保全生態学研究
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20 巻, 1 号
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原著
  • 宮崎 祐子, 三橋 弘宗, 大澤 剛士
    原稿種別: 原著
    2015 年 20 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、管理を放棄した竹林が隣接地に拡大し、景観や生態系を乱す現象が問題になっている。集落等の小規模な単位で局所的な整備事業は進められているが、広域的な管理計画に基づく整備はほとんど行われていない。効率的に竹林整備を行うためには、広域を対象に適切な手法によって構築したモデルを用いて拡大の可能性が高い場所を予測し、管理労力を集中するといった計画を立案しなければならない。しかし、タケ類のように人為的に導入された移入種かつ栄養繁殖を行う植物の分布拡大予測は、不均質な侵入履歴や分布の偏りや隣接効果などの制約事項が多く、さらに環境要因に対する非線形応答を示す場合もあり、一般的な統計モデルの適用が難しい。そこで本研究では兵庫県豊岡市において1976年と2007年の間の竹林拡大から上述の問題を統制した上で、侵入確率の高い場所を予測する空間明示モデルを構築し、実際の管理に向けた将来予測を行った。予測手法には機械学習法の一つであるMaxEntを利用し、1)栄養繁殖の影響を統制するため既存の竹林パッチから拡大可能な範囲を明らかにし、2)予測範囲をその範囲に絞った上で侵入確率について物理環境を説明変数として予測モデルを構築するという2段階の解析を実施した。モデル構築の第1段階の結果から、広域的に見た場合、竹林の拡大には拡大前の竹林パッチからの距離が強く貢献しており、物理的環境要因の制約は顕著ではないことが示された。このことはクローン増殖を行うタケ類の生理的統合による栄養分等の転流が物理環境の影響を軽減していることを示唆している。完成したモデルは1976年から2007年の間の拡大を約70%説明することができた。モデルを利用して複数の管理シナリオ下における将来予測を行った結果、小面積の竹林から優先的に除去を行うことが将来の竹林面積を縮小させる上で最も有効であることが示された。得られた結果に基づき、竹林の管理計画立案に向けた課題を議論した。
  • 更科 美帆, 吉田 剛司
    原稿種別: 原著
    2015 年 20 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、北海道において4種の国内外来カエルによる捕食被害の実態を明らかにすることを目的とし、近年カエル類の食性調査においても汎用性が期待される胃重要度指数割合を用い食性調査を実施した。その結果、アズマヒキガエル、ツチガエルは地表徘徊性生物、特にアリ類を大量に捕食しており、アズマヒキガエル、トウキョウダルマガエル、トノサマガエルはカエル類を捕食していることが明らかとなった。外来カエルの捕食による北海道独自の生態系ピラミッドへの影響や在来カエルとの競合または駆逐が懸念される。また3種の外来カエルが希少種を捕食していたことが判明した一方で、1種の外来カエルはセイヨウオオマルハナバチなどの他の外来種を捕食していることが判明した。北海道においてアズマヒキガエル、トノサマガエル、トウキョウダルマガエルの3種は分布拡大傾向にあるため、広範囲にわたる捕食影響が懸念される。特に近年、北海道では水稲が盛んであり、水田地域を生息域として利用するトウキョウダルマガエル、トノサマガエルの分布拡大は今後の地域の湿地生態系に大きな影響を与える可能性がある。
  • 杉村 康司, 鵜沢 美穂子
    原稿種別: 原著
    2015 年 20 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    妙岐ノ鼻のヨシ群落の植生調査を行い、調査区に出現した維管束植物の種数、種組成とコケ植物の対応を検討した。出現するコケ植物の種類によって、同群落に出現する維管束植物の種組成ならびに生育立地に明瞭な違いが見られることが明らかになった。ヨシ群落はコケ植物に着目した結果、ヒメミズゴケタイプ、コアナミズゴケタイプ、ササオカゴケタイプ、コケ植物無しタイプの4群落タイプに区分できた。ヒメミズゴケ、コアナミズゴケ、ササオカゴケが出現したヨシ群落は、維管束植物の出現種数が有意に多く、ヨシ群落の草本層第1層の高さと植被率が有意に低かった。希少種は、ヒメミズゴケタイプとコアナミズゴケタイプのヨシ群落に出現した。以上のことから、これらのコケ植物は、妙岐ノ鼻のヨシ群落における立地指標としての有効性が高く、種多様性の保全を検討する材料のひとつとして重要であることが示唆された。
総説
  • 松葉 史紗子, 赤坂 宗光, 宮下 直
    原稿種別: 総説
