水田の構造改善事業によって絶滅の可能性が高まったダルマガエル岡山種族の孤立した一個体群から幼体を採集し,飼育下で繁殖させ,幼生を工事終了後の水田に戻すことを試みた.飼育は主にボランティアの活動に頼った.飼育下における主要な問題点は,移動時の一時的な高密度によるアカアシ病と思われる病気の蔓延であった.繁殖は野外飼育による自然繁殖を中心とした.1995年と1996年の2年間にわたり千数百〜二千頭程度の幼生を,もとの個体群のいる水田に放流した.1995年には個体群の存続が危険な水準にまで個体数が減少したとみられるが,1996年には回復の兆しが見られた.しかし,自立的な個体群が確立したかという点についてはまだ予断を許さない.放流は低密度時における人口論的なゆらぎによる絶滅を防ぐには有効であるが,環境の悪化には十分に対応できないと考えられる.再導入に関する問題点について検討した.
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