べた。まず、全調査期間の累積捕獲数から、複数の空間スケール(5m、1m、50cm)における分布の集中度を推定した。次に、この累積捕獲数を応答変数とし、捕獲場所の環境要因(地温、土壌水分量、下層植生の被度、日射量)を説明変数とする一般化線形モデル、一般化線形混合モデルを空間スケール別に構築し、モデル選択によって幼虫の空間分布に影響を及ぼす環境要因を解析した。幼虫は5mスケールでは集中分布を示し、累積捕獲数に対して地温と被度が統計的に有意に正の影響を示した。1mスケールではランダム分布を示し、日射量が統計的に有意に負の影響を示した。一方、50cmスケールでは集中分布を示したが、統計的に有意に関係している環境要因は検出されなかった。活動性は、同じ調査区において5m間隔でトラップを配置した各調査日の総捕獲数を応答変数とし、環境条件(地温、土壌水分量、前日降雨の有無)を説明変数、調査期間をランダム要因とする一般化線形混合モデルを構築し、モデル選択によって影響する環境要因を解析した。幼虫の捕獲数に対し、土壌水分量が有意に正の影響を示した。また、調査期間のランダム効果は、産卵期直後に当たる期間(7〜8月)から蛹化前の期間(5月)へと増加する傾向を示した。以上の結果から、5mスケールにおいて、幼虫の選好する環境の存在はモザイク的で、分布様式は集中分布となるため、環境の改変がなされる際には、本種の空間分布を把握しておかなければ個体群の個体数を大きく損ないかねないと推測した。また、分布の効率的な把握には、散水などで人工的に幼虫の活動性を高めた上で、ベイトトラップによる調査を行うことが有効となる可能性が示唆された。
  • 宮崎 佑介, 照井 慧, 吉岡 明良, 海部 健三, 鷲谷 いづみ
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 1 号 p. 55-68
    発行日: 2013/05/30
    公開日: 2017/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    北海道渡島半島北部を流れる朱太川水系の氾濫原の増水時に河川と連結する小水域(氾濫原調査水域)18ヶ所、およびその対照(非氾濫原調査水域)として、流域内の河川と連結しない池沼、および河川と連結してミズゴケ類の優占する貧栄養湿地の小水域各2ヶ所、ならびに地形的に流速が遅い4支川において魚類相調査を行なった。その結果、8科16種の魚類が記録された。魚類相組成の類似度にもとづく調査水域のクラスター分析の結果、氾濫原調査水域は、非氾濫原調査水域と類似するクラスター、および氾濫原調査水域のみからなるクラスターに含まれた。指標種分析によって、カワヤツメ、スナヤツメ北方種、シマウキゴリの3種が後者の有意な指標種として抽出された。氾濫原調査水域の魚類相組成は有意なネスト構造を示した。重回帰分析と正準相関分析によって、魚類の多様性に対して水表面積と水深は正の効果を、海からの河川長は負の効果を及ぼすことが示された。これらの結果をもとに、朱太川水系における魚類相の保全に資する氾濫原湿地の再生に関する具体的な提案についても論じた。
  • 小川 みふゆ, 竹中 明夫, 角谷 拓, 石濱 史子, 山野 博哉, 赤坂 宗光
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2013/05/30
    公開日: 2017/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    土地利用の変化は、生物多様性の減少を引き起こす主要な駆動要因の一つである。したがって、広域スケールで生物多様性の現状を評価し将来の変化を予測するためには、生物多様性への影響という観点から適切な区分および解像度をもった土地利用情報の整備が欠かせない。しかし、国内に存在する土地利用図は、土地利用区分の偏りや区分の不足などから単独で生物多様性への影響評価に用いるには限界がある。そこで、本研究では、植生図において用いられている群落区分を、生物の分布推定モデルに用いることを念頭に、集約および全国スケールで標準化するための方法を検討することを目的とした。具体的には、多数ある植生群落を、植生自然度として記録された情報を加味した上で、分布推定に利用しやすいよう50の細分類区分に集約した。また、土地利用分類を階層的に集約することで(中分類17、大分類9)、利用者が目的に応じて適切な分類階層を選べるよう配慮した。さらに、二次林や二次草原など、人間活動との関わりで維持されてきた生態系を土地利用区分の中に組み込んだ。植生図にもとづいた本土地利用図から算出した全国の農地面積や森林面積は、水田を過大評価したものの既存の土地利用情報と概ね一致しておりその妥当性があると考えられた。本研究で検討された方法で作成された土地利用図は全国スケールで利用可能な地図情報として公開予定である。今後、本土地利用図は広域的な生物多様性の評価や予測に広く活用されることが期待される。
  • 田和 康太, 中西 康介, 村上 大介, 西田 隆義, 沢田 裕一
    原稿種別: 原著
    2013 年 18 巻 1 号 p. 77-89
    発行日: 2013/05/30
    公開日: 2017/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    圃場整備事業の拡大に伴い、平野部の水田では乾田化が進められてきた。このことが近年、水田の多種の水生動物が減少した一要因と考えられている。一方で、山間部などに多い排水不良の湿田では、一年を通して湿潤状態が保たれる。そのため、非作付期の湿田は水生動物の生息場所や越冬場所となり、生物多様性保全の場として重要な役割を担うといわれるが、実証例は少ない。本研究では、滋賀県の中山間部にある湿田およびそこに隣接する素掘りの側溝において、作付期から非作付期にかけて大型水生動物の生息状況を定量的に調査した。全調査期間を通じて、調査水田では側溝に比べて多種の水生動物が採集された。特にカエル目複数種幼生やコシマゲンゴロウに代表されるゲンゴロウ類などの水生昆虫が調査水田では多かった。このことから、調査水田は側溝に比べて多種の水生動物の生息場所や繁殖場所となると考えられた。その原因として餌生物の豊富さ、捕食圧の低さなどの点が示唆された。一方、側溝では水田に比べてカワニナやサワガニなどの河川性の水生動物が多い傾向があった。またドジョウの大型個体は側溝で多く採集された。このことから、中山間部の湿田では、調査水田と側溝のように環境条件や構造の異なる複数の水域が組み合わさることによって、多様な水生動物群集が維持されていると考えられた。また、非作付期と作付期を比較したところ、恒久的水域である側溝ではドジョウやアカハライモリなどが両時期に多数採集された。さらに調査水田ではこれらの種に加えて、非作付期の側溝ではみられなかったトンボ目やコウチュウ目などの多種の水生昆虫が両時期に採集されたことから、非作付期の水生動物の種数は側溝に比べてはるかに多かった。このことから、非作付期の水田に残る水域が多くの水生動物にとって重要な生息場所や越冬場所になると考えられた。
調査報告
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