    2015 年 20 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    愛知目標の採択を受けて、科学的根拠に基づいた戦略的な保護地域選定の必要性が高まっている。Marxanは、生物多様性を保全する上で優先度が高い場所を効率的に選定する手法として開発されたコンピュータプログラムである。ここでは、その基本的な仕組みを解説するとともに、適用事例を紹介し、その有効性や使用上の留意点について概説した。Marxanでは、利用者が設定した総コストが最小となる計画ユニットの組み合わせを相補的に選び出す。保全対象となる対象分類群は多岐に及ぶが、遺伝的多様性の保全や、土地利用を代替指標とした研究も行われている。具体的な事例としては、気候変動や土地利用の改変による影響を考慮した将来予測を保護区の選定に反映させたものや、生態系サービスとのトレードオフを評価したものを紹介した。また、保護区選定以外の事例として、再導入地や再生地、外来種駆除の優先地の選定を目的とした研究も取り上げた。保全目標や各種パラメータの設定には、生態学的な知見やデータが不可欠であるため、Marxanの有効な利用は、利用者側の見識に大きく依存している。しかし、保全目標やコストに基づいた優先保全地域の組み合わせを空間明示的に提示できるため、予算や人的資源の効率的な投資を可能にし、社会的な合意形成をより円滑に進めることにつながるツールとして、その活用がますます期待される。
調査報告
  • 中野 光議, 上原 和男, 浦部 美佐子
    原稿種別: 調査報告
    2015 年 20 巻 1 号 p. 49-58
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    スジシマドジョウ種群の繁殖期と繁殖場所を明らかにすることを目的に、琵琶湖北西部の沿岸域に位置するビオトープ池「水すまし水田」と湖岸の水生植物帯、および農業用水路において、2011年と2012年、2014年に調査を行った。「水すまし水田」では4〜7月に標準体長42〜107mmの成魚の侵入が見られた。成魚が最も多く侵入したのは、各調査年度で最大の降雨があった日の当日、もしくは翌日であった。6〜7月には幼魚も採捕された。水生植物帯と農業用水路では主に4〜6月に成魚が採捕されたが、幼魚は採捕されなかった。以上のことから、「水すまし水田」では、成魚の体サイズ分布に基づきビワコガタスジシマドジョウとオオガタスジシマドジョウの2種が産卵を行っていると推察された。また、スジシマドジョウ種群の繁殖行動はまとまった降雨によって誘発されると考えられる。本調査地では主に「水すまし水田」(湿地状の一時的水域)で繁殖しており、水生植物帯と農業用水路ではあまり繁殖していないことが示唆された。
  • 宮本 康, 福本 一彦, 畠山 恵介, 森 明寛, 前田 晃宏, 近藤 高貴
    原稿種別: 調査報告
    2015 年 20 巻 1 号 p. 59-69
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    鳥取県ではカラスガイの絶滅が危惧されているが、本種の個体群構造や繁殖の実態が明らかにされていない。そこで本研究では、本種の分布が確認されている3つの水域を対象に、サイズ組成、母貝の妊卵状況、本種の生息域における魚類相、およびグロキディウム幼生の宿主適合性を明らかにするための野外調査と室内実験を行った。多鯰ヶ池ではカラスガイのサイズ組成が大型個体に偏っていたことから、稚貝の加入が近年行われていないことが示唆された。しかし、母貝が幼生を保有していたこと、当池でブルーギルとオオクチバスが優占していたことから、これらの外来魚による幼生の宿主魚類の駆逐が本種の新規加入の阻害要因になっていることが併せて示唆された。一方で、他の2つのため池では大型個体に加えて若齢の小型個体も少数ながら発見された。これらの池ではブルーギルとオオクチバスが確認されない反面、室内実験より幼生の宿主と判定されたフナ属魚類が優占することが明らかになったことから、新規加入が生じる条件が揃っていることが示唆された。以上の結果より、現在の鳥取県ではカラスガイの個体群動態が魚類群集に強く依存していること、そしてブルーギルとオオクチバスが優占する多鯰ヶ池は本種個体群の存続が危ういことが示唆された。以上の結果を踏まえ、最後に当県におけるカラスガイ保全のための提言を行った。
  • 藤井 伸二, 上杉 龍士, 山室 真澄
    原稿種別: 調査報告
    2015 年 20 巻 1 号 p. 71-85
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    アサザの生育環境、開花に関する形質、逸出に関する情報について、現地調査、栽培観察、標本調査、聞き取り調査、文献調査を行った。また、遺伝的多様性についてマイクロサテライト多型を用いた再検討を行った。遺伝的多型については、波形ピークの読み取りが困難な遺伝子座が多くて十分な成果を得ることができなかったが、猪苗代湖と琵琶湖において多型が検出された。また、非開花個体群は広範囲に散在して分布し、遺伝的な多型を有することが明らかになった。生育環境の情報について整理した結果、琵琶湖においてはおもに周辺の内湖や接続水路および河川から記録されていることが明らかになった。逸出については、その疑いのある個体群が各地に存在することが明らかになった。
保全情報
  • 小池 文人, 小出 可能, 西田 智子, 川道 美枝子
    原稿種別: 保全情報
    2015 年 20 巻 1 号 p. 87-100
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    絶滅危惧植物や保全すべき重要な植物群集の中には、外来生物(植物や動物、寄生生物)による被害が大きなものもある。種の生物学的な特性にもとづく外来種のリスク評価は研究途上であるが、社会においては研究の進展を待たず、今すぐ評価することも必要である。ここではこのような要求にこたえるため、専門家によるアンケートをもとに、在来植物のハビタットにおける対策の重要性と、外来生物種の脅威の大きさの評価を試みた。絶対的な尺度のないアンケートでは評価者によって全体の重要度レベルが異なり、また北海道から沖縄までの全国の全ての現場を知っている専門家は存在しない。そこで回答者ごとの外来種間の1対1比較(どちらが相対的に大きな脅威か)を元のデータとして、全体の重要度を再構成した。侵入先のハビタットへの外来種対策の重要度にも違いがあるため、まずハビタットごとの対策の重要度を比較し、次に各ハビタット内で外来種の重要度を比較した。対策を取るべきハビタットとしては、小笠原諸島など海洋島の植生、水生植物群集、河原・崩壊地の貧栄養砂礫地の順に重要であり、里山の二次草原と貧栄養湿地、砂浜海岸が続くとの結果になり、それぞれのハビタットでの重要な外来生物のランキングが得られた。交雑や寄生などハビタット保全以外の対策が必要な影響については別途比較した。
  • 勝木 俊雄
    原稿種別: 保全情報
    2015 年 20 巻 1 号 p. 101-103
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    Cerasus speciosa (Koidz.) H. Ohba, a deciduous broad-leaved tree, is native to the Izu Islands of Japan, and has now been reported from many coastal forests in the Tohoku region. However, C. speciosa was not mentioned in four articles dealing with coastal forests of the Sendai Gulf featured in Volume 19, Issue 2 of this journal (Disturbance and recovery of the coastal-ecotone vegetation following the Great East Japan Earthquake and Tsunami). We suspect that inaccurate species identification, and not the actual absence of C. speciosa, is to blame, and hope that future research on coastal forests of the Sendai Gulf will remedy this.
  • 道家 哲平
    原稿種別: 保全情報
    2015 年 20 巻 1 号 p. 104-114
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    The 10th meeting of the Conference of Parties to the Convention on Biological Diversity (CBD-COP10), which was most successful COP among the history of international environmental treaties, adopted over 40 decisions including Strategic Plan of Biodiversity 2011 to 2020 and 20 Aichi Biodiversity Targets. And based on recommendation from one of CBD-COP10 decision, 65 session of United Nations General Assembly declared 2011 to 2020 as United Nations Decade of Biodiversity. Parties to the CBD gathered per two year and its twelfth meeting (COP12) was held in 2014. On the occasion of COP12, secretariat of the CBD with scientific advisor launched 4th edition of the Global Biodiversity Outlook (GBO4) and reviewed the progress of strategic plan of biodiversity and Aichi Biodiversity Target. This report briefly introduce the outcome of GBO4 and decision made by COP12 as a response to the outcome of GBO4.
  • 原稿種別: 付録等
    2015 年 20 巻 1 号 p. 115-118
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 原稿種別: 付録等
    2015 年 20 巻 1 号 p. App7-
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 原稿種別: 目次
    2015 年 20 巻 1 号 p. Toc2-
    発行日: 2015/05/30
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
